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利用者が嘔吐した場合の対応【緊急時もしくは事故の対応に関する研修】

こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。

私は作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、管理職に必要な知識と情報をシェアしていきたいと思います。

今回は、【ご利用者が嘔吐した場合の対応】をお伝えしていきます。

冬に向けて、嘔吐した場合の対応方法を確認しておくことはおススメです!

「嘔吐への対応方法が統一されていない」
「今年度の緊急時研修をまだしてなかった」
「感染症研修も兼ねて研修をしたい」

そんな方にオススメな内容です。

それでは早速お伝えします。

まずはノロウイルスを疑う!

ご利用者が激しい嘔吐や下痢を起こしたら、まずノロウイルスを疑いましょう。

冬に起こる食中毒の原因の約80 % はノロウイルスです。

ノロウイルスは感染力が強いため、嘔吐物などは迅速かつ適切に処理し、感染拡大防止に努めなければなりません。

様子を観察するとともに、以下の情報収集を行いましょう。

  • 嘔吐・吐き気はいつから始まったか(ノロウイルスの場合、強烈な嘔吐・吐き気が突然起こる)

  • 最後に食事をした時間と食事内容

  • 吐いた物に血が混じっていないか

  • 頭をぶつけていないか

  • 頭痛やひどいめまいはないか

  • 腹痛がないか。ある場合はどのあたりが痛むか

  • 呼吸が止まったり、不自然にゆっくりになっていないか

  • いつもと違う薬を服用していなかったか

  • 発熱はあるか(ノロウイルスでは発熱が軽度な場合が多い)

  • 嘔吐の回数や量、状態の確認

  • 下痢をしているか(下痢の場合はトイレに行った回数、状態も確認)

  • ご家族に感染者はいるか

  • 意識はあるか(意識がない場合は緊急対応)

嘔吐物の処理方法

感染症の場合、嘔吐物や排泄物などの汚物にはウイルスが大量に含まれています。

感染の拡大を防ぐためにも、以下の点に注意して素早く適切に処理し、消毒しましょう。

嘔吐物処理セット :

  • 使い捨てエプロン(防護具)

  • 使い捨て手袋

  • マスク

  • ポリ袋

  • ペーパータオル

  • 塩素系消毒液(家庭用塩素系漂白剤10mlと水500mlを合わせたもの)

  • バケツ

  • 新間紙

手順:

  1. 顔を横に向け、膝を立てて仰向けに寝かせる

  2. 近くにいる人を移動させる

  3. 窓を開ける

  4. 嘔吐物処理セットを準備する

  5. 防護具を着用する

  6. 嘔吐物をペーパータオルで覆う

  7. 嘔吐物に消毒液をかける

  8. 嘔吐物の処理をする(ペーパータオルで覆った吐物を外側から内側によせながら包み込み,ビニール袋に捨てる)

  9. 床の消毒を行う(消毒液を付けたまま10 分間置いておく)

  10. 靴底の消毒をする

  11. 汚染物を廃棄する

  12. 手洗い,消毒を行う

受診後、ノロウイルスだった場合は1週間は利用を中止してもらいましょう。

症状が落ち着いてからも、1 週間〜 1 ケ月は体内にノロウイルスが潜伏しているといわれています。

最短でも 1 週間は利用を中止してもらい、 その間の支援についてご本人• ご家族やケアマネジャーと相談しましょう。

ノロウイルス以外の原因

ノロウイルスなどの感染症や食中毒以外でも、さまざまな原因から嘔吐が起こります。

高齢になると食道や胃の機能が低下します。

また円背の方は、前傾姿勢状態が続くことで胃が圧迫され嘔吐を繰り返してしまうことがあります。

便秘が続くことで嘔吐しやすくなる場合もあります。

中には脳や消化器官の病気によるものなど対応の緊急性が高い場合もあります。

嘔吐の原因となる疾患をあげてみるとこんな感じです。

  • 胃潢瘍

  • 十二指腸漬瘍

  • 片頭痛

  • 脳出血

  • 急性胃腸炎

  • くも膜下出血

  • 心筋梗塞

  • メニエー Jレ病

  • 腸閉塞

  • 胆囊炎

  • 薬(抗がん剖など)によるもの

  • 胃がん

  • 脳腫瘍

  • 狭心症

  • 髄膜炎

  • 胆石

  • 急性虫垂炎(盲腸)

などです。

下記のような方が嘔吐した場合は注意が必要です。

  • 最近、頭部外傷を受けた

  • 腹部の手術を受けたことがある

  • 腸閉塞を起こしやすくなっている

  • 糖尿病や腎疾患の基礎疾患がある:血液中の電解質(ミネラル)のバランスが崩れやすい

  • 胆石症の基礎疾患がある:胆嚢炎や胆管炎を起こしやすくなっている

嘔吐物に血が混じっていた場合

嘔吐物に血が混じっていた場合、気管または胃からの出血が考えられます。

出血量の多少に かかわらず、顔を横向きにして寝かせ、救急車を要請しましょう。

喀血、咳とともに鮮血を吐く:呼吸器(気管)からの出血が原因

吐血と共に黒っぽい血液を吐く:消化器(胃)からの出血が原因

その他必要事項

定期的に研修などで対応を周知しましょう。

嘔吐物処理の実践的な内容を取り入れた研修を行うなどして、いざというときにスタッフ全員が迅速に対応できるようにしましょう。

嘔吐したら窒息・誤嚥・脱水に注意します。

嘔吐や下痢によって体内の水分が失われているため、必ず水分補給をします。

その際、冷たい水や清涼飲料水は腸への刺激が強いため、常温の水や経口補水液、湯冷ましなどを少しずつ飲んでもらいます。

自己判断で薬を飲むのは危険です。

下痢止めや痛み止めを使うと、腸内に病原菌を閉じ込めて異常増殖させてしまいます。

服薬は必ず医師の指示に従い、自己判断で飲まないように伝えましょう。

普段から地域の感染情報をチェックすることも必要です。

各自治体のホー厶ページなどで地域の流行状況について情報を集めノロウイルスの感染防止に努めましょう。

おわりに

いかがだったでしょうか。

毎年の研修は準備する方も受講する方も大変です。

しかし下記のような意味があります。

1、研修を通して「ご利用者はどのような事故または緊急事態が起こるのか」を見定め、「どう対応するのか」を前もって周知しておくことにより、事故の未然防止、事故緊急時の適切な対応につながる。

2、ご利用者の顔色、表情、様子の変化を敏感に読み取れる《発見する力》を養い、早期発見・早期対応ができる。

3、自身の責任で事故などが生じた際、動揺せず「この場合の自分の役割は?」と問いかけるだけで周りを見られるようになる。

研修をする際は「なぜこの研修を毎年するのか」を始めにおさえておくことをお勧めします。

今回の内容でしたら「全スタッフがご利用者の嘔吐対応が適切にできるようにこの研修を行います」とお伝えするのが良いかもしれません。

それではこれで終わります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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