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音楽の振り返り2022(と雑感)#1〜ありがとうCory Wong〜

雑感

 本当に、音楽(とヨーヨー)の話ばかりしていた一年だった気がする。「アイデンティティは自覚すると、それに沿った行動をとるようになってしまう」というが、まさにそうで「音楽好きなんすよ~」と人に言いまくったおかげで、本当に音楽好きとして振る舞うようになった。

 その結果、ますます音楽好きを「拗らせている」。音楽を聴けば聴くほど、悲しいかな、周りと音楽の会話が成立するほうが珍しくなってしまった。もともと、会話が難しい人間なんじゃないか、というツッコミはいったんおいておいて、とりあえず安心してほしい。

 米津玄師『KICK BACK』とかOfficial髭男dism『ミックスナッツ』とかは抑えてるから、怖がらずに会話してほしい。すぐにSnarky Puppy『Empire Central』の話を始めるかもしれないけど。(これに関しては別記事書いてるんで、ぜひ。)

 あと、意外に思われるかもしれないが、父親がYOASOBIとかずっと真夜中でいいのにとかVaundyを聴くという若者みたいなことをしているので、ヒットチューンについてもある程度は聴いているはず。単純に私の趣味にハマる曲が多くないだけであって、「ヒットチューン聴かない」みたいなタイプではないし、FM802とか聴いてて結構好きな曲に出会うこと多いし。USGに関してはマジでファンだし。

 また、『SPY×FAMILY』をがっつり家族で見ているので『SOUVENIR』とかはガンガン聴いています。普通に曲として超好みです。冒頭から一貫して鳴るギターのリフと、サビのドラムが好き。

 ともかく、今日ここに貼ってる曲に関しては、ちゃんと皮肉じゃなくていい曲だと思ってるので、ぜひ怖がらないで話をしてほしい。

(でもTani Yuukiは好みに合いませんでした。すみません。見た目がむかつくってのは別の話なので今は黙っておきます。(だから貼ってない))

(Vaundy本人ではないけど、Vaundy作品なら『くびったけ』が好き。ほかのおすすめ教えてください。)

 学部やゼミがどうしてもマスコミ(どちらかというと報道)に寄っていることで、なんとなく硬い文章や題材に触れることが圧倒的に多い。しかし、就活云々でとりあえず将来の進路を決めろ、と言われる中で、どう考えてもやりたいことが報道だけではないことに気が付く。今年のそういう行動を振り返ると、一月には阪神淡路大震災の追悼式典に行ってたり、三月には東日本大震災10年で仙台に行ってみたりしていて、このまま新聞社受けるのか?という感じだったが今や、もうそんな感じではない。まあ、現時点での話だが。

 三つ子の魂百までとは言うけれど、マジで2歳半のときに連れて行かれたヤマハ音楽教室「赤りんごコース」、そして内田先生(恩師)の貸してくれた『FIfth Dimension』の効力は未だに強い。諸々の就活や、現在の音楽の趣味の方向性はここで決まっている。

 (DIMENSIONサブスク解禁も地味に今年のトピックである。個人的には『26』が好きです。)

 今日は2022年10月31日。まだ年を締めくくるには早すぎるが、とりあえず書き出す。特に、こういう音楽系の記事の選曲は絶対に難航するので早めに取り掛からねばならない。こんなに早く取り掛かってるのは去年に比べてリーチした音楽の量が圧倒的に増えているから。できる限り、今年聴いて印象深かった音楽については今年の内に…それが私の生きた証になりますから…。

 しかし、厄介なことに、年初めに何を聴いていたかなんて全く覚えていない。というか、一か月前でも怪しい。幸いInstagramストーリーにバカスカ投稿していたおかげで記録自体は残っていそう。フォローしてくださるお世話になっている大学の先生に「あんたのストーリーはうるさくて読む気にならん」と言われても懲りずに投稿し続けたことが活きそうである。ゆっくり振り返っていきます。

Jacob Collierとの出会い

 今年最も聴いたのは誰か?と言われると、おそらくCory WongとSnarky Puppyだろう。もちろん、他のアーティストが中心になる瞬間もあったが、年間通して聴いているという意味ではこの二組。

 少なくとも音楽に関心のある人ならば、超有名、ド定番ともいえるこの二組をまじめに聴き始めたのは今年である。昨年までは圧倒的に日本のインスト勢が優勢だった。もちろん、日本のアーティストも聴いていたが、今年は海外アーティストの割合がかなり増えたと感じる。

 その、圧倒的に日本勢優勢の状況に変化をもたらしたのは、Jacob Collier『Woke Up Today』。私のInstagramを参照すると、これを聴いたのは1月3日のことらしい。

 このセクションを書いていて思い出したが、ちょうど、昨年の年末に『BlackBird』のリアルタイムのプリズマイザーのパフォーマンスをみて彼に出会った。そして、実際に彼の作品を聴き、技術に裏打ちされた独創性、複雑なコーラスワークに大いに衝撃を受けたのを覚えている。コーラスワークという話では『Flintstones』とかは、特に圧巻。もはや狂気の域である。

 その日中にShure PGA58を注文している様子を見ると、かなり感化されていたようである。

 だが、実はJacob Collierに関しては、それ以上の深追いはあまりしていないので、これ以上特に書けることはない。とりあえず、現時点でのJacob Collierのお気に入りを挙げておく。

 ハマらなかった、というと嘘になるが、実はそれほど聴いてもいない。しかし、年始にこれを聴いたことはこの一年のリスニングの方向性に影響を与えたと言える。(ここからそれこそCory WongやLouis Coleだのに繋がっていく。)

 今思えば、複雑な楽曲に確かに衝撃は受けたものの、飽きも早かったのかもしれない。少なくとも私は。まあ、来日したらちょっと見てみたい気もするけれど。改めて最新作も少し聴いたけどあまりハマりそうではなかった。

今年一番聴いたCory Wongという男

  打って変わって、今年最も聴いたと言っても過言ではないCory Wong。聴くものに困ったらとりあえず聴いていた。この「聴くものに困ったらとりあえず聴いていた」というのがかなり重要で、非常にニュートラルに、気負わずに聴ける楽曲が多かった。「聴き流せるけどおもしろい」という絶妙なライン。

 というのも、私は昨年までは特にいわゆるフュージョンの中でも特にマスロックのような複雑なビート感の楽曲ばかり聴いていた。昨年の記事に挙げたOwaneもそうなのだが、こうした楽曲は楽しい反面、聴き流すのには全く向かない。ものすごく頭を使って聴くことになる。結果、「おっ」となっても疲れることが多い。

 Cory Wongとの出会いがどこなのか……ということを探りがてら、昨年の記事を読み返すと、記事の終盤にThe Fearless FlyersやVulfpeckに関する言及があるため、昨年末の時点ですでに彼のことはややハマりつつあったのだろう。

 そうは言っても、昨年の段階ではまだ、Cory Wong本人に関してはまだまだリサーチが不足。Dirty Loopsとのコラボアルバム『Turbo』と『Elevertor Music for an Elevated Mood』やいくつかのソロ作品の一部しか聴いていなかった。なので、本格的に聴き始めたのは今年からといえるだろう。彼の作品は、本当に枚数が多いのだが、飽きない。そもそも耳に負荷がかかるようなトーンは出てこないし、先ほどのOwane氏のようにフュージョン的に変化するビートに翻弄されることもなく、ゆったりと聴ける。

 普通は同じアーティストのアルバムを連続して聴くと飽きるタイプなのだが、飽きるどころかずっと聴きたいと思える。彼の特徴ともいえる「リード・リズム」という奏法にどっぷりはまってしまった。

 Cory Wongの詳細な経歴などは上記のnote記事が詳しいので、今回は割愛させていただく。

Cory Wongとコラボレーション

 聴けば聴くほど、去年の段階ではまだその魅力の数割も理解できてなかったのだなと感じる。もちろん、彼の音楽を聴きまくった結果、私の音楽の好みが変わった可能性は否めないが、それにしてもいつも本当に「肌に合う」。軽快なカッティングの中に潜むキャッチーなメロディー。
 
 月並みな言葉になってしまうが、Cory Wongの魅力を一言で表すならば「彩り」と言えるだろう。これは、もちろん本人のギタープレイ、トーンの多彩さ、メロディラインの親しみやすさということもあるが、それは、コラボレーションでの振る舞いという側面でも同じことが言える。

 上記の『Treehouse』ではPhoebe Katisの甘くも芯のあるボーカルに寄り添うCoryのギター。その一方で『Cory and the Wongnotes』では、ブラスセクションに負けないパワフルかつ軽快なサウンドをみせている。もちろん、前にCoryが出ていくこともあるが、それよりもまず全体のアンサンブル感、バランス感を非常に重要視しているのがわかる。

Cory Wongとマンドリン

 ソロ名義で出されたコラボレーション楽曲で特に印象的だったのは、『Bluebird』や最新作『Power Station』収録曲『Over The Mountain』を始めとした、Sierra HullやChris Thlieといったマンドリンプレイヤーをフィーチャーした楽曲である。

 マンドリンはそれこそカッティングをしつつ、メロディーも奏でる、まさに「リード・リズム」的な奏法をされることが多い楽器。エレキギターとマンドリンと聞くと、意外な組み合わせに感じるかもしれないが、ブルーグラスにおけるバンジョーがエレキギターに置き換わったと考えれば、組み合わせとして間違いないのは当然かもしれない。本当にバランスとして絶妙である。

 そもそも、マンドリンとはとても激しい楽器で、Sierra Hullのこの動画の7:35〜を見てもらえば分かる通り、

そのイメージとは裏腹に、むしろ非常に熱量たっぷりにかき鳴らされることも多い。

 「激しいロックがメタルなら、激しいアコースティックはブルーグラスだ」という発言を以前別のブログで読んだこともあるが、まさに言い得て妙。

 Chris Thileについても書いておこう。私にとってのChris Thileといえば、Yo-Yo Ma、Stuart Duncan、Edgar Meyerとの楽曲『Attaboy』である。これはCoryにハマる以前から知っていた曲だが、『Bluebird』のマンドリンが彼だと知ったときは非常に興奮した。

 この曲も、曲をリードしているのはChrisのマンドリンと言えるだろう。まるで弦の張り具合が伝わってくるかのような、ソリッドかつ軽快な歯切れのよいマンドリンがアンサンブルを煽り、結果的に楽曲のテンションが上がっていく。特に、終盤4/4から6/8に戻るところにむけての煽りはまさにマンドリンのもつ「熱」の一面を色濃く出していると言えるだろう。

 もしSierraやChrisに馴染みがないならば、ぜひ森山直太朗『すぐそこにNEW DAYS』を聴いてほしい。この楽曲は、ややジャズ的な文脈も感じるが、ブルーグラスとJ-popのブレンドの割合が非常に絶妙かつ、マンドリンの持つ「熱」も十分に味わっていただけると思う。マンドリンは本当に煽り上手。

 ともかく、マンドリンとCoryのギターの相性の良さはある種の発明と言える。引き続き見たいコラボレーションの一つである。

Vulfpeck関連

 加えて、今年はVulfpeck方面の動きも非常に多かった。年始にVulf名義で発売された『Wong‘s Cafe』からのVulfmon『Here We Go Jack』。すべての楽曲にCoryが絡んでいる訳では無いが、特にCory Wong名義ですでに発売されていた『Airplane Mode』が『Let's Go!(Instrumental)』、そして『Let's Go! Let's Go!』という形でリアレンジされたのがかなり印象深かった。

 素朴でクリーンな味わいのギターの可愛らしさが光る『Airplane Mode』がひずみまくったギターのリフから始まるパワフルな楽曲に変貌し、最終的には「Hoooo!!」というコミカルかつアグレッシブなボーカルまで乗ってしまった。この一連の変化を比較しながら聴くとなお楽しめる。『Wong's Cafe』収録曲なら『You Got to Be You(Instrumental)』もそのうちボーカルありのテイクが公開されてほしいのだが……録っててほしい…。

と、いろいろ書きながら改めてCory Wongを聴き直していて更に好きになる。来日したら見に行きたい……。

余談

 いつからか『You Got to Be You』を聴くと頭に乃木坂46『白い雲に乗って』が鳴るようになった。というかよくよく聴くとなんとなく似ている。

 それくらい、Coryのメロディラインは親しみやすいってこと……(?)

次回予告

 冗談はさておき、私がCory Wongから改めて感じ取ったのは「演奏」という行為の素晴らしさや面白さ。

 こうして書くと、ものすごい単純な話に聴こえるが、やはり最近は音をPC上で作り込むような楽曲がどうしても多い。その結果意外とこうしたシンプルに演奏を堪能できる楽曲は相対的に減ってきているのではないか?と感じている。

 そこで、改めてプレイヤー同士のコミュニケーション、そして、その過程で楽曲が変化していく様子の面白さに改めてハマってしまった。そして、まだまだ世界中には面白いプレイヤーがいることを今後私は知っていくことになる。

 特に具体的なテーマがあったわけではないが、これ以降、私はますます「プレイヤー同士のコミュニケーション」というものに没頭していく。

 その筆頭がSnarky Puppyであり、Jacob Mann Big Bandであり…という話は次回。


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