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ミュージカル「アナ雪」を観たけど、あまりハマらなかった話

先日、劇団四季のミュージカル「アナと雪の女王」を観劇しました。

映画が好きで、もちろん「2」も映画館で見ており、トニー賞のパフォーマンスに魅了され、その舞台がようやく日本上陸…!

と思ってたのですが、蓋を開けたら自分的にあまりハマらず

noteで観劇の感想を書くことはなかったのですが、絶賛も酷評もない感想、というのも面白いかも、と思い、敢えてここに残すことにしました。
※ゴリゴリにネタバレしてます

ミュージカル「アナと雪の女王」とは?

感想にいく前に、簡単に舞台版について解説します。

舞台は、2018年、ブロードウェイにて開幕(オリジナル版)。映画版に新曲を10曲以上追加。トニー賞では、作品賞・主演男優賞・助演男優賞にノミネートしました。

その後、北米ツアーを展開。演出はオリジナル版を改良し、一部曲の追加・削除もおこなっています。また「アナ雪2」の内容が少し加わりました。(映画見てなくても問題ないレベルで)

ツアーの評判を受け、2月からブロードウェイ版もアップデート。しかしコロナの影響により、3月に休止。その後、動員数などの観点から、完全クローズを決定しました。

日本版は、コロナ直前にブロードウェイで上演された、アップデート版がもとだそうです。演出に関する詳しい変遷が知りたい方は、下記のブログをどうぞ。変更点が詳しく書かれています。さすがオタク!
https://ikyosuke.hatenablog.com/entry/2021/07/01/080000

「アナ雪」の良かった点

今回良かったなと思った点は以下の3点

・違和感のない歌詞と映画での細かい描写の反映
・各人物の心理描写の深まり 特にアナとエルサ
・最新技術で魅せる風景の美しさ

違和感のない歌詞と映画での細かい描写の反映

ディズニーあるあるの「歌詞変わる問題」ですが、今回は映画版と同じく高橋知伽江さんが手掛けているため、映画でのニュアンスを活かしながら、舞台に馴染むようになっていました。
やっぱり耳馴染みがいいのが1番

また映画での細かい描写が、舞台でもおこなわれていたことに驚きました。

例えば、序盤の戴冠式当日の朝。映画では、ぼさぼさ頭のアナが出てきますが、あのぼさぼさ頭がそのまんま舞台にも出てきます。再限度高すぎ!
その後の「うまれてはじめて」でも、彫像や絵画相手に話しかけたり、シミュレーションしたりするのも同じ。

その他でも、映画を見た方は「あ!」てなるシーンがいろいろありますよ!

各人物の心理描写の深まり

舞台版の1番の特徴でしょう。より丁寧に描写することで、人物に奥行が出ました。

例えば冒頭。
アナとエルサの幼少期について、「アナ雪2」での情報も入れながら、映画より詳しく描かれています。

両親がエルサの能力について、どう考えていたか、それを受けてエルサはアナと家族のため、”何も感じないよう”、自分の気持ちを殺して生きることを決意したことが描かれています。

この経緯があったからこそ、エルサへの理解が深まり、「Let it go」のシーンに繋がるようになりました。映画だと、それまであまりエルサの心情は出てこなかったですからね。

アナやクリストフ、ハンスも同様です。

また俳優さんがそれらを丁寧に表現していたのも良かった。さすが四季。
初日キャストである三平アナは、表情も身体もくるくるとよく動きます。(アクロバティックなことも!)その様は、映画でのおてんば娘そのもの!時折見せる”がなり”が力強くて、アナの性格をよく表していると思います。

エルサは三井さん。凛とした佇まいと、力強い歌声が印象的。端々に見せるアナへの眼差しがすごく優しい。

山田さんのオラフは可愛いだけでなく、アナの奔放さとエルサの優しさが入っているのが感じられます。神永さんのクリストフは、包容力がある。

役者さんは総じて良かったです!

最新技術で魅せる風景の美しさ

今回氷の表現をするのに使われたのが、プロジェクションマッピングとLEDパネルです。

背景だけでなく、床やプロセニアム・アーチ(舞台の額縁部分)いっぱいまで使って、エルサの魔法が表現されます。オーケストラの音楽に合わせ、どんどん氷が発達していく様を本当に美しい!

今回は2階席だったので、床の映像も綺麗に見えました。個人的に好きだったのが、「うまれてはじめて」でカーテンが開かれた時、床にピンクのステンドグラスの光が差し込んだところ!本当に綺麗だった!

「アナ雪」のイマイチだったところ

イマイチだったところは2つ
・2幕のテンポの悪さ
・演劇的創造と最新技術のバランス

2幕のテンポの悪さ
1幕ラストを「Let it go」にすることで、客席が大盛り上がり(どよめきが上がった)。その興奮のまま、2幕にいくんですが、興奮がそれ以上高まりませんでした。

なぜならテンポがちょっと悪いから。

2幕は新曲がほとんど。そもそも映画の後半はほとんど曲がないので、映画のテンポ感と比べると、どうしてもゆっくりに感じてしまいます。

リプライズもないので、耳に残りにくいのもあるかも。

1曲1曲は素敵ですが、ゆっくりした曲が多め。これでもオリジナル版からバッサリ切ったようなのですが、イマイチ盛り上がりに欠けるんですよね…クライマックス含め。みんな大好き「Let it go」に期待しすぎた反動なのか。

2幕冒頭のオーケンの「ヒュッゲ」は、休憩から舞台の世界に戻す役割は分かるけど、ちょっと面食らった。見た目がすごくて、歌詞が入ってこない…あれだわ、「ライオンキング」の雌ライオンの涙と同じものを感じる…

個人的にクリストフがアナのもとに戻る場面をきちんと入れてほしかった。匂わすだけで終わるから、戻るのがちょっと唐突かな。

演劇的創造と最新技術のバランス

これはディズニー制作の舞台ならではの難しさかもしれない。

「ライオンキング」から「アラジン」に至るまで、ディズニーが制作した舞台は、得意とする特殊効果や豪華なセット・衣裳でながら映画の世界観をつくりながら、音楽・シーンの追加で、より登場人物たちに寄り添える舞台をつくってきました。

今回、プロジェクションマッピングやLEDライトを駆使しなければ、あのような氷の表現は無理だったでしょう。それらを使ってはダメというわけではない。むしろよくここまで、人間の演技と自然に溶けこんだと思う。(背景をリアルな映像にするのは、舞台では珍しくはないが、時としてその映像だけ舞台と調和してないことがある。)

このような技術で世界観を細かく描きこむと、観客は余白を自由に創造することができなくなってしまう。演劇の良さは、観客に創造の自由が与えられていること。例えばどんな場所にいるか、時間はいつなのか。最新技術は、そういった人物を取り巻く環境を全て視覚的に説明してしまうのだ。

でも、ディズニー作品はすべてアニメ映画。そしてほとんどの観客は、映画を見ている。そうすると、映画の世界を舞台でどう再現するのかに注目する。と、なると下手に余白を作らなくてもいい

しかし、アナ雪の演出家は、最新技術にすべて頼るのを嫌がったのではないかと私は思います。すべて頼ってしまったら、ショーと同じ。そう考えたのかもしれない。

それを感じたのが、クライマックス。全身真っ白な衣裳を着たアンサンブルが、目的の人を探すアナやエルサらを阻む。最終的にアンサンブルは横一列になり、凍り付いたアナと共に一体化。アンサンブルには氷のプロジェクションマッピングが投影される。アナが走った後が氷となり、徐々に凍り付くアナの身体と共に大きな氷を形成した。

たぶん、そういう描写だと思います。あとで溶ける際、舞台上で衣裳チェンジするために、アナを隠すものが必要だから、映画のようにアナ単体の氷ではなく、大きな氷を作る必要があった。

最新技術と身体表現が融合した瞬間

しかし、それまで映像でつくりあげた世界の中に人物がいたのに、生身の身体で世界を表現したことに、私は急に違和感を覚えました。人間を一瞬で白くすることも、それを取り除くことも物理的にできない、とはいえ。急に現実に引き戻されたように感じました。

環境(世界観)は技術で作り上げ、役者は人物の心情表現に徹する。その方がディズニーらしくもあったと思います。

「Let it go」でつくりあげた美しい氷の世界を、そのまま最後まで貫いてほしかった。

ディズニーだからこそ、余計にこのバランスは難しいだろうなと思います。みんな映画を知っており、それを期待していることに。


全体を通して、舞台はとてもクオリティが高いですし、子どもから大人まで楽しめますので、ご興味がある方はぜひ観に行ってください。席さえこだわらなければ、直前でも購入できるようです(感染対策はきっちりされてます!)

エルサの初日キャストである、岡村美南さんが観たいので、またどこかで観に行くと思いますが…次は1階席で観てみたいかも。




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