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孤独や不安を拭うのは、『梅の香り』と人と過ごす『日々の時間』


天気の良い日が続いて、散歩をすると必ず梅の香りがする。いつも歩く河川沿いの桜の蕾が緑色に膨らみ始めていた。冬が去り、春がを迎え入れる準備が着実に進んでいるのだろう。

4年前も地元の河川敷には桜と梅の花が咲き、外に出るとその匂いが充満していた。京都に来てから4年。あの頃の自分は不安で一杯で、知り合いが一人も居ないような土地でバイトをしたり、一人暮らしが出来るのか、一人で生きていけるのだろうかと悩んでいた。

大学生になってからは、それこそ毎日授業に出たり、バイトをしたり、生活費を切り詰めて格安スーパーに自転車で往復1時間半ぐらい買い物したりと今思えば体力があってエネルギーに溢れていた。金に対する不安は沢山あったけど、毎日やる事があったり、友人と遊んだりしていたら今まで抱えていた不安は考えなくなった。金欠には変わらなかったけど。

昨日、部屋を引き払って卒業式まで友人の部屋で過ごす事になった。4年住んだ部屋を引き払い、重いスーツケースを運んで通学で何度も乗った電車で友人の賃貸がある最寄り駅を目指す。窓の外から枝先の蕾がピンク色に色づき、少し開花している桜が見えた。外はもう20度ぐらいあって、シャツが汗ばんだ後に強い風が吹くと涼しかった。

今の僕にはこういう部屋が無くなった時や困った時に頼れる友人が居て、自分のやりたい事や感情を吐き出したら聞いてくれる人たちに恵まれている。今までの住んだ居場所を失っても誰かが僕の居場所になってくれる。

あの時、一人で不安で一杯だった『梅の香り』が今ではその匂いを誰かと共有する相手が居て、もう春やな。なんて言ったりしながら散歩している。この先自分がどうなるか分からない。友人達は自分が正解だと思う道を其々歩き始めている。同じ場所を過ごし、同じ『日々の時間』の中を生きた僕らは桜が満開になる前に散っていく。僕もやりたい事の為に生きると決めた。


きっとまた孤独や不安になる時が来ると思う。それでも、どんな時も、会ってきた人達との日々や時間をこの梅の香りがする季節になったら何処に居ても思い出すだろう。その時までこの不安や孤独が香る匂いを覚えていたい。


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