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舞台『夏の砂の上』感想

⚠️ネタバレあり
《世田谷パブリックシアター》

東京公演: 2022/11/03〜11/20
(観賞日: 2022/11/03 ~11/06)

《兵庫県立芸術文化センター》
兵庫公演:2022/11/26~11/27
(観賞日:全公演鑑賞)

《刈谷市総合文化センターアイリス》
愛知公演:2022/12/10~12/11
(鑑賞日:全公演鑑賞)

上演時間 1時間50分(カーテンコール含まず)


小浦治/田中圭

小浦恵子/西田尚美

川上優子/山田杏奈

川上阿佐子/松岡依都美
神野/尾上寛之
持田/粕谷吉洋
立山/三村和敬
神野茂子/深谷美歩

演出/栗山民也
戯曲/松田正隆


長崎の坂の上に立つ小浦治の家の居間
(場面展開なし)

《舞台センター》

畳の部屋(居間)
真ん中に四角いちゃぶ台
左奥には二階への階段
センター奥の壁の上部には(映像による)窓
(時間、季節などにより変わる色)

《上手(かみて)向かって右側》

手前に扇風機
その奥に飾り箪笥
(中には達磨や張り子の虎等昭和を感じる小物が飾られている)

(『張り子の虎』とは、お子様の成長祈願に初節句に買う品物だそうです…)

その奥は壁が有り、玄関、トイレ、電話などがある。(実際には見えない)

《下手(しもて)向かって左側》

真っ黒でゴツゴツした質感の庭
地面にも真っ黒な瓦礫

(その昔、この場所に原爆が投下されたことを感じさせる。怖い。)

下手、奥に隣の部屋の壁
(同じ真っ黒な壁に)小窓が付いている。

廊下があり、その奥に台所
(見えない)

開演前、遠くから微かに潮騒

音楽はほぼ無く、ピアノの旋律が場面展開の時など数回流れるのみ。

(栗山さんが広島の『被爆したピアノ』の音色が頭にずっと流れていたとインタビューで、おっしゃっていた。)

蝉の鳴き声

季節の移り変わりと共に変化する蝉の鳴き声。

『ひぐらし』が鳴くころ…
夏も(舞台も)もう終わるな…と切なくなる…

(*´-`*)フフフ…

煙草の煙

シンプルなセットで、背景が黒なので、ゆっくりと、たゆたう白い煙草の煙が美しい。

登場人物達の思念を描いているかのように静かに蠢いて漂い、消えていく。

(お香のような香り 銘柄はハイライト、中身は害の少ない物※咳止め薬の煙草を使用)

[煙草の香り]
東京ではあまり感じ無かった。
兵庫(宮崎もらしい)では、かなりしっかりと。劇場全体に。
愛知もかすかに感じた。(兵庫が🏆️)

嗅覚まで世界観に没頭出来るなんて凄い!

扇風機

ずっと部屋の片隅から(私達/客と一緒に)、小浦家のひと夏の出来事を目撃している。


⚠️感想は人それぞれでいいと思っています😊こんな考え方もあるんだと思える方は、よろしければ読んでみてください😌💗


《開幕》

  【第一幕 7月下旬  昼】


玄関から小浦治が帰ってくる。
手には、白いレジ袋(ホカ弁が入っている)。

茹だるような暑さの中、坂を登って来たせいか、息が上がっている。

二の腕や肩の辺りが汗でキラキラと光っている。

猫背で、目も口も半開きでぼんやりとしていて、覇気が無い。

買ってきたホカ弁の袋を机の上に置き、扇風機で風を浴びる。

立ち上がると台所へ。
肩からタオルをかけ、麦茶を持ってくる。

踵だち正座のまま麦茶を注ぎ、麦茶を一気に飲み干すと「…ハアッ!ハァ…ハァ…」と声が漏れる。

ぼんやりと机の前に正座して、額や首、二の腕等の汗を拭う。

ホカ弁の蓋を開け、白い袋を丁寧に小さく折り畳んで(ホカ弁についていた)ゴムで止め、ポイ…と横に置く。

うちわを拾い仰ぐと、買ってきたのり弁もパタパタと仰ぐ。

弁当の竹輪の磯辺揚げを食べていると、二階から家を出て行った筈の妻の小浦恵子が降りてくる。


(心の声)

初日(11/3)、この場面で割りと大きい地震が……

∑(๑º口º๑)ギャッ!!

最初、フワフワして自分が揺れてるんかと思ったけど『違う!地震や!』と。

怖くて思わず隣の友達の腕をぎゅっと握る。

圭くんは動揺することなく、一瞬だけ『ん…?地震…?』というような顔をして、上を見上げる仕草。

西田尚美さんは、階段(手すり無し)から降りてくるところで怖かったのでは、、、

『舞台が中止になったらどうしよう!』と頭によぎったけど、そのままお芝居は進んでいって本当に良かった、、、

(途中でもう1回、小さな揺れがあった。)

(被害は無さそうなので…不謹慎ですが…)

圭くんと一緒に地震を感じるなんてなかなか無いので、貴重な体験しちゃったな…と。
(しかも舞台初日の初っぱなにw忘れられない思い出となりましたw)

これも生の舞台ならではですね。。。


背後に突然現れた恵子に驚く治。

治が食べている弁当を見て、(カロリーの高い)のり弁ではなく、鮭弁にしろと言う恵子。

そして治からそれが朝ご飯(既に昼すぎ)と聞き、治の乱れた生活に苦言を呈する恵子。

(愛は無いけど情はあるのか…)

(恵子のことが凄く気になっているのに)そんな恵子の方は向かずに弁当を食べ続ける治。

治がそっけなく「何しに来たとや。」と聞くと、恵子は「なんでんなかと。」と答える。

そのままはぐらかそうとしたものの、本当の理由を告げる恵子。

恵子は間もなく命日をむかえる二人の幼くして亡くしてしまった息子の位牌を取りに来たのだった。

その言葉に怪訝な顔になり、それは置いておけ、いや持っていく、と言い争いになる二人。


(心の声)

恵子の言葉や態度から、息子を亡くした時からずっと、感情を表に出すのが苦手な治は、(恵子が望む様には)恵子の悲しい気持ちに寄り添ってくれなかったんだろな…と。

もちろん治も悲しんでいたのだろうけど、不器用ゆえ、どう接していいかわからず仕事に逃げたか、悲しんでる恵子を見ないふりをしたのか、、、

恵子は二人でいるのに、一人で孤独を感じ続けていたのかも…

『レーゾンデートル(存在意義)』

治は昔ながらな『風呂、飯、寝る(会話は必要最小限)』な人(本心をさらけ出すのはカッコ悪いと思っている)だったのかも…そういう台詞も出てくるし。
(感謝の気持ち、伝えるだけでも違うのにね)

恵子は子供を失ってからの10数年…ずっと自分は一体何なんだろう…と感じていたのかもな。

二人の間に言葉が足らなかったのかもしれないね…

(´•ω•`)…

11/27(日)兵庫マチネ ここで西田さん台詞飛んだ?
微妙な間があり。
「あげてなかったよ…ほこりだらけで」のとこやったかな?
(圭くんが何も言わないので、ああ…自分やった…みたいな。)

治「明雄はうちで死んだとじゃなかか」
東京の時は、激しい口調で。
兵庫、愛知は静かに怒りに震えるような口調で。


立ち去る恵子。

黙ってそのまま弁当を食べ続ける治。

・・・

弁当を食べていた手を止め、玄関の恵子に、座りながらローリングして(←急に激しい動き…笑)覗き込むように「おい!おい!ちょっと待てぇ!」と声をかける。

素早く元の位置に戻って、何事も無かったような顔をして弁当を食べる治。
(そゆとこw 笑)


(心の声)

11月5日のマチネでは、ここで少し違和感。

呼び止めて、戻ってきた恵子とのシーンで圭くん台詞飛んだ?

なんか ちょっと変な空気感になって西田さんがフォローしたように見えた(友達も同じことを言っていたのでそうなのかな?どうなんかな?)

11月6日のソワレでは、呼び止める前に口にもっていった『ごま昆布ご飯』が口の中に入り切らず、唇に乗っかてるご飯、手で押し込んでたw
(*≧艸≦)カワユイwww

11/26(土)兵庫
久しぶりに観た舞台は玄関に向かって呼び止めるのも、戻るのも動きがスムーズになってた。


恵子に今どこで何をしているのか尋ねるが、恵子は答えない。

薄々気付いている恵子の浮気相手、元職場の後輩 陣野に聞くからいい。と(俺は知っているぞ、と言わんばかりに)目を合わせないで言う。

恵子は はぐらかそうとするが、辻褄が合わなくなって、二人は沈黙する。

気まずい空気。

私のことより自分はどうなの?ちゃんと失業のお金の申請とかしてるの?と、話の矛先を変える恵子。

(突然の失業のショックからか…、新しい事に踏み出すパワーがないのか…、暑さの無気力からか…、動き出さないといけないとは思いつつ…まだ動き出せないでいた。)

(恵子、阿佐子、陣野に仕事について言われる度、やらないといけないのは分かってるけど…という感じ。)

再び気まずい空気。
(クマ)蝉の鳴き声。

もうこれ以上話すこともないと、恵子が再び帰ろうとした時、玄関にお客さんが。

東京で暮らしている妹の阿佐子が娘の優子を連れてやって来きたのだった。


(心の声)

図書館で借りた戯曲集には登場人物の年齢が書いてあって、(返却済みなので)ハッキリ覚えてないけど、確か(計算したら)阿佐子は優子を18 歳くらいで産んだ設定やった(確か)

(優子が16歳だから18歳で産むと34歳?)

(今回発売された戯曲には、なんで年齢書いて無いんやろ…?役者さんが設定より年上の人が多いから?※恵子も治より年下。)


(追記)

現在も戯曲を図書館で借りてる友達に教えて貰いました。

治 37歳、恵子 35歳
阿佐子 34歳、優子 16歳
陣野 34歳、持田 43歳


今までの舞台のゆったりとした空気を一変するようなパワフルで早口に捲し立てるような阿佐子。

(東京も兵庫も、初日はここで、度肝を抜かれたお客さんが結構笑っていた)

(舞台ではお馴染みの方なのかな?ツイートでおっしゃってる男性の方がいたな…。確かにそんな詳しくない私も『凄い!上手いな〜』と感じた)

田舎の閉塞感に耐えきれず、若くして上京したものの仕事(定職)も見つからず水商売で子供が出来て…という感じなのかな?

それとも地元で妊娠して親に勘当された?

阿佐子は、色々なことを親では無く、兄の治に頼っていそう。

親は既に他界?


遠くで聞こえる玄関での会話。

治が今までにない優しい声で、姪の優子に挨拶をしている。

治は優子とは幼い頃に会ったぶりの再会だった。


(心の声)
阿佐子と治のテンポの違いが凄いwww

(※注↓東京公演が始まってすぐの感想です)

たぶん圭くんは『治』は、ボンヤリした(確かに色々決断するまでいつも1テンポズレてる)性格だと思ってのお芝居なんだと思うんだけど、それが長崎弁がたどたどしいから(ゴメンナサイ…)なのか、お芝居なのかが微妙…(;^^A

(※兵庫では違和感なくなってました)

6日のソワレは、その喋り方が1番自然に(生きて喋って返事をしてると)感じられる喋り方だったので、次に観た時(兵庫)は、もっと変わって感じるんだろうか…と。

(6日のソワレ、めっちゃ良かったのに(1人で、あの場所で)スタオベする勇気がなかったのが唯一の心残り…)

《後日、兵庫を観ての感想より》

始まってすぐの東京の公演を観せて頂きましたが、マジで進化し過ぎててびっくり!!!

圭くんの長崎弁めちゃくちゃ自然になってた!マジで治が生きて喋ってた!!!!!
偶然お隣に座っておられた福岡の相互さんも違和感無かったとおっしゃってました!

始まってすぐの東京の舞台を観た時は、劇場の後ろまで声が届くのか不安だったからか(慣れない長崎弁のせいかは分からないけど)、相づちの語尾がやたらとクッキリハッキリしててw

可愛いくなっちゃってる喋り方にちょっと違和感があったけど、今回めっちゃくっちゃ渋くなってて、ホントびっくりしました!!

あの大きな箱で、ちゃんと後ろまであの呟き声が届くのほんま謎やし、それをする勇気…まじリスペクト、、、

めちゃくちゃ渋い治さんになってました。


ちゃぶ台(上手)横に阿佐子。
(ふくよかな胸の谷間が見える派手な服装。)

部屋の右奥に優子。
(水色のワンピース。透けるように白い肌。青白い顔。無表情。)

センターに治。

下手側に恵子。

お土産の『ひよ子』を差し出して挨拶する阿佐子。

お茶を入れに行った恵子の方を見て、変わらないと言う阿佐子。

治「…え?ああ、そうや。」
(一度同意したものの…)

「(恵子の方を見て)……そうかなぁ〜????」

(ここで客席から笑い)

(兵庫では、初めから恵子の方を見て、ああ、そうや?そうかな?とサラッと言うに変更。客席の笑いなし。)

一通り早口で(一方的に)話したいことを話すと、本題を話し始める阿佐子。

ある人の紹介で、中洲でお店を開いて一勝負しようと思っている。
その儲けたお金で、治が保証人になっている『あの人』(優子の父親?)の借金も返すから、娘の優子を暫く預かって欲しい、と。

(既に恵子は家を出て行っており、自分(男)1人で(年頃の若い)娘を預かる訳にいかない(家事スキルもなくお世話も出来ない)と焦る治)

阿佐子の圧に押され、思わず「…はい。」と答えてしまう恵子(自分はおらんのにwww)

治「(驚!)お前ぇ…!(恵子を睨み)ちょっと……待てよぉ!!!(怒)」

アワアワする恵子。

(客席から笑い)

優子はいい子で、(自分のせいで高校に行けてないけど)本当は頭もいいのよと自慢する阿佐子。(※家庭の事情で中卒)

優子「母さん、やめてよ!!!!!」

(大人しかった優子が突然声を荒らげる。
びっくりして思わず優子の方を見る治と恵子…)


(心の声)

この一言で、優子のこれまでの過去が見えるよう。。。

悲しい叫びだった……
戯曲で読んで想像してたよりずっと…ずっと………

( இωஇ )

(兵庫初日は、静かに怒りを秘めた「母さん、やめてよ…」でした。)

兵庫の阿佐子のうちわ突っ込み(の力)が3倍程パワーアップしてたよーな…
(*≧艸≦)wwww
愛知はそうでもなかったかも?
兵庫の(お客の)ノリがアップさせた?笑


(治が失業中なのを気遣ってか)優子の生活費は優子が自分でバイトをして稼ぐから心配ない(だからいいでしょ?)と言う阿佐子に、お金の問題じゃないと怒る治。

優子の身になって考えてやれと怒る治に、自分が1番考えていると反論する阿佐子。

治「考えとらん!考えとらんじゃなかや!自分の都合で、あっち預け、こっち預けするとが、ちゃんとした親のすることか?!親なら親らしゅう、自分の子の教育に責任ば持たんか!」


(心の声)

11月5日(土)のマチネで、ここ噛んで言い直してた。
(確かに言いにくそう…)

優子の『叫び』を感じとって、ちゃんと妹を叱る治、優しい…。

言葉が少なくて不器用だけど、ほんとは相手の感情をちゃんと受け取れる人だと思う。

阿佐子は阿佐子で、娘のことを考えていない訳ではなく、生きていくのに必死で、いつもお金が無くて(自転車操業?)で、心に余裕がない。ギリギリを生きている。
(借金取りに追いかけられていそう)

男=生きる手段

という阿佐子の人生が、この短い時間で垣間見える、、、


半ば強引に優子を押し付けて、阿佐子はさっさと立ち去ってしまう。
(兵庫、客席爆笑)

状況にアワアワする恵子。

怒ってそっぽ向いていたままの治だったが、本当に娘を置いて行ってしまった妹を(実際問題、困る!と言わんばかりに)「ちょっと待てよ!」と立ち上がって追いかける。

(ここで客席から笑い)

(兵庫では更に『間』が、ずいぶんと長くなって、更に大きな笑い)

恵子と優子、二人になって。
少し気まずい空気。

恵子が気を遣って優子に話し掛ける。

阿佐子から貰った『ひよ子』を優子にすすめる。

(兵庫初日、客席から笑い)

お土産に貰った『ひよ子』を見て、自分の息子が『ひよ子』をどこから食べたらいいのか迷って泣いた話しを楽しそうに話す恵子。

(ここ、戯曲を読んだ時、もっとボンヤリした表情で話すと思ってたら、楽しそうに、愛おしそうに話す西田さんが印象的だった。)

でも、4歳で死んでしまった…と恵子の顔から笑みが消え、平静を装って言う。

(更に表情が消え…怖い顔になる)

おそらく窓から造船所のドックが見えているであろう『第4の壁(舞台と客席の間の見えない壁)』をボンヤリと眺めている。

西陽のあたる赤く錆び付いたクレーンを見て、一体自分は今まで何を見ていたのだろう…と話す恵子。

本当は錆びて朽ちてしまった姿だったのに、それは西陽のせいだと思いこんでいた…と。


(心の声)
本当はとっくに錆びて朽ちてしまっていたクレーンのように、二人の幸せな日々なんてとっくに終わってしまっていたのに…

そうとは気付かない内に(見て見ぬふりをして)過ごしている内に、残酷なまでに時は過ぎ去ってしまった、、、

落日の西陽に照らされながら、恵子は遠い眼差しで見つめる。

過ぎ去ってしまった空白な時間を。


恵子はすくっと立ち荷物を持つと、優子に最小限の家の説明をし「帰ります。」「さようなら。」とお別れを言って去って行く。

(別居してることを聞いていなかった優子は)突然の別れに戸惑いながら、廊下へと行き、玄関に向かって「さようなら…」と挨拶をする。

(突然のことに戸惑う優子に客席から微かな笑い)

優子は窓辺に立ち、遠い瞳で街を眺める。

背後の気配に気付いて振りかえると、帰ったはずの恵子が立っていて驚く。

優子をじっと見つめる恵子…

人生まだこれから『16歳』という眩しい程の若さへの羨望、自分はいつの間にか何年も時が過ぎ去り、年を取ってしまったことへの悲しみ、悔しさ、虚しさ…

恵子は作り笑顔の後、スッ…と怖い顔になり立ち去る。

やっと1人になれた優子は机に頬杖をつき欠伸をする。

そして「嫌な町…」と呟いた。


(心の声)
窓から街を眺める杏奈ちゃんの遠い眼差しが印象的。

その瞳は何を見つめているのか…

突然母親に連れて来られ、置き去りにされた、知らない言葉(方言)を喋る人達の、知らない街。

さっき叔母さんから聞いた赤く錆び付いたクレーンが見える、、、

坂ばっかりの辺鄙な田舎の街。

後で優子は『辛抱は人を眠くする』と言っている。

母親に支配され、振り回される人生をずっと『辛抱』している優子。

この後、戯曲では優子のお腹が鳴って「おお…(照)」という台詞があるけど、言いにくいのか、初日以降は、お腹を押さえるだけのお芝居で台詞は無くなった。(気持ちは分かる)

そして、静かな舞台の為、優子のお腹のSEより客席のあちらこちらから聞こえてくるお客さんのリアルなお腹の音の方が大きい…笑

愛知の時、まさにこの時の優子目線で恵子が見えるポジションの席で、笑顔が消え、怖い顔で立ち去る恵子…マジで怖かった…🥶🥶🥶


【第二幕 8月初旬 深夜】

部屋は薄暗く、誰もいない。
遠くから潮騒が聞こえる。


(ひよ子、コップを下げ、かわりに、机の上にスナック菓子の空の袋、舞台下手 ツラ(手前)にコーラ(提供?)と、きのこの山みたいな形のお菓子の箱が置かれている。)

玄関から賑やかな声。
酔っ払った持田、陣野、治が帰ってくる。

(東京は戯曲の台詞ほどは、ハッキリ聞こえず。優子は板付きでは無く、隣の部屋からあらわれる。)

(兵庫、愛知はハッキリと聞こえた。)

慌てて優子やってきて、部屋に散らばったお菓子類を片付ける。

治「…ただいま。」(少し驚いて)
優子「お帰りなさい…」
治「なんね。起きとったとね…」(少し咎めるような声で)

持田さんはベロベロで廊下で寝ようとする。陣野は気を遣ってワタワタしている。

治、台所へ。

部屋に電気がつく。
持田さん、優子を見て奥さんと勘違いする。(客席笑い)

治、扇風機にスイッチを入れ、優子の説明をする。
(一連の会話に、客席から笑い)


(心の声)
帰ってきた治が(ランニングじゃなくて)半袖のシャツを着てて、『あ、服着てる…そらそーかw』と初日思ったwww

(東京では)
この時の勘違いする持田さんに『ふふふ…』みたいな優しい顔の圭くんの顔たまらん♡

ていうか、ここの場面の持田さん、めちゃくちゃ可愛いし(笑)、治の持田さんへの優しい眼差しにキュンが止まらないwww

ここのシーンめっちゃ好き♡
(∩´∀`∩)キュン

(兵庫では笑顔じゃなくなってた!)

持田さん役の粕谷さんの長崎弁、めちゃくちゃ上手い!

ネイティブな(私の)友達は、持田さんと陣野さんの長崎弁がとっても上手だったと言っていた。

(※東京公演始まってすぐの感想です。)

治「これは私の友達です♡(両手バッ)」

(前に出過ぎずな治の性格を残しつつ、酔って楽しそうな治のお芝居♡)

(ここも兵庫では笑ってないように変わってた。)

優子は終始、苦笑www

戯曲では『ずっとお世話してきました』と肩を組むのが、舞台では治の長い脚にしがみつく持田さんw(うらやましか!www)
(ノシ`>∀<)ノシ バンバン

戯曲ほど(※戯曲は『治フラフラして』と書いている)持田さん以外の2人は酔っていなくて、割りとしっかりしている。


持田さんがリードボーカルでクール・ファイブの『長崎は今日も雨だった』を歌う。

(これ舞台の帰り道、めっちゃ頭の中ぐるぐるするwあ、歳バレる?笑)

陣野と治、バックコーラスを歌う。最後のとこは一緒に歌唱。


(心の声)
治は少し控えめな歌声。

「ビールこんだけしかなかとよ(上目遣い)」って言い方、いつも可愛い!って思うwww
(ノシ`>∀<)ノシ バンバン

あの中途半端な量のビールなんなん?w
炭酸だけどチョビチョビ飲んでるの?(笑)

※治のビールは『アサヒ スーパー・ドライ』

優子にビールを注ごうとする陣野と未成年だから駄目ばい!と止める治。

昔は割りと緩かった(コラ)ことを考えると治はかなりの生真面目な人?

乾杯の後のイッキ飲みも治は皆んなより、イッテンポ遅め。(細かい)

この後の持田さんの「みんな、さびしかとやろか…♡」の言い方wめっちゃ可愛いww

その後の治と陣野の後ろでユラユラしながらニコニコしてるんも!
(*≧艸≦)フフフフフフ


なかなか就職活動をしようとしない治に、陣野は「情けなかじゃなかですか?」と(失礼だとは思いつつ)助言する。

自分でも分かっていることを指摘されカチンときた治は、陣野と言い争いになる。

気まずい空気。

そんな中、電話がかかってきて気が付いた治が立ち上がり出ようとするが、優子が先に出ていて驚く。

陣野と言い争って気まずい治は元の席には戻らず、ぼんやりと階段に腰掛け、2人の話しを聞いている。

陣野と持田は、持田の再就職先のタクシーの仕事について話をしている。

持田は、朝に仕事が終わるので明るい中では、なかなか眠れない。

こんなに眠たくなったのは久しぶりだ。気持ちがいい。嬉しい。と、幸せそうな顔をしてうつらうつらしている。

少し横になったらいいじゃないですか〜?と言ってあげる陣野。

それを聞いて泊まっていけばいいと言う治。


(心の声)

フニャフニャしながら、治の膝枕で眠る持田さん!(マジ、うらやましか!)
(ノシ`>∀<)ノシ バンバン


その後、持田さんは床で眠ってしまい、陣野と治は気まずい空気になる。

酒を買ってくると立ち上がる治。

「自分が買って来ます。……いや、やっぱり帰ります。」と言う陣野に「よかね。泊まってけば」「いや、帰ります」と言い争いになる二人。


(心の声)

この後の頑なに「帰る」と言う陣野に「何でね!(怒鳴り)」と言う治が、戯曲で読んで自分の中で思ってたより、激しくて、悲しみ交じりの怒鳴り声でびっくりした。

圭くん的にはどういう「何でね!」だったんだろ…?

酒買うてくる、泊まっていけ言うてるのに、(妻との浮気を疑っている)陣野の様子があからさまにおかしいくて、ソワソワして早く帰りたいという感じなのが悲しくて腹立たしかったのかな?

(この後恵子のところに行くつもりと疑っての「なんでね!」の線も考えたけど、まだなんとなく疑って詳しい話しも聞いてない段階で治がそこまで考えるかな?と。その後の台詞で「どこに?」っていうのもあるしね。)


(タクシーを待つ間のヒリヒリとした会話劇に会場から笑いがおこる。)

責める訳でもなく、怒る訳でもなく、別にそんなに気にしてないんだけど、一応ちょっと知っておきたいんだよね…くらいの感じで家を出た恵子について尋ねる治。

それをなんとか誤魔化そうとする陣野。


(心の声)
(治より更に人の気持ちを敏感に察知しそうな陣野(太鼓持ちな性格っぽい)は、恵子が本当はまだ治のことを気に掛けていることや、亡くなった子供のことを大切に思っていることも気付いていて、出来ることなら教えたくない…と思っているのかも…と。)

(あのシャツの下…暑さとは違う、じっとりとした嫌〜な汗かいてるんだろな〜〜〜笑)

(そのチグハグさが可笑しみを生み、客席から笑い声。)

治のノリ突っ込みみたいな「あ、そうね。…いや、まだやろ…」とか、(クラクションの音が)「聞こえたよぉぉぉ〜〜〜(必死)」とか、「ま、とにかく行ってみますけん。」「どこに?(え、恵子のとこに?)」「え?……いや(汗)…」とか、純粋に見送ろうと陣野についていく治に(殴られるんじゃないか…くらい)超警戒するとことかwww

(俳優さんの絶妙な間や、台詞の強弱、生のお芝居から受ける空気感…最高♡)

(*≧艸≦)フフフフフフ

(兵庫では、陣野さんの聞こえたよ〜が、サラッとに変更されてて、客席の笑いなし。)


居間でゴロ寝していた持田さんが突然うなされる。

(想像していた以上にうなされていてびっくり…怖…)

(にこやかで、一見穏やかそうな持田さんだけど、慣れない仕事や、家族を養わなければならないプレッシャー、眠れない等で心も体も衰弱しているんだろうな…)

治の顔を見て、夢だと分かり心底ほっとして「ああ…浦ちゃんねぇ…、怖かったよぉ〜死ぬかと思ぉたよぉ〜」と言う持田さんが切ない、、、

(次は夢から醒めることがない)

(´∩ω∩`)


(心の声)

今回ご縁があって一緒に観た学生さんが、カテコで持田さんが元気に出てきてほっとしたって言ってて可愛いかった♡
(∩´∀`∩)


(治  下手(左側)  ちゃぶ台横)

久しぶりに沢山の人と会い、色々な話をした一日。

元同僚が(何人かは既に)新しい道を見つけて就職した話。

その道も決して平坦ではないけれど、生きる為に頑張っているという話。

陣野のこと。
(恵子のことで複雑な思いはあるものの)言いにくい事を(心配して)言ってくれる、(恵子のことも最後には迎えに行けばいいと言ってくれた)憎み切れない後輩(友達?)。

恵子のこと。
所在が分からなかった恵子が意外に自分の近くにいたこと。
(近くに居てくれた驚き。と安心感?←自分のことを見守ってくれてそうな所に居てくれた)
恵子もまた慣れない仕事を頑張っていること。

やっと落ち着き、煙草を燻らしながらそんな事を思い出す。

酔いと疲れで、ぼんやりと…

「おじちゃん、水、出ないよ。」
と台所から現れて言う優子。

「あそう。そうね。断水になったとかな…まぁ、明日の朝には出ると思うけど。」

その後も優子と会話はするものの、(優子の返事に)感心があるような…無いような…。

優子が2階の部屋に戻り、一人になると畳に横たわり、ぼんやりと煙草を吸う…

しばらくすると、優子が戻ってきて…

優子「ねぇ…おじちゃん。」

治は「なんね?」とのっそり起き上がる。

優子は「おじちゃんの子供って死んじゃったの?」と聞く。

治「……うん……。」

優子「どうして?」

治「……え?」

優子「どうして死んじゃったの?」

治「………」


(心の声)

ここ!!!やばい!!!!

(✽︎´ཫ`✽︎)ダラダラダラダラ……

寝そべりながら煙草吸うの考えた人、誰!?
圭くん???栗山さん???

マジで天才……(0(:3 )〜 _('、3」 ∠ )_シヌ……)

一度だけ座った上手(かみて)H列から、オペラグラスで観たこの時の表情…………

額に血管が浮いて、色気駄々漏れの表情で寝ながら煙草吸う姿………

少し気だるそうに、だらんと伸ばした右手で煙草を持ち、左手は股の間に挟んでいる

いや、まじであの角度の映像求む……

(センターでも駄目なんよ…上手じゃないと…※センターは登頂部と高い鼻が見えとった 笑)

(追記)
配信で(ちょっとやったけど)ありましたね!
(ノシ`>∀<)ノシ バンバン
ここ、地方公演の時は寝そべってる時間が短かったと思う。
(上に書いてるのん、地方公演見て書き直したので。)
東京最初の頃は下の所くらいから起き上がった記憶。


優子が立ったまま返事を待っているので、教えてあげる。

遠い日の悲しい思い出を…遠い目をしながら語る治…

「ほんと…かわいそかことばしたよ…」

(胸が締め付けられるような)悲しい笑顔で。
遠い瞳で…

辛い思い出を話させてしまって謝る優子。

治「え?いや、よかよ。もう、すんだことやけん。」

子供の名前が『明雄』だったことを聞くと、『小浦…明雄?』と言い、(生きていれば)自分のいとこだったのに…。自分にはそういうのいないから…。と言う優子。

治も…なるほど、「ああ…そっか。そうたいね…(微笑み)」と少し嬉しそうに笑った。

優子は部屋に戻って行った。


(心の声)

転校ばかりして友達も(ほとんど)いない優子。

年の近い(友達とは違う)血の繋がった(離れることがない)『いとこ』がいれば、どんなだったかな?と思ったのかな?

治もそんな優子の言葉を聞いて、もし明雄が生きていたら…と二人並んだ姿を想像したのかも。

少し嬉しそうに微笑えむ治の笑顔が切ない。


部屋の片隅に持田さんが「おしっこ」と小さな子供みたいに立っている。

トイレを済ませた持田さんは「水、出んよ…」と、ぽつりと言うと部屋へと戻った。

治「バケツって…あったかなぁ?風呂に水…貯めればよかか…。それとぉ、洗面器と鍋とぉ、、ええっとぉ、、、何か…あったかなぁ。」


(心の声)

(東京公演を観た時)
戯曲を読んだ時、違うことに心奪われていて、ほんとはそんなに気にもしてないけど、みんなが『水が出ない』と言うので、(ぼんやりと)心ここにあらずな感じで呟くように言うんかな?と思ってたら、割と真剣に必死に(絞り出すように)思い出してて意外w

そして、この部分の長崎弁の音程が微妙に感じた(ごめんなさい…)

(兵庫公演を観て)
(イメージ通り)呟くように変わってた。
長崎弁の音程の違和感も無くなってた。


【第三幕 8月中旬 昼】

(暗転 煙草 灰皿机の右側へ )

優子、玄関から帰宅。
治はハローワークへ出掛けていて不在。

治の留守中にバイト先の先輩を家に連れ込む優子。

バイト先の先輩 立山は、おどおどキョロキョロしながら、居間(センター右寄り奥)に、ゆっくりとあぐらをかいて座る。

優子は、もうすっかりこの家の住人のような立ち振る舞い。

お茶を出そうとしたものの、何も無い、水も出ないと謝る優子に「よかよか」と明るく答える立山。

足で扇風機のスイッチを入れ、風を浴びる優子。

以前、受話器から聞こえたクール・ファイブの歌の話しを楽しそうにする立山。

それを知った優子はびっくりして恥ずかしいと、のたうち回るw

「あんな歌を歌う伯父を持ってることが恥なの!不幸なの!私にとって」

と言いながら、舞台下手(左側)角に移動し、白く綺麗な脚を投げ出し、ブラブラさせる。

(C列最前列の杏奈ちゃんの男性ファンは間違い無く即死0(:3 )〜 _('、3」 ∠ )_)

立山「いやいや、あの歌をあんだけ気持ち良さそうに歌う長崎市民も珍しかよw 」

(客席から笑い声)

全然雨が降らないからあれは雨乞いだったんじゃないか、断水してるのは坂の上に立つ家だからか、それにしても暑すぎるなど他愛もない話しをする二人。

床をずりずりしてニヤニヤしながら「こーゆー時、『暑かー!』って言うんでしょ?」

立山「うん」

優子「言ってみて」

立山「暑かぁ〜…(少し照れながら)」

優子「暑かぁ〜…(マネて)…フフフ」

(モノマネする杏奈ちゃんの暑かぁ〜が可愛い過ぎて、いつも『ふふふ』ってなるw)

窓辺に立ち上がって、立山の家がどの辺か聞く。
立山も窓の所に行き、家の辺りを指差す。

大学は?と聞かれ、立山は探すフリをして、優子の体にピタリと身を寄せる。

立山を見て驚きもせず、優子は立山の頬っぺたをつまむ。

突然の優子の行動に動揺しながら「何ね!やめんね!」と払いのけ、頬をさする。

優子は「2階行こっか。私の部屋。」とイタズラっぽく誘う。

立山「うん。よかけど…。」

優子「…………。」

机の上にあった治の煙草を吸う優子。

立山「おじさん帰ってこんと?」

ソワソワしながら、どこか落ち着かない立山。

煙をふぅ〜と吐く優子。

一向に2階に行く気配のない優子に少し苛立ちながら、交代の時間じゃなかと?と聞く立山。

今、立山さんのことが好きな『七尾さん』だから交代しなくていい。「…上行く?(煙草を消して)」と再び誘う優子。


(心の声)

慣れない土地。
慣れない方言。
慣れない名字。

(全て優子からの話しなので、本当のところはどうか分からないけど…)

『名前を呼んでも直ぐに反応しない、無愛想で何を考えているか分からない』と店長から疎まれ、冷たく扱われている優子。

立山のことが好きな七尾さんからは、(立山が優しくする)優子を妬ましく思い、嫌がらせをされている?

そんな中、優しく親切に接してくれたのは立山だけだったのかもしれないね。


優子は自分の頬っぺたをつまんだりしながら、中学2年の時、唯一の友達だった花村さんについての話しをし始める。

「花村さんの頬っぺたってね。とっても柔らかかったの…」

花村さんは太っていても姿も心も美しかった…と陶酔するように語る優子。

(優子にとって花村さんは、人生で唯一、下心もなく、何の見返りも求めず、どんな自分も大きな心と体で包み込んで受け止めてくれた人だったのかも…)

抱きしめれば、知らず知らずのうちに骨さえ粉々に砕いてしまうほどの大きな愛で…

ブラスバンド部だった花村さんは、鼻に汗をかきながら何度も何度も同じフレーズを練習する。

優子はその横で、花村さんに貰った冷えたお茶をゴクゴク、ゴクゴク飲み、なんとも言えず美味しかった…と。

立山はゴク…と生唾を飲みこむ。

優子は涙を拭いながら呟く…
「花村さんて…どんな顔してたっけ…」

優子は隣の部屋に行き、鏡台の前に座って自分の顔をうつしている。

立山「……何ね、上行かんと?」「…じゃ、帰るけん。」

優子「何か………会いたくなっちゃった…花村さんに…」

立山は真顔になり隣の部屋に消えていく。


(心の声)

バイト先で優しくしてくれた立山に下心があることが分かり、『無償の愛』をくれた花村さんのことを思い出したのかな…

もう顔すら思い出せなくなってしまった遠い記憶の…

唯一の心から優しい美しい人…

(´•ω•`)…

そんな中(知ってか知らずか)、花村さんが暑さや喉の渇きに耐えながら練習する横で、優子が美味しく飲んだお茶の話しに、(色々)堪らない気持ちになる立山先輩、、、

(なんとも官能的な表現)


治「優子ぉ〜優子ぉ〜」

4時まで帰って来ないはずの治が、突然帰ってくる。

慌てて優子は着衣を整えながら(胸元のボタンをとめながら)、隣の部屋から出てくる。

優子にこの前ここに来た持田さんが亡くなったことを告げ、喪服に着替える為に隣の部屋に行く治。

立山と鉢合わせる。

びっくり仰天!

(客席から大きな笑い)


(心の声)

ここの戻ってきた治がランニング姿で、『え?治、ハローワーク、ランニングで行ってるん?』ってなるwww

あ、もしかして、歩いていかるん場所はランニングOKかい?笑
(出会いたい…田中圭、ファンの心の呟き)


治「優子ぉぉぉ〜(←全てを理解?)」
(お説教めいた響き)

(阿佐子がおんなじ年くらいの時とデジャヴ?笑)

立山くんに「ちゃんと責任取れるのか?」等と着替えながら問い詰める治w

オロオロ…オドオド…する立山くんと、口うるさいおじちゃんにオコモードの優子。
「早く帰りなさい!」と立山くんと優子をなんとか引き離そうとする治。w

(客席から大きな笑い)


(心の声)

ここの場面から少しずつ心境の変化?

優子→立山

優しくしてくれて(純粋に)好きだった

(下心がありと分かる/過去にも同じ経験?)

→今の状況を救ってくれるかもしれない相手(男=生きる手段/希望)へと変化?

治→優子

ほんの幼児の頃に会ったきりで久しぶりの優子。

治の中では、まだまだ幼い記憶のままの優子で(容姿も童顔だし)、(作れもしない朝ごはんを作ってやろうか?と声を掛けるほどに)子供。

(立山との関係を知り)

→子供から女へと見る目が変化?

※圭くんと杏奈ちゃんは、(私が観た時は)全然、官能的では無かったけど…w

戯曲を読んで考察するとそういう関係性も有りなのか?と。

でも愛知ソワレの二人は艶っぽかったな。


そんな中「ごめんください。」と玄関から女性の声がする。

「はい」と着替え途中の治が隣の部屋から出てくる。


(心の声)

『白シャツにトランクス姿』って戯曲に書いてあったから、どんなんやろ?と思ってたら、まじルパンやったwww
(脚めっちゃ細いしw)

※黒い靴下、ぶかぶかの水色パンツにシマシマw

ププ━(〃>З<)━ッッ!!!

※1回目パンツで出てきて、指摘されて恥ずかしそうに隠しながら引っ込んで、2回目出てくる時は、片足だけズボン履いててその場で履く。

(兵庫では、1回目、2回目共にパンツ。11/27のソワレではクルクル回ってたw)


(やって来たのは陣野さんの奥さんだった。)

優子、治を指先して玄関へ。立山も見て。

立山「あ…!」

治「何ね?言わんね(イラッ)」

治は『黒』のネクタイではなく『白』のネクタイをつけていた、、、笑

『あ!』と気付いてアワアワしながら付け替えようとするが、間に合わないので、とりあえずそのまま話を聞くことにするw

(客席から笑い)

喪服姿。頭と左腕に左足に包帯がぐるぐると巻かれている。

ちゃぶ台の『上手』に茂子。『下手』に治。
扇風機の場所に立山(笑)
(茂子が来たので、そのまま奥に追いやられて移動してしまったw)

階段手前に優子。

(突っ立っている立山が目障りで)「座るなら座らんね」と治に言われ、思わず「はい…」とその場に座る立山。

深刻そうな二人と(完全部外者の)立山…(気まず〜い空気…笑)

優子「………。」「(/`・ω・)じゃ!」

と立ち去ろうとする優子。

(治、立山、優子のやり取りに客席から大きな笑い)


(心の声)

ここほんま、めっちゃオモロwwww
ゞ(≧ε≦*) 爆笑


このあと、立山、優子に助けられて居間から脱出成功(笑)

(客席から笑い)

茂子と治のみになる。

緊迫した空気…

茂子が喪服姿なので、これから持田さんの家に行かれるのですかと尋ねる治。

茂子「いえ…」

答えが『NO』だったので『?』となり、持田さんが亡くなられたことはご存知ですか?と茂子に聞く。

茂子「は?」「…ええ、知ってます。」

しばらくお互いの会話が噛み合わない…

『訳がわからない』という治に、一つずつ、説明していく茂子…

持田さんが亡くなられたことを知って、夫(陣野)と持田さんの家に手伝いに行ったこと。

夫に包帯姿の自分が失礼になるから帰れと言われたこと。

そもそも何故自分がこんな姿になってしまったのか…ということ。

(茂子の説明に客席笑い)

茂子「ご主人は知っとらすとでしょうか」

治「え?何ばですか?」

茂子「うちの主人と、おたくの奥さんのことです。」

「どげんとですか?知っとるとですか?」

治「…………まあ……何となくは……その……」

茂子「何となく…」

*****************
(心の声)

戯曲読んだ時は、ケガした場面でこんなに笑いが起こるとは思ってなかったw

陣野さんの奥さんとの『まあ、なんとなく』のとこは東京公演が始まってすぐの時は、(客席は)笑ってなかったけど、後半は絶妙な空気感、間合い、茂子の表情で笑える場面にw

(『まあなんとなく』兵庫初日のみ笑いあり)
兵庫、愛知と間合いがどんどん長くwww


最初は同情して茂子の話しを聞いていた治が、陣野と恵子の関係のことを責められて、シュルルル〜〜〜っと、どんどん小さくなっていっていくw

と、そこへ恵子がやって来る。

治「えええぇぇぇ……!(目を剥いて)」

(絶妙な『えええ…』に客席から大きな笑いw)

大変気まずい治と、キョトンとする恵子。
客人が陣野さんの奥さんと聞き、ギョッとして恵子は思わず声をあげる。

(客席笑い)

気まずいながら恵子を紹介する治。
冷たい声で「存じあげております。」と答える茂子。

治が非難交じりに、恵子に一体何しに来たのかとに聞くと、喪服を取りに来たと。

治「なんでぇ…(落胆)」

恵子「え?知らんと?持田さん、…」

治「知っとる。(怒)」

持田さんの奥さん(と陣野さん)に人手が足りないから来てくれと言われたと。

(客席から笑い)

陣野さんの奥さんは、ちゃんと夫婦なら夫婦で、ちゃんと監督してくれないと困る(怒)と治を叱責する。

その後、鬼気迫る表情で今度は恵子を責める陣野さんの奥さんと、俯いたままの恵子。

それを居たたまれない気持ちで聞いている治。

(兵庫、陣野が恵子に贈った冷蔵庫のやり取りで爆笑)

すると突然茂子は、俯いたままの恵子に大怪我したキズを見せようと包帯をほどき始める。

いかほどに自分の負った(心の)傷が深いのかを恵子に見せようとするかのように、、、

治「奥さん…ちょっと…何ばしよっとですか!?」

「……ちょっと、止めんですかっ!」

(止めようとして傷口に触れてしまい)

茂子「痛ぁぁ…!!!」

治「あっ!すんませんっ!!!」

(びっくりして後ろずさって尻餅をつき、そのまま固まる(傷口に触ってしまって驚いて引っ込めた手もそのままで…))

茂子「こっちは7針も縫うたとです!…自分で歩いて…病院まで行ったとです!こうやってここばハンカチでおさえて…」

それがどんなに悲惨で、どんなに惨めだったかを訴え、泣き崩れる茂子…

治は固まったままの姿勢で、茂子の話を聞いている…

姿勢こそそのままだけど、次第に茂子の悲しみが伝わっきて、驚きの表情から、だんだん同情と悲しみの色に変わっていく治の表情…


(心の声)

ゆっくりと悲しみの色へと移ろいゆく表情…
さすが田中圭…と言いたくなるその変化…

(ここは映像でしっかり観たい…)
:;(∩´﹏`∩);:震


茂子は立ち上がり、スッ…と、まるで生きているのに死んだかのように表情を失うと、無言のまま立ち去る…。

沈黙する二人…

治は『はぁ…』とようやく力が抜けて、固まったままだった手をパタリと下ろす。

茫然自失のまま着替えをする為に治は立ち上がり、隣の部屋へと向かう。

恵子「あなた…」

治「ん…?」

恵子「ネクタイ…違うとじゃなかと?」

治「…………。」

「ああ…(冷たい声と怖い顔で)」

治は隣の部屋に行くと、黒い上着を腕に掛け、ネクタイを結びながら「先に行っとくけん。」と玄関に向かった。
(驚きと同情と悲しみと疲れの混ざったような複雑な表情で。)

恵子は「私も着替えたら、すぐに行きますけん…」と声を掛け、隣の部屋に着替えに行った。

治が戻ってくる。
(治は修羅場が終わった後の色んな感情で、なかなかネクタイが結べないでいる)

恵子が着替えている隣の部屋に入って行く治。

恵子「何ぃ?どげんしたとぉ?」(呑気な声)

パリーン(割れる音)

優子と立山、驚いて2階から降りてくる。

部屋から出てきた治は、階段から心配そうに覗く優子と目が合い「何でんなかと…。」と言い、そしてその後ろの立山に気が付くと「お前、まだおったとか…。はよ帰れ。」と言うと再び玄関へと消えた。

(初めの頃(東京)は怒りの表情やったと思うんやけど、兵庫では悲しみと憔悴を強く感じた。)

部屋に駆け寄り「おばさん……!」と優子が声をかける。

恵子「……優子ちゃん。…ファスナーの後ろ…上げてくれる…?」(平静を装った声)

優子「……はい。」

優子、部屋へと消える。

残された立山は「あの…じゃ、帰るけん…」と部屋に向かって声をかけるが返事がない。

「さようなら」立山玄関へと向かう。


(心の声)

チラホラここの場面で、治は日常的に恵子に手をあげていたのかどうなのか?的な感想を見ました。

それは私的には無いと思っています。

自分が裏切られた時、その事実を見ないようにして、何となくやり過ごしていた治。

それが傷付いた茂子の姿を目の当たりにして、(治だって被害者なのに)申し訳なくて…胸が痛くて…

それなのに、(茂子が帰った後)恵子が言った言葉は、(自分が犯したあやまちへの)治や茂子への謝罪の言葉ではなく、治のネクタイの間違いの指摘の言葉だった………

自分の大きな間違いは棚にあげたまま。

茫然自失、その場を立ち去ったものの…

後になって、じわじわ、じわじわ…
茂子同様…腹んたって…腹んたって…
いつまでも経ってもネクタイが結べない…

そして、戻ってきた治は、(恐らく恵子は着替えていたので、洋服ダンスの所にいて離れていた)鏡台に化粧瓶か何かを投げつけたんじゃないかな…と。

(その後の場面でも怪我はして無いしね)

余談ですが…ここのSE(パリーン)が想像してたより高音でびっくりしたw


【第四幕  8月下旬  昼】


(数日後  隣の部屋に優子と立山)

優子の声「痛いっ!」「痛いってぇ!」

「え?何ね?ああ!大丈夫ね!」と立山がトランクス姿で隣りの部屋から出て来て、居間の飾り箪笥を開けて救急箱を探す。


(心の声)

立山くん、さっき上手(右側)に消えたのに、一瞬の暗転で下手(左側)から、パンツ一丁で出てきたやん!(すご!)

裏でめっちゃダッシュしながら脱いだ?

笑笑笑


隣の部屋から白い小さな小花のキャミソールに白い短パンの優子が「何してるの?」と出てくる。

左の二の腕に怪我をして血が滲んでいる。
手に鏡台のガラスの破片を持っている。

立山は隣の部屋に戻り救急箱を探している。


(心の声)

立山「ちゃんと掃除したとやろ?」
優子「うん、でも掃除機とかかけなかったから」
立山「畳の隙間に入っとったやろ。」

(突っ込み)
ガラスの破片『10センチ×10センチ』くらいあるんですけど〜www

掃除機の問題じゃないし、畳の隙間に入ってたっちゅーか、それもぅ手裏剣刺さってるみたくなるからwww

とか、心の中で突っ込みつつw

まあ、その後チラチラさせるのとか、広い舞台上しょうがないとか分かってるけど、ちょっと面白かったw

(≧з≦)プププ


救急箱を探し当てて(服を着て)居間に戻ってくる立山を見て優子は驚く。

こんな物(救急箱)は大体入ってる場所が決まってる、と笑いながら聞き流す立山くん。

それでもまだ優子は「おじちゃんより良く知ってると思う!」「あの人何にも分かってないの」とぼやく。


(心の声)

そんな事まで!?ってとこまで、恵子が全部やってあげてたんだろうね。

そして少し具合が悪いと言ったのに何にもしてくれなかったと拗ねる優子。
そっけない治の態度にイライラ?
美少女の優子は(阿佐子の相手の男も含め)デレデレチヤホヤされてきたんかもね。陣野もあの夜(電気着いた時)デレた顔して優子の事見てたしね。


自分で薬を付けている優子の顔に立山がふざけてガラスの破片で、どこからか入ってくる光を反射させて優子の顔を照らす。

チラチラする光が煩わしくて、立山に「止めて」と言うのに、立山は調子にのって止めない。

イライラした優子は「もうバイトの時間なんじゃないですか?(はよ帰れ)」と立山に言う。

立山は夕方からでいい(いや帰らん)、と言う。

優子「サボリ!」


(心の声)

この辺のシーンで11/5(やったかな?)1回、二人の掛け合いがゴチャゴチャ…ってなってん?ってなって、笑ってて可愛かったw

包帯ポイっとするところも新体操のリボンの如く(笑)、毎回違う軌道を描いて面白いw

(頭に乗っかっちゃった日もあったそうでw)
(*≧艸≦)www
(追記)12/11愛知の千穐楽でついに観れた!


『はよ帰れ』という態度の優子に急に『治が帰ってくる?』と不安になる立山w

仕事で夜まで帰って来ないと言う優子。

(治は『どんな仕事でもいいから、とりあえず働かなければ』と、あの後すぐ仕事を見つけたんだね)

今度は優子がガラスの破片で、立山の顔に光を反射させてチラチラさせる。

立山「まぶしか!止めんね!」

笑いながら止めない。

「私みたいにクビになっちゃうよ」

驚いてクビになった理由を聞く立山。
優子も思い当たることを何個か言うけど、何故だかは良く分かっていない。

優子「何か、よくわからないんじゃないかな?私のこと。……自分でも自分のこと良く分かんないし…私。」

ちゃぶ台に寝そべって、上目遣いでイタズラっぽく
「立山さんのこと本当に好きなのか…」

立山「まぶしかけん!やめんね!」

ガラスの破片を立山に投げつける。

立山「ぅわ!危なかやろ!」

優子「危なくない!……危なくないわよ!そんなの!!」

立山「ケガするじゃなかね!」

優子「ケガしたのは私です!ほら!」

立山「やめんね!」


(心の声)

戯曲では…

傷口を見せようとした優子に
『立山は(少し乱雑に)汚れた包帯でぐるぐると優子の傷口を覆う。』

と書いてあるんやけど、舞台上の立山くんは、めっちゃ丁寧にクルクル巻いててw

優子も「傷付いたのは私ですぅ」も「ほら!」もちょっと楽しそう(な声)やしw

戯曲よりだいぶ、普通のカップルのように軽やかなお芝居。

戯曲を読んで思ったのは、、、

まるで自分が優子の体を汚した後、優子の心の傷を見せつけられそうになって、見ないように慌てて蓋をするように(汚れた包帯で)巻いたんかな、と。


優子は赤い血の滲む、傷口に巻いた汚れた白い包帯の端を垂らしたまま、真っ黒な庭に裸足で降り立ち、遠い瞳をしながら話し出す…

優子「……ピカーッて、光って、………一瞬のうちに、消えてなくなってしまったんでしょ…この街…」

「ねぇ…そうなんでしょ…」

立山は優子が何を言っているのか分からない。自分が生まれる前のことなんか分かる筈ないと笑いながら聞き流す。

優子「でも…この街のことだから…お母さんの生まれた。坂があって…港があって…川が流れてて…校庭に黄色いダリアの花が咲いていた…。夏のうだるような暑い日…。」

優子の中に流れる『血』が、まるで優子にその日の『記憶』を見せているかのように…遠い瞳で。

優子は空を見上げて「……白く。しろーく、光って…私も消えてしまいたい…。」と呟いた。

立山は本当に消えてなくなってしまいそうな優子の背中にそっと頬を寄せて、キズの痕が残るかな?残るなら自分がその責任を取る…と言う。

優子は、「じゃあ…治さない。」と言ったものの、直ぐに冷静になって、「治るわよ、こんなの。きっと。」「治って、立山さんのことなんか忘れてしまう。」

どんどん優子の沼(砂?)にハマっていく立山。

優子「上行こ。」

立山「え?」

優子「立山さんち、見えるわよ。逆さまに。」

立山「逆さま?」

天体望遠鏡があるの、明雄くんの。と答える優子。


(心の声)

4歳の明雄くんに買ってあげた天体望遠鏡。

明雄くんは星の好きな子だったのかな…
3人で夜空を眺めていた幸せな時間が見えるよう…

優子も明雄くんは、治たちに大事にされてたんだな…と望遠鏡をのぞきながら思ってたかも、、、
(他にも明雄くんの思い出の品がお部屋に沢山のこされているのかもね…)

「明雄くんて誰ね?」と聞かれて、「ナイショ。」と答える優子。

最初、小悪魔的かえし(だけかな?)と思ったけど、おじちゃんの悲しい過去を勝手に話す訳にいかないと思って『ナイショ』にしてあげたのもあるのかな。


優子が逆さまに覗いた立山の家。

お金持ちだけど、お母さんが二人いて…立山が2階の窓辺で頬杖をついて外を眺めていた…。

どんなに立山が訂正しても優子の耳には届かない。

立山「とにかくそいは、おいじゃなかよw」

優子「立山さんだったわよ!(叫)」

「……そうよ…立山さんよ…(思い込もうとしているかのように)」

立山「……………」

優子「…何をぼんやり考えていたの…?」

優子2階へといく。

立山も後を追って2階へと消えていく。

ツクツクボウシの鳴き声。
夏ももうすぐ終わる。


(心の声)

『この場面で優子は何を見ていたのですか?』という質問に松田さんは、少し考えた後『忘れた』とおっしゃったと聞きました。

作者が答えてしまうと、それが正解になってしまうので、答えを出さず、皆んなの『思ったモノ』を大切にしたいと考えられているんだろうな、と。

《私が思った優子が望遠鏡で覗いていた逆さまの世界で見つけた立山の家とは》

今の自分を救いだしてくれる程の裕福なお家に住んでいて、それでいて立山自身も家庭の環境が複雑で、自分の苦しみを理解(共有)してくれる理解者で。

(家庭環境的に性的行為に恐らく嫌悪感がありそうなのに)自分の体を捧げてまで救いを求めた立山は、そういう人間であるべき。そういう願望が優子に見せた幻影だったのかな?


【第五幕 夏の終わり 夕方】

(さらに数週間後。夏の終わり。夕方。ヒグラシが鳴いている。 )

ちゃぶ台をはさんで、『下手』に陣野。『上手』に治。

陣野はスーツ姿で正座をし、項垂れ、大きなボストンバッグを奥に置いている。

治は(中華料理屋の人が着るような)前面が少し血で汚れた白い作業着を着て、胡座をかいて煙草を吸っている。

陣野「…すいません…ホント…お仕事中に…」

治「え?……ああ、よかよ、別に。」

沈黙。

治は煙草をふかして陣野からの言葉を待っている。

陣野は水が出ないなら役所に言えばいい、とか、自分が言いましょうか?などと、どうでもいい話ばかりして、なかなか本題に入らない。

治「よかて、水のことは。(少し苛立って)」

「今から、どっか行くとやろ?」

なおも(陣野は焦りながらも)、なかなか言い出せないでいる…

治「……おいはねぇ。店長さんに無理言うて、休みばもろうたとよ。」
(苛立ちながら煙草を消す)

陣野「……はぁ。すいません…。」

(心を決めて)

陣野「福山に行くことにしたとです!」

親戚の造船所で働くことになったので、そのまま行くのも、失礼かな…(いや、もう十分失礼なんですけど…ゴニョゴニョ)と、挨拶にきたと。

治「ああ…わざわざありがとう。」

(少し悲しげに微笑んで)

「すいません!!」陣野は深々と頭を下げる。

目を伏せる治。

ふっ…と視線を上げて陣野を見るとまだ頭を下げ続けている。

「やめんね…」陣野の頭の下げ方(土下座並み)にそれがどういうことなのか、(本当の意味を)ゆっくりと理解する治。

陣野は(誰がとは言わずに)「呼んで来ますけん。そこに、玄関のとこに、来とりますけん。」とだけ伝えた。

治「……あ、そうね。」(少し驚いて)

「……よかよ、もう。(悲しく微笑んで)」

陣野「呼んできます。」

治「よかて。」

陣野「ちょっと待っとってください。」


(心の声)

こういう多くは語らないけど心の中で揺れ動く繊細な表情の圭くん…ほんと凄い…
:;(∩´﹏`∩);:震

何故か下手(左側)ばかり当たる私(上手は1回だけw)だけど、ここの(この後の水のところまで全部)表情を観れたのは本当に有難い…

そして配信でしっかり観れるの嬉しい!
(≧∀≦)/ワーイ


一人残された治は、今からやって来る(であろう)恵子に顔を見られないよう(気持ちを悟られないよう)背を向けて座り直す。

恵子がやって来る。

治「まあ、座らんね。」(背を向けたまま、優しい声)

恵子「うん……。」

間。

治「…福山に行くとってね。」

恵子「ああ…。うん。」

治「……汽車で。」

恵子「うん。」

治「博多からは新幹線。」

恵子「うん。」

治「『かもめ』やろ。博多までは。」

恵子「…え?ああ…そうかな?」

治「……あんぱん食べんばね。」

恵子「え?」

治「あんぱん。」

恵子「あんぱん?」

治「そう、博多あんぱん。」

恵子「何ねそれw」

治「……しらん」

食べたことないあんぱんを薦め続ける治に「食べたことないなら美味しいかどうか分からんやろw」と突っ込む恵子に「わからん…苦笑」と歪んだ笑顔の治…。


(心の声)

本当は悲しいのに無理に笑って会話しようとして、歪んだ笑顔のまま他愛もない会話をし続ける治。

もうこの会話が終わってしまえば二度と会うことも無いであろう恵子との会話を少しでも長く引き伸ばしているかのように…

(U>_<U)ウウウ…

(兵庫では、最初の部分の他愛もない会話は笑顔じゃなくなってた。最後の「わからん…」だけ泣いてるみたいな顔で笑ってた)

(இдஇ; )

恵子から中華料理屋の仕事で大丈夫か?と心配されて、「洗い場やけん…」と答えて「ああ、そっか…」と納得された後、「ばってん、たまに料理もするとよ!」と恵子の方に体を向き直して、少し楽しそうに虚栄を張る治…

ほんとはそんな仕事をしている自分が、辛くて、惨めで、悲しいのに、平気そうな顔をして…
少し楽しそうにすら話しをする治…
(恵子には本心を見せないのね…)
(இдஇ; )

(ここも兵庫では笑顔はなくなってて、下の恵子の信じられない言葉「ほっとしとる」のあとの「え…?なんてぇ…?」のところで初めて(歪んだ)笑顔を見せてた)


恵子「私ね、今、ほっとしとるとよ。」

治「え?何てぇ…?(驚き、歪んだ笑顔)」

恵子「ほっとしてるの。」

治「……ほっとしてるとや…」(呆然として)

長い間一緒に暮らしてきて、もしかすると本当にお別れするとなったら出来ないんじゃないかと迷っていた(恐れていた)と。

でも、こうして会ってみたら、全然大丈夫だったので、ほっとしている。全て忘れきれると思うと。


(心の声)

戯曲を読んだ時、恵子はなんて酷いことを言うんだ…と思っていたけど(いや酷いことは言うてるんやけど)、この最後の別れの場面で恵子は治に『心からの本当の気持ち』をぶつけて欲しかったんじゃないかなと。

「まだ愛している」とまでは言ってくれなくても、自分にはお前が必要だから「行かないでくれ!」と必死で、すがって欲しかったんじゃないかなと。

でも治は、怒ることも、責めることもせず、勝手に諦めて、笑顔で送り出そうとしてくれて。

それが治にとって、精一杯の優しさだったとしても…。
(U>_<U)ウウウ…

恵子は、そんな治に『やっぱりね』『もう、いいわ』ってなったんかも…

そしてこの場面からも、治が日常的に暴力をふるっていた訳じゃないと分かる。

もし治がそんな人なら恵子も陣野も最後に会いに来たりしないよね、、、

きっと、結果的に(恵子のことを愛してしまって)こんな風になってしまったけれど、陣野にとって治は、会社で人間としてとても好きな先輩で。どうしても最後にちゃんと謝っておきたくて…それこそ殴られる覚悟で来たんじゃないかな…?

そして恵子のことも(前にも書いたけど)、まだ自分と治の間で迷いがあることを感じとっていて、無理やり連れて行くんじゃなくて、ちゃんと最後に決断して着いて来て欲しいと思ったんじゃないかな?
たとえそれで別れることになっても…。

そして。

恵子から直ぐには受け入れられないほどの信じられない酷い言葉を聞かされ、圭くんの「え…?…なんてぇ…?」の時の歪んだ笑顔とかすれた声が頭から離れない…
(´∩ω∩`)


頑張って笑顔で送り出そうとした恵子に酷いことを言われてショックを受ける治。

そこへ優子が帰ってくる。

治「……おかえり。」

優子「ただいま。」

恵子「こんにちは。」

優子「……こんにちは。」

電話が鳴る。

治は優子が電話に出ようとしないので、しょうがなく電話に出る為に玄関へと向かう。

優子は恵子に「私にだったら居ないって言ってね!」と言い残し2階へと足早に去って行ってしまった。

やはり電話は優子への電話で「優子ぉ、優子ぉ〜」と治は優子を呼ぶ。

恵子「おらんごと言うてって、(小声)」

治、もう一度電話に出て優子の不在を伝える。相手に疑われているのか、揉めている。

その隙に恵子は2階へと行き、明雄の位牌を仏壇に戻す。


(心の声)

明雄ちゃんの位牌を仏壇に戻す恵子を目の前で見ていた優子はどんな気持ちだったんだろう…

いつも母親に新しい男が出来ると、すぐにどこか違う場所に連れて行かれ、時には預けられ、置いていかれている優子。

そして今、目の前でおじちゃんと(亡くなった)明雄ちゃんを置いて、違う男と去って行こうとしいてる叔母さん。

(もしかすると…)

今となっては、治にとって自分(こそ)が(出て行った妻の恵子なんかより)一番近いしい存在だと思っている優子に、恵子は(古女房の)したり顔で治のアレやコレを心配するようなことを言い残して、最後に「優子ちゃんもお元気で」と言って部屋を出て行ったんかもな…

それで優子は悔しくて、腹が立って、もう自分の気持ちを抑えることが出来なくなって、去っていく恵子の後を追って行って、あんなことを言ったのかも…

(叔母さんの長い歴史より今の自分の熱い思いの強さの方が勝ってると。)


電話から戻って来ると、恵子の鞄だけ残されて、居間には誰も居ない。

居間に立つ治は西陽に照らされている。

治もまた(あの日の恵子のように)、窓の外に見える赤く錆びたクレーンを見ているのかもしれない…

知らない内に錆びついて、朽ちてしまっていた…あのクレーンを。


(心の声)
この場面での圭くん。右眉だけ上がってる表情。片方の眉だけが上がる心理状態は『疑い』の表情だそう。
あの日の恵子と同じように、あの赤いクレーンは西陽のせいではなく、あんなに錆びて朽ちてしまっていたのか…?と気付いたのかも…


2階から『おりん』の音。
見上げる治。

西陽に照らされ、ぼんやりと…虚ろげな眼差し…。

「お位牌…明雄の。上に置いて来たけん。」

2階から戻ってきた恵子は、持って帰っていた明雄の位牌を仏壇に置いてきたことを告げる。

内心、更にショックを受ける治。

恵子は自分と明雄を、本当に…本当に…全部、全てを忘れるつもりなのだと…。

治は力なく窓辺に正座して座る…

治「うん…。」

恵子「それじゃ…。」

行こうとした恵子に、ぼんやりとした治がポツリ…と呟く。

治「……明雄は…何で死んだとやったかな…」

恵子「え?」

治「明雄…どうして死んだとやろか…」

恵子「どうしてって…」

治「だいたい死んだとや?明雄は…」

恵子「ええ?」

治「死んだもなんも、初めっから明雄はおらんやったとじゃなかや?」

「本当におったとや…?子供の。おいたちに…。」

恵子「おったじゃなかねぇ…」

治「そうかなぁ…。おいはねぇ、何か、この頃、おらんかったじゃなかかなぁ?って思うとよ…。」

恵子「…おったよぉ…!(強く言い聞かせるように)」

治「……そうや。お前がそう言うとなら…おったとやろ…。(悲しく微笑んで)」

恵子「…………何でこげん時にそがんことば言うと!?」

「何で、そがん悲しかことば言うとね!?」

治「…………………。」

治「………おいはねぇ…わからんと、昔んことは。
なんもかんもわからんごとなったとよ…

そいけん、忘れようにも、忘るるもんのなかと…。
明雄のことも。お前のことも。
なんもかんも……思い出しきらんとよ…」

恵子「それじゃあ、私は一体何やったとね…」

治「……なんやったとやろか………」

と、治はぼんやり呟いた。


(心の声)

これからは治のことも子供のことも全て忘れて、新しい生活を始めるとやけに晴れ晴れしく言う恵子に、恵子との最後の言葉がショック過ぎて、、(わざとじゃないんだろうけど)恵子より更に酷い言葉を言ってしまう治…

(もう自分は、昔のことは何も思い出せなくなったから(存在していたかどうかもわからなくて)、忘れるも何もない…と。)

もうどっちも可哀想すぎて…
心が痛いよ……
(U>_<U)ピエン

(始まってすぐの東京では泣いてなかったけど、兵庫では圭くん、涙してた。)

…と書いていて、果たして本当にそうなのかと思ってしまった…。

『田中圭』の『治』は上記の通りと舞台を観ていて受け取ったんだけど…

『松田正隆』の『治』は、もしかすると…

不倫したあげく自分を捨てて、晴れ晴れと新天地へ向かう恵子。

結局、一回も謝ることなく…

それでも治は、そんな恵子を許して、なんとか笑顔で、送り出そうとしていたのに、最後に信じられないほど酷い言葉を言われて…

あれは治が最後にした恵子への復讐だったのでは…

一番恵子が言われたくない言葉を使った…
(´∩ω∩`)

どうなんでしょうか…松田さん。

優子が初めて小浦家にやって来た日、(この居間で)恵子は西陽のあたる錆びたクレーンを見ながら、自分の人生を見つめ返す。

このシーンは、あのシーンと『対』になっているんだね。


治の言葉に打ちひしがれながら立ち去る恵子のあとを階段から降りてきた優子が追いかける。

居間に戻って来た優子は、暮れかけて弱々しくなった西陽の中、一人残され小さく猫背で俯く治の背中を見つめる。

そんな小さな治の背中に向かって、優子は話し始める。

優子「最初に来た時は、ずーっと陽が暮れないんじゃないかと思ってた。」

治「……………。」

「でも、気付いたら、いつの間にか夜になってるんで、びっくりするの」

「それから、がっかりして、あーあ、今日も1日終わりかあ〜って思う。」

治「…………。」

気持ちを切り替えて、煙草を吸いながら

(電話の相手が)立山くんからだったのに切って悪かったと言う治。

その言葉に「またかかってくるわよ…」とそっけない優子。


(心の声)

ここに来た最初の頃は(いつもの母親の身勝手な都合で)、辺鄙な田舎街に連れて来られて、嫌で…嫌で…時間が長く感じて…
永遠に陽が暮れないんじゃないかと思っていた優子。

それが時が過ぎ、いつの間にか、『好きな人』が出来て、あっという間に1日が終わるように感じて、終わってしまうことが残念に思うようになってきて、、、

突然優子はこの言葉を(妻に捨てられ落胆して)丸くなった治の背中に向かって話し出す。

この後、治は(気持ちを切り替えて)、さっきの電話は立山くんからで、その電話を切ってしまって悪かったと優子に話す。
(あんなに引き離そうとしてたのに 笑)

治が思った優子の鬱々した気持ちを変えた『好きな人』は、

→立山くん。(まあ、当然に。)

でも恵子に捨てられ、打ちひしがれた背中に向かって言った優子の『好きな人』の話は、治のことなんじゃないかなと。

『37歳』と『16歳』という年齢差だけでなく、『叔父』と『姪』という許されざる恋。だから直接的な言葉で『好き』とは言えないけれど、、、

優子の立山へのそっけない態度に、うまくいっていないのか?と治が聞くと、上手く言ってるよ。と優子は答える。

立山は優子に夢中だし、『上手く』はいっている。表面状は、、、

そう思うと、包帯の時の「あの人な〜んにも分かってないの」も、そういう意味も含まれているのかもと。


優子、窓辺に立ち

「私ね…さっき…」

「おじちゃんのことは、あたしが面倒みますから、どうぞ、もう、ご心配なさらずにぃー!(叫)って、そこの石段の上から叫んでやったw」

治「ええ…?(予想外な言葉に驚いて)」

優子「聞こえた?」

治「……いや…」

優子「あら、それは残念だわ」(挑発的に微笑んで)

治「……なんでそげんことば言うたとね?」

優子「……。」

治「……本当に言うたとね?」(信じられないと言わんばかりに)

優子「言ったよ。(キッパリ)」

治「ふーん…」


(心の声)

ここの優子の『台詞』は『家族』というより『異性』として言ってる言葉に聞こえるんだよね。

自分(優子)の『好きな相手』が、これっぽっちも自分だとは思っていない治。


鈍い治には想いは一向に伝わらない。

優子「あたし、喉が渇いちゃった」

(治の鈍さにジリジリと太陽が焼きつける砂のように、優子の喉も心も渇いていく。)

呑気に明日ようやく給水車が来るらしいので、それまでの辛抱だと言う治。

優子は仰向けに寝転がり、両手、両足をピーンと伸ばし、背を反らせて

優子「もぉー辛抱できないよおー!!(叫)」

まるで駄々っ子のように気持ちを爆発させる優子。

治は優子の態度が理解出来ず、「何ぃ?なんね。」と聞き、優子は「辛抱は人を眠くするのよ、きっと」と答えた。

訳が分からず「……なんば、言いよっとか。」と聞き流す。

優子の思いは届かない、、、


(心の声)
どうして優子は、治が辛い目にあったすぐ後の今、ずーっと辛抱してきたことを我慢出来ずに言ったのか?

『喉が渇く』という慣用句について調べてみました。

ただ欲しいのではなく、なんとしてでも欲しい、または欲しくて欲しくてたまらない。「喉が渇く」という慣用句は、そんな感情を表すのに使います。

もしもあなたがどの程度の欲しさで「喉が渇く」を使えばいいのか分からないときは、砂漠で水が飲みたいのにどうにもならない状況を思い浮かべてみましょう。

もしくは、恋愛感情を抱くあの人に会いたい、人気者のあの人にどうしても会いたいという気持ちにも似ているはずです。

と書いてありました。


(優子はうつ伏せに寝返って)

優子「ねぇ、おじちゃん。どっか行こうか。」

治「どこにぃ?」

優子「どこでもいいわよ。どこなんて聞かないでよお。……どこでもいいの。ここじゃなければ…。もぉ、ここはいいわよ…」

治「…………」

(ズリズリと近寄って上目遣いで)

優子「私、おじちゃんと一緒なら、どこだって行くよ。」

治「……………。」


(心の声)

治と恵子とその子供の思い出が染み込んだこの家はすてて…

どこか新しい街に。私と一緒に。
ずっと一緒に。

凄くここの優子の台詞が引っ掛かった。
ただ『自分の居場所が欲しい』、『治と一緒に居たい』だけなら、『ここ』でいいと思うんだよね。(家具もあるし、家賃も引っ越しもいらないし。)

阿佐子も信頼する兄さんから『優子のことはここで面倒みとくから借金返せるように生活が落ち着くまで気にしないで頑張ってこい』って言われたら、喜んで優子のこと置いとくと思うんだよね。(今までだって、犬や猫の子みたいにアッチ預けコッチ預けしてきた訳だから。)

どうしても、『ここ』から(どこでもいいから一緒に)どこか違う場所に行かなければいけない(強い)理由って一体何だろう?と考えてみたけど、やっぱり嫉妬とかなんじゃないかな?シンプルに考えて。

「どこなんて聞かないで」も異性に対する言葉のような気がする。治の悲しい出来事があった場所から移動しようという治への同情心から出た言葉というより、もっと優子の衝動的な、感傷的な言葉のように聞こえる。

あと、気になった優子の仕草の共通項として、立山先輩の前でも、(この時の)治の前でも、異性を誘う仕草として優子は床に無駄に寝転んでる気がする。(そして上目遣いで見つめてる。※あの仕草を圭くんがしてると置き換えて想像したら、、、0(:3 )〜笑)


起き上がって優子は(ちゃぶ台の)治の前に座ると、明るい口調で今日あった立山の家での出来事を話し始めた。

立山の家にお呼ばれして、お母さんの手作りの料理を振る舞って貰ったこと。

それなのに、突然「用事がある」と言って帰って来てしまったこと。

それを聞いて「何で?」と治が聞きくと「何でかな…?急に嫌になっちゃって…w」と優子は笑った。

治「……………そうね」

「……よかたい。…しょんなかたい。」

否定するでも、肯定するでもなく。
ただ優しく受けとめてくれる。


(心の声)

優子の複雑な環境を知る治は、立山くんの普通の家庭の、普通の幸せなお母さんの手料理に、自分の境遇との違いが辛くなって、優子は帰ってきたんだろう…と思ったんだろうな。

それにしても、優子はなんで突然この話しを唐突に始めたの?あんなに明るいテンションで。自慢気に。

最初は全く自分の誘いに響かない治に嫉妬させたくてしたんじゃないかな?
でも結局お父さんみたいな顔して一緒に喜んでくれちゃって…なんだか馬鹿らしくなってホントのこと話し始めたんじゃないかな?


優子「よくない……」

治「……………?」

そしてそれから優子は、家の前に立っていた男の人と叔母さんのことについて話し始める。

そして、その男の人にハンカチを差し出されて、何のことか分からず無視して家に入ると、(玄関の鏡を見て)自分が泣いていることに気が付いたと。


(心の声)

『よくない』

なんで良くなかったんだろ…と考えた。

普通に考えたなら、自分の境遇を理解し、自分勝手なことをした自分を責めないで、受けとめてくれた治に感謝していい場面なのに。

『一緒にどっか行こう』と誘ったあとに、この話をした理由は…?

立山への『好き』な気持ちは、もうとっくに薄れていたけれど、自分を救ってくれるかもしれない立山と付き合いを続けていた優子。

(母親と同じように、男=生きる手段として)

治への許されざる想いは心の奥底へと深く深く沈めて。

初めこそ下心があった立山だったが、実家に連れて行き、親にも紹介しているところをみると、真剣に優子とのことを考えているらしい。

そんな立山の家で、(おそらくデレながら)親に紹介され、息子の彼女として手料理まで作って貰って持てなされて…

でも自分が本当に好きなのは、この人じゃないと、居たたまれなくなり…

本当の気持ちをおし殺して付き合っていた彼の家も、天体望遠鏡で優子が見たような裕福な家ではなく、(両親が共働きしてそうな)…ごくごく普通の中流家庭で…

全てが分かり、何もかもが嫌になって帰って来たんじゃないかなと。

自分が泣いていることに気が付かないほど、虚無感でいっぱいになりながら…

そしてそんな中、家に帰って来たら、家の前に立っている男の人と叔母さんが叔父さんを捨てて家を出て行ってしまったところだった。


優子は治の前で、(無防備に)横になり目をつむる…

治「ほら、寝るなら上に行って寝らんね」

優子「…………」

治「………おい、…………優子ぉ、」

優子「…………」


(心の声)

優子が今まで出会ってきた下心しかない男達と治は違った。
(立山くんなんか、違う方向見てる隙に体スリ寄せて来たのにね)


眠ってしまったかと思った優子が、横になったまま静かに話し出す。

「…目を覚ますと、いつも高速のトンネルの中で、オレンジ色の光が車の中を通り過ぎていく。…私はそれを見ている。」

上半身を起こし遠い瞳で喋り続ける。

「いつの間にか眠ってしまってて、助手席のお母さんと運転席に座っている男の人が何か喋ってる。」

優子は立ち上がって

「ボソボソボソボソ喋るから何喋ってるか分からない。男の人の顔も良くわからない。」

「この人は誰だっただろう…名前を思い出さないと悪いような気がして、胸がツーンと冷たくなる…。気持ち悪い。足の立たない場所で泳いだ時みたい。」

「ああ、なんて馬鹿なことをしたんだ。これじゃあ眠ったままの方がマシだった…。だけど、もう一度眠ろうにも眠れない。」

「トンネルはいつまでも続いている。一体、どこまでこのオレンジ色の光が続いていけば気がすむんだ。トンネルはきっともう、決して終わらないんだ。ずっと、ずっと続くんだ……」

もう立山と付き合っていくことは出来ない…

(こんなに頑張っても)自分の思いが届かない治も、きっと自分とずっと一緒には居てくれないだろう…

優子を絶望が襲う…

突然電話のベルが鳴り響く、、、
(永遠に続く絶望の非常ベルのように)

優子はその場に膝を抱えてしゃがみこみ、顔を膝に埋める…

母親の男が変わる度、何度も何度も名前が変わり、もう自分でも、自分が一体何者なのかわからない…

フラフラ、フラフラ…漂って、自分の居場所も無く、ずっと地に足がつかない…

自分の居場所を求めて…それでも見つけられない可哀想な優子の丸く小さくなった背中を見て、治はちゃぶ台を作業台に見立てて、自分の新しい中華料理屋での仕事の話しを始める。

ただ繰り返すだけのその仕事をする自分はまるで機械のようだと。

「造船所といっちょん変わらん」と泣き笑いで。

今までずっと自分の情けない部分を表に出さなかった治が、自分の不甲斐なさを優子にはさらけ出す。

恵子の前では、洗い物だけじゃなく、料理(のような事)もすると(明るく)言っていたのに…。

優子の心の底からの『助けて』という心の叫びに、応えてあげられない不甲斐なさ。

悲哀と惨めな自分自身をあざけ笑うような表情を滲ませながら、治は激しく机を叩きつける。

自分の絶望も永遠に続いていく。
それでも機械のように心を殺して淡々と生きていくしかないと。

その音に優子は顔を上げ、ビクッと体を震わせる…そして怖くて再び顔を膝に埋める。

バン…バン…バン…バン…

バン…バン…バン…バン…

何度も。何度も。

はっ…と優子は顔をあげる。

(杏奈ちゃん、泣いている。)

優子「……雨。……雨よ!」

治「……雨?」

優子は水を貯めるために、タライなどを持って外に駆け出す。

治も優子に続いてバケツを持って外へ。

雨が激しくなり、まだ外にいる優子を心配して声をかける。

雨にびしょ濡れになった優子が、並々と水の入ったタライを持って戻ってくる。

(次の演出上そんなに濡れてないけどw)

優子「飲んでいいわよ」とその雨水を治にすすめる。

治は(その昔多くの人が放射能を含んだ雨水を飲んで亡くなったことを知っているからか)、躊躇してなかなか飲もうとしない。

(ちょっとダチョウ倶楽部みたいで、客席から笑い)

痺れを切らした優子がごくごくと飲む。

「おいしー!!!」

美味しそうに飲む優子を見て、治もごくごくと飲む。

「美味しかー!!!」

2人は何度も何度も、交互に水を飲む。

それは、永遠に涌き出る泉のごとく二人の乾きを癒した。


(心の声)

東京で見た時は、お口んーってして、(本当は)水飲んでなくて(感染予防?)下にどぼどぼこぼしてた。

兵庫もこぼれてたけど、口元を見ると、ちゃんと飲んでて、変更されたみたい。

びしょ濡れの若い姪と交互に同じタライの水(しかも、もしかすると飲んだら死んでしまうかもしれない(と思っている)雨水(禁断の水での間接キス…))を飲み合うって、状況的にはなかなかのエロティズムだと思うんだけど…

優子のこの場面の衣裳が色っぽくないし(小学生みたいw)、栗山さんの演出はそうじゃないのかな?
それか実はそうなんだけど、気付く人だけ気付いたらいい…的な?

(追記)
配信で顔の表情などをハッキリ観て、改めてやっぱりそうなんじゃないかと思った。
(もちろん人それぞれでいいけど)
私の『夏の砂の上』はこういう事だと思ってます。

圭くんも他のキャストも、その時によって感情が違うって言うてたし、本当に観る回によって解釈が違うのかもね。

色んな解釈が出来るこの本(戯曲)、ほんと凄いね…
(((uдu*)シミジミ…


【第六幕 9月中旬  昼】


(9月中頃? 暑さがぶり返し再び蝉時雨)

阿佐子が居間中央で内輪を仰ぎながら立っている。

治は左手に包帯を巻き、右手でお盆に乗せて台所からお茶を持ってくる。

治は再就職先の中華料理屋で、誤って指を切断してしまっていた。

(仕事は今は休業中だけど、恐らくクビ)


(心の声)

戯曲を読んだ時、まあまあな衝撃で、ひぃー!となったのに、実際の舞台では、めちゃくちゃお客さんが笑う!
(私は笑ったことないけどw)

治がなんだかめっちゃ他人事っていうかw
なんか言い方が可愛いくてw

ミトンみたくなった包帯から親指だけ、ピコピコさせるんは、私もいつも可愛い〜と思うけどw

ここで阿佐子も扇風機のスイッチを入れるシーンがあって、優子そっくりに足でつけてて、親子(類似性)を感じさせる。


阿佐子は、博多のお店で失敗をし、今度は次の新天地、カナダへ優子を連れて、旅立つと言う。

(兄さんカナダ知ってる?で客席から笑い)

今度こそ成功する。もう本当に治には迷惑をかけないと言う阿佐子。

もう二度と会うこともないかもしれない、という阿佐子に、いつでも帰って来たらいいと言う治。


(心の声)

ここの台詞、若干、死の匂いがするけど、阿佐子は『一生のお願い』を何度もするタイプだと思うので、しぶとくこれからも生きていて欲しいな…
優子と共に。
そして、治の優しい笑顔にも癒される。


そして阿佐子が優子を呼び、2階から、来た時と同じ青いワンピースに麦わら帽子をかぶって、大きな荷物を持った優子が降りてくる。

阿佐子に促され、「……お世話になりました。」と挨拶する優子。

治は「……元気でね。」と言う。

治は二人を見送る。

居間に一人戻ってきた治は、ちゃぶ台の中央に座り、ぼんやりとしている。

すると、優子が1人で戻ってくる。

治「なんね?忘れ物?」

優子「うん。(微笑んで)」

優子はこれから行く場所はカナダなんかじゃないと治に伝える。

もっともっと遠い…寒いところだよと。
もっともっと遠い…地の果てみたいなとこだよと。

それを聞いた治は「………そうね。」と前を向いたまま、ただ悲しく微笑む。

「……はよ行かんね。」と優子をうながす。

優子も「…うん。」と。

優子は麦わら帽子を脱ぐと治の頭に被せると、治の元から去って行った。

治は右手でその麦わら帽子を取ると大事に抱えた。

背景の窓の光がゆっくりと細くなっていき…

ついには…闇。

部屋のどこからか白い閃光が差し込み、治の顔を激しく照らす。

ぴかーっと。白い、白い光。

それは煩わしいほど眩しい光。

耐えきれず、指を失い包帯が巻かれた左手で光をさえぎる。

最後まで包帯が白く輝いて…。

《幕》


(心の声)

戻ってきた優子に「…なんね、忘れ物?」と聞いた治に「…うん」と答える優子が切ない。

一度出て行ったのに諦めきれずに戻ってきた優子は、(もしかしたら治は、お母さんの言ってることを信じて、本当にいい所に行くと思って引き留めてくれないのかもしれないと)治に伝える。

お母さんが言うような良いところには行かないよ、むしろ怖くて、生きていれるかも分からないところだよと。

いちるの希望を込めて、、、

「…そうね。そんならそげんとこには行かんで良か。ずっとここにおれば良か。」と言って欲しくて…

治に「…はよ、行かんね」と言われて「…うん」と答える優子。

しょうがないと諦めた優子は、治と繋がっておくために『忘れ物』をわざとする。

自分の麦わら帽子を取ると治に被せる。

いつの日か、また会えるように…願いをこめて…

最後に優子は改めて、ぎゅっと治に被せた帽子を深く押し込める。

あれは行くなと言ってくれない治に「馬鹿」と言う気持ちからなのか。

それとも私のことを忘れないでね…と言う思いなのか、、、

そして、結局、治は優子の気持ちに気付いたんだろうか…

いつもイッテンポ遅れる治だから、恵子が去り、優子に私とどっか行こうと言われたあの日のことを『あれはどういう意味だったのか』とぼんやりと考えていて、指を誤って切ってしまったのかもしれない。

最初戯曲を読んだ時は、仕事も指も自信も失い治は、優子を引き留めてやれなかったのかなと思ってたけど…(勿論それもあるやろうけど…)

許されざる恋ゆえに、治は優子を傍に置いておいてやれなかったというのもあるのかもな…と。
(ビールのところでも治はモラルを守る人という表現もあったしね。)

あと、この全てを失った治の元に引き留めて欲しくて戻ってきた優子の気持ちを考えてもやっぱりかなり治のこと好きだったんじゃないかな?

普通に考えたら立山先輩に助けを求めた方が幸せになれそうじゃない?(自分の気持ち偽ってでも)

あとちょっと好きぐらいじゃ、今の状態(アラフォー職無し、貯蓄無し、多額の借金の保証人)の治と一緒に居たいってならんくない?

この戯曲の中では包帯が何度か登場する。

茂子が夫(陣野)と恵子の事を考えていて怪我した時の包帯。

優子が立山との情事中、治が割った恵子の鏡の破片で出来た腕の包帯。

そして、最後の治の左手の包帯。

いつも誰かの心の傷を隠しているかのような包帯。

最後の治の包帯は何重にもぐるぐると巻かれて、ほどかれることはない、、、
(あの時以外、誰にも本当の心の内は見せることはない)

最後の激しい閃光は、優子の心に秘めたひと夏の治への熱い想いなのかもしれない。

ぴかーっと光って、全てを焼き付くしてしまうような…  夏の暑い日差しのような…

16歳のキラキラと眩しくて、治には目を開けていられないほどの…
(最初の恵子の言葉と掛かっている?)

そして、優子の帽子を机の上に置くでも、床の上に置くでもなく、大事に抱えた治は優子の気持ちをちゃんと受け取ってた気がする。応えてはあげられなかったけどね。

******************

まあ、色々ご意見はあると思いますが…感想は人それぞれでいいと思っているので(笑)
(*´-`*)笑

(追記)
最後に一つだけ。
この結末は、決して初めからたどり着いた訳じゃなく、しばらく空白でした。(どれもしっくり来なくて)

色々な二人の関係性、最後の光の意味を考えて、考えて、考えて。ウロウロ考えも変わって(笑)

下手すると突拍子もなく感じる『会話』の1つ1つを丁寧に考えた結果、シンプルに結局そういう事なんじゃない?と。
そう考えると全ての言葉が違和感なく当てはまるな、と。

人間て、どんな辛い事があっても、新しい出会いで恋に落ち、思いもよらず(辛い毎日が)明るくなったりする。

またいつしか恋は愛に変わり、愛が終わることもある。

そうやって人間は、繰り返し、繰り返し、これからもどんな事があっても、生きていくんでしょってお話かなと。人間はそうやって生きて来たんでしょと。

舞台『夏の砂の上』が大好きです。
この戯曲を上演してくださったカンパニーの皆様に感謝😌💗


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