見出し画像

アジミールチキンカレーと、新しい水平線。


わたしが勤めている、
チリトリ自由食堂という、スパイスカレー屋。
三月で卒業になる。

ちょっとしたエピソードをここにのこしておきたくて
いま、明日が卒業の最終日という日にこれを書いている。

色々な体験や学びをいただき、本当に感謝している。

チリトリ自由食堂がオープンしてまもなく、古事記’coziki`
という雑誌の企画で、カレー研究家(本人はそう名乗っているつもりがないらしいw)
の水野仁輔氏がやってきた。


水野さんと漁志さん'coziki'イベントにて


水野さんが来た時、わたしはスパイスカレーというジャンルの料理に出会ったのが、壱岐に来てからで、本当に試行錯誤しながらつくっていた。
このちいさな町の、このお店を混ざり合う食堂としてどうしても盛り上げたいという想いと自分の拙さを噛み締めてゴニョゴニョしていた。

とくに、アジミールカレー、はオーナーのりょうじさんからレシピを引き継いだメニューで、
アジミールとは、壱岐の名産である、鯵とカシミールをかけたカレー。(駄洒落w)

美味しいの着地点が、イタリアンとフレンチの経験しかないわたしには、ちんぷんかんぷんで、
いつもその構成の宇宙に悩まされてきた。
(そして離島の、千里十里の名前を引き継いだスパイスカレー屋にも、勝手に悩み続けた。)


水野さんにアジミールカレー
をアジミールしてもらった(雑誌COZIki vol 1 をぜひ読んでみてください)

その当時、水野さんは『カレースター』と名乗っていた。
そのカジュアルで、ポップな印象とはウラハラに、会った時の印象はそこの知れない人の奥深さだった。
そしてスパイスカレーというジャンルをポップに、カルチャーミックスしてムーヴメントにまでしたこの得体の知れない(その時はまだ)水平線で、どんな風景を見ながら歩いているのか、、どうなっているのだ、、この人は、、、、,いったい、、


そして聞いてみた、
水野さん、なんなんですかとw。
質問のしかたは忘れたけれど。
ただ水野さんの存在自体が面白く、どんな視点で歩まれているのか知りたかったのである。



そのとき返ってきたのが、
『難しいことはわかりやすく
わかりやすいことは面白く、面白いことは深く』
だった。



ブルーハーツのマーシーか、劇作家の井上ひさしさんからだったか忘れたけれど、この言葉を、ずっと身近に置いていた。
という話が聞けた。


ものすごく納得して、普遍的に広く文化を耕している人は、これ身についているんじゃあないかなぁ。あたりまえをとびこえて行ける人は。
と、思った。


その、体験がこのわからないスパイスカレーの世界を、またスパイスの世界を冒険してみようという好奇心を底で支えてくれた。食堂をスパイスカレー屋として盛り上げたいという想いも。


そして、改めて、スパイスの面白さ、今の自分には、うすーく遠くに見える水平線の、水野さんや、スパイスカレーカルチャーを面白がっているみんなのいるところまでてくてく歩いてみようと決めたのだった。



その日、最後に握手してもらった時の、手の説得力が忘れられない。
間違いなく働き者の手で、いつも料理を、スパイスカレーをつくってますが何か?
といった感じだ。
よく磨かれた手は素晴らしい。


そして、卒業を控えた三日前に、水野さんにお会いすることが出来た。
おかげさまでカレーをつくれるようになりました。ありがとうございました
と、告げることができた。


4年前あそこまで、、自分にだけ、うすーくみえた水平線まで歩いてみようと歩き始めた自分。
その水平線は、水野さんとの出会いがくれたものだった。
今、その水平線には確かにたどりつき、たくさんの人に、カレーを食べてもらい、またつくってね。とありがたい声をもらえるようにもなった。
そして、料理の表現の自由さと、他国の世界の食文化への理解と興味も高まった。



振り返ると、アジミールカレーの味。はじめて水野さんにカレーを食べてもらったときの、自分のくやしさ。つたなさ。おさなさ。
それを探究すること、繰り返し味見することに、一番、鍛えられ、その水平線に辿り着くための筋力になっていた。


その後、アジミールチキンカレーはdancyuの松尾貴史のカレードスコープにも載せてもらい、
ホッとしている。
(松尾さんありがとうございます。松尾さんとは気がつかず副菜の茄子がご飯の坂をコロコロ転がったの覚えています。綺麗な味わいと書いてくださりありがとうございます)

あそこまで歩いてみよう。
そう思ったあの日の自分との約束を守れてよかった。

そして今、また、自分だけの水平線、
あそこまで歩いてみたいなあ。を見つめている。

たどりつけるかは置いといて、一歩踏み出すときの、そこまで歩いてみようと決めた自分にgood luck
。好奇心は誰よりも自由だ。


チリトリ自由食堂にサインする水野さん


水野さんに食に関するゆる〜い雑談ポッドキャストやろうと思っているんです。
と相談してみたら、是非よんでください!とおっしゃっていただけた。

オーナーの大川漁志サラシニストとくだらない駄洒落でひたすら話しをするかと思えば、写真家ジョゼフクーデルカの話もする、いろんな水野さん。(そういえば大川漁志サラシニストも駄洒落からマークロスコまで。、)

ポッドキャストで雑談が実現するときがきたら、たぶん、また、『水野さん、なんなんですか?』
的なことを聞いてしまいそうです。

ひとはおもしろい、はなしてみたいひとがたくさんできた。これからも。

幸運を、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?