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たった3切れの卵焼きだけが入った、お弁当。

今日の娘のお弁当は、卵焼きが3切れだけ。
いつものお弁当箱に、銀色の余白がすこしさみしい。

たった3切れの卵焼きだけが入った、お弁当。
このお弁当にはちょっとしたわけがある。そして、これは娘が心から望んだお弁当でもあるのだ。

***

昨日の夜。娘は突然そわそわとし始めた。
「どうしたの?」
「明日の幼稚園が嫌やねん」

娘が「幼稚園が嫌」という場合、たいてい理由は他にある。だからこういうときはじっくりと、彼女の本当の嫌がなんなのかを聞いていく。

「幼稚園の、なにが嫌なのかわかる?」
「明日、早お迎えやろ? だから嫌やねん」

明日、つまり今日はいつもの18時お迎えではなくて13時にお迎えに行くことになっていた。それは、小学校入学に向けての健康診断と予防接種を受ける予定だったから。

幼稚園が大好きな娘は、早くお迎えに来て帰らなくちゃいけないことが、悲しかったのだろうか。でも、「今日は早くお迎え来てな!」と言うこともあるし、本当の原因は早お迎えではないような気がした。

もしかしたら、予防接種や健康診断が憂鬱なのかもしれない。

「注射が嫌なの?」
「それも嫌やねんけど、そうじゃないねん」

どうも、注射だけが理由ではないようだった。
娘はまだシクシクしている。いったい何が理由なのだろうか。娘の気持ちの確信に触れられていないような気がして、もう少し聞いてみる。

「早くお迎えに行くと、なんで嫌なの?」
「だってな、早くお弁当食べなあかんやん。早く食べられるかどうかわからへんから」

聞いていて納得した。これが娘の不安の確信だった。

「早く迎えに来るから、それまでにお弁当を食べ終わらないといけない」

おおよそ、ぼくには思いつきにくい理由だし、「そんなことで?」と聞いても思ってしまいそうな理由。だけど、どんな理由であれ娘がそのことで不安を感じていることに間違いはなかった。

娘は、ご飯を食べるのがとてもゆっくりだ。
量もたくさんは食べられない。ぼくは毎日お弁当を作る中で、なんどもお弁当箱を小さくしたり、たくさん食べられない娘が不安なく完食できるようにと工夫を繰り返してきた。

「さいごまで、ちゃんと食べる」というのは娘にとって、とても大切なことのようで、いくら「残してもいいんだよ」と言ってもさいごまで食べようとがんばる。

***

ちょっと余談になるけど、先日来年から通う(予定)の東京コミュニティスクールの考査(体験会)に参加したときも、娘らしいそんなエピソードを聞いた。

「彼女は、お弁当のとき『トマトソース嫌いやねんけどなぁ』とかってブツブツ言いながら『でも、せっかく作ってくれたからな。がんばって食べよー』って言いながら自分の力でお弁当キレイに食べてましたよ」

保護者への入学に向けた面談中にも関わらず、ぼくは思わず泣きそうになってしまった。幼稚園でも、きっと同じように文句を言ったり喜んだりしながら、嫌いなものが入っていても量が多くてもがんばって食べてくれているんだろう。

***

最近は、ほとんどお弁当の量で悩むことはなくなっていた。
だけど久しぶりに、大切なことを思い出した。

「早くなくてもいいんだよ」「最後でもいいんだよ」「残したっていいよ」と言い続けていました。
家ではよほどでなければ、早く食べて、と急かすこともしません。
遅くてもいいじゃん。
ピカピカに食べてくれることが、嬉しいよ。
こうした許容で、娘が少しでも励まされたらと思っていました。
でも、娘が悔しそうにうつむきながらご飯を食べる姿を見て、はっとしました。
早く食べ終わるように、協力してあげなきゃダメじゃん。

1年半前。娘がお弁当を食べるのが遅くて、悔しい思いをしていたのに気がついたときにはっとしたこと。

完食してくれてうれしい。がんばって食べてくれることがうれしい。というぼくの気持ちよりも、娘が早く食べ終わるように協力してあげなくちゃ、と思ったことを。


「お弁当、少なくしてあげようか?」
「本当!? それじゃ、卵焼きだけにして!」
「卵焼きだけ? おにぎりとかじゃなくて?」
「卵焼きだけなら、すぐに食べ終わるやろ?」
「それじゃ、3つ入れてもいい?(いつもは2つ)」
「うーん。。。OK!!」

この、卵焼きたった3切れのお弁当は、娘とぼくが約束した大切な最速弁当なのだ。


では、また明日。

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