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マサイ族の"なやみ"に潜入してみた

タンザニア在住のほりともです。

アフリカにきてびっくりしたことの1つ。それは、村に住んでいると思っていたマサイ族たちが、都会の町に溶け込んでいること。

日本では知られていない、そんなマサイ族の「なやみ」について聞いてみました。

マサイ族とは?

日本でも、驚異的なジャンプ力や視力がいいことなどで知られているマサイ族。

マサイ族は、ケニア南部からタンザニア北部に暮らす少数民族。あまり知られていませんが、マサイ族はケニアだけではなく、実はここタンザニアにも多く住んでいるんです。

マサイ族は身長がとても高いことでも有名。はっきりしたデータはないのですが、大人の男性の身長は190㎝も珍しくないのです。

ちなみに、以前はライオンを倒したものが一人前の男と認められたそう。結婚する場合は、奥さんになる相手の家族にライオンを倒したことを証明する必要がありました。現在は野生のライオンの数が減り、ライオン狩り は禁止されています。

どうして、マサイが都会にいるの?

もともと水や草を求め移動する遊牧民でしたが政府の進める定住化計画などにより、家を持ち、家畜を飼いながら、観光業やガイドで生計を立てる人も多くなってきました。

こういうマサイ族の村は、タンザニアの北部にある、アフリカで一番高い山、キリマンジャロのふもとに多く存在します。しかし、今はこういった村から離れて、都市部で暮らすマサイ族が増えています。

彼らが都市部で生活をしているのは、現金収入を得るため、いわゆる出稼ぎのためです。ただ、完全に村を離れて一家で移住してしまうことはないようです。都市で働く人たちも、定期的に家族のいる村に帰っています。

マサイ族は都会でどんな仕事をしているの?

その優れた身体能力、勤勉さから、ほとんどのマサイ族は警備員として働いています。民家やレストラン、スーパー、意外なところでは幼稚園でもマサイ族が警備しています。そのため、町でみるマサイ族はほとんど男性で、女性を見かけることは、あまりありません。

町にいるマサイ族は目立つので、一目でわかります。ここダルエスサラームでみるマサイ族は、民族衣装の赤い布を体に巻いて、腰にはナイフ、
手には長いつえを持ち、首にはビーズのネックレスをつけています。
そして携帯電話も必須アイテムです。

わたしの息子が通う幼稚園の警備をしているマサイ族のお兄さんは、ベースボールキャップをかぶってかっこよくキメています。毎朝、子供たちに「マンボ(こんにちわ)!」と優しく声をかけてくれます。

なぜ、マサイが警備の仕事をするのか?

マサイは、その文化を尊重して、権利としてナイフの所持を認められています。ただ、実際にナイフやつえを攻撃のために使うということはほとんどなく「身を守るため」というのが主な目的のようです。 

ナイフを使うことはなくても、マサイ族がいるだけで、犯罪の抑止力になっているということのようです。

都会に住むマサイ族の1日は?

勤勉で有名なマサイ族ですが、昼間の仕事を終えた後も、2つ目、3つ目の仕事をするマサイ族が多いんです。

警備の仕事を終えて、夕方からは薬草を売ったり、靴を売ったり、タンザニア人女性に人気の「マサイ流三つ編み」を編む仕事をするマサイ族もいます。

寝る直前まで仕事をしているマサイ族が多く、彼らの勤勉さがよくわかります。

食事はどうしている?

マサイの主食は牛乳とウシ、ヤギ、羊の肉。よく生肉を食べるといわれるマサイ族ですが、村でも生で食べるのは解体した直後の新鮮な羊の腎臓だけだそうです。そのため、町では肉は普段は焼いて食べています。

さらに、マサイ族は、牛乳も1日に数リットルと大量に飲みますが、村ではしぼりたての牛乳を飲んでいます。

町で販売されているミルクについてマサイ族に聞いたところ、「値段が高い割に、村で飲むミルクのようにおいしくない!」とぼやいていました。都市での食生活には、かなり不満があるようです。

都市での生活で、体は衰えたりしないのだろうか?

「いくらあのマサイ族でも、都会の生活を続けていたら、視力やジャンプ力が衰えないのか?」と、私は気になりました。そういえば、眼鏡を掛けているマサイ族なんて、こちらで見たことがないです。

聞いてみると、都市で暮らしていても視力はよくて、マサイジャンプもできると自信たっぷり。都会にいても、定期的にランニングをして体を鍛えているとのこと。

いつでも「強いマサイ」として都会で対応できるように、村にいる時よりもお酒を飲まないようにしているという、真面目なマサイ族が多いのです。

病院には行かない

都市部に住んでも伝統的な暮らしを守っているマサイ族。
他にも下着をつけないとか、添加物のはいった食品はできるだけ食べないようにと、いろいろと気を付けています。

そして、マサイ族は病院には行かないのです。木や植物から作る自家製の薬を村から持ってきているので、それで対応するのです。ちなみにマラリアだけは、さすがに病院に行くそうです。

マサイの悩み3つとは

そんなマサイ族に、ずっと聞きたかった悩みを聞いてみました。

1つ目の悩みは、マサイ族の将来への心配。

貧しさから逃れるため、民族が違う人との結婚を望む若者が増えているそうです。こういった経済的な理由で結婚するマサイ族が増えると、マサイの伝統やアイデンティティが弱まってしまうのではないか、マサイ族として生きていくための強い力を失ってしまうのではないか、と心配しています。

2つ目は、気候変動により雨が降らなくなっていること。遊牧をするマサイ族たちは緑を求めて場所を移動しますが、最近では、雨が降らなくて6か月も移動しなければならない場合も出てきているのです。

3つ目は、居住区の問題。世界遺産でもある「ンゴロンゴロ保護区」は、マサイ族が長い間、放牧をしてきた土地。ここでは、人口と家畜の増加を理由に政府から立ち退きを迫られる事態が起こっています。

政府は別の場所に電気や水道といったインフラを完備した居住地を用意した、という報道もあります。しかし、マサイ族にとって、先祖伝来の土地を離れることは、伝統的なライフスタイルをおびやかされることと同じ。マサイ族の未来がどうなるのか、その大切な岐路に立っているかもしれません。

まとめ

いっけん、都会の生活を楽しんでいるように見えるマサイ族たち。でも、彼らがマサイ族の将来を心配しているという意外な本音がわかりました。

ただ、彼らと話しているとマサイ族であることへの自信と誇りを強く感じます。ですから、現代の生活にうまく適応しながらも、マサイ文化は価値観を変えないで、力強く残り続けるのではないかと感じます。


筆者は今現在、アフリカに住んでランニングをしています。海外生活に少しでも興味をもったあなたには、ぜひ私のツイッターをフォローしてほしいです。日本にいながらも生活のヒントになる海外生活ならではのへーというエピソードや気づきなどを毎日つぶやいています。


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