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「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」冒頭の中国語のセリフについて中国のジェンダーの話をしつつ解説する。

私は、filmarksさん主催の先行試写会で「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」を拝見しました。
もうね、号泣して爆笑して号泣して爆笑してを繰り返したら終わったわw
すっごい映画だこれは!と思ってる。
複雑そうに見えて、メッセージはシンプルだし、今の社会に必要なことはこれだよ!これ!って私は思いましてね。
私は中国語がちょこっとわかるので、冒頭のセリフで、「あ!その話、中国人留学生の子と話したわ!」っていうセリフがあったので、中国のメインランドにおけるジェンダーのお話と絡めて、お話するね。予告編には出てこないセリフなので、一応ネタバレタグつけときました!

一応、映画見た人向けに書くので、見てない人はここから先は自己責任でお願いしますね。映画そのもののテーマにもちょっと関わってくるので!


-------------------ここから本題にはいりますよ~------------------------------

中国におけるジェンダー、LGBTQについて

当たり前ですけど、中国人にもゲイやレズビアン、トランスジェンダーの方はいらっしゃいます。
が、中国政府としては「男女が結婚して子供を産むこと」をよしとしておりまして、同性愛は1997年まで「わいせつ」として犯罪とされていたのです。

では、今はどうなのか?
同性愛は犯罪ではなくなりましたが、「自分の子どもや孫に対して、異性と結婚して子供を産むことが普通であり、家族が増えることはよいこと」みたいに考えている人は多くて、息子に対しては「早く彼女を作って、孫の顔を見せてくれ」と言います。中国では本人同士の恋愛以外にも親が自分の子どものお見合いをセッティングしたりもするので、本人の性自認や本人がどんな相手を好きになるかという点が無視されてしまっていることもあります。
中には、レズビアンとゲイで偽装結婚をして親を安心させようという話もでるくらい、家族にとって子供や孫の結婚というのは大切なことなんですね。

この点においては、日本よりもかなり厳しいところがあります。特に近年は「女性っぽいフェミニンな男性」が禁止です。また女性が過度にセクシーなことも禁止です。なんていえばいいのかわからないけど、「健全な男女による恋愛、交際、結婚」みたいのを国が推し進めている感じかな。

ご存じな方も多いとは思うのですがジャンルとして「中華BL」ってありますよね?これが中国では犯罪とされ、BL小説を書いていた方は有罪判決を受けました。日本ではBL小説はたくさんありますが、それが突然「わいせつである!」と言われて作者が逮捕されるようなことはたぶんないです。

中国政府は女性っぽい男性タレントも禁止となっています。
あと、中国にも韓国のK-POPアイドルや日本のジャニーズのような、イケメンアイドルとか、グループはあります。
彼らは、K-POP男性アイドルがするようなメイクをしてたりしたんですけど、こういった「男性が化粧をする」といった行為も禁止に・・・
つまりどういうことかというと、「男は男らしく」ってことらしいです。

もちろんこれは女性にも言えることです。
ライブストリーミングでの物の販売というのが中国ではかなり人気でして、いろんな配信者が様々なものをライブストリーミングで販売します。
例えば下着であれば女性配信者が下着を着用して、その着用の感想とか述べたりするわけですが、「女性配信者が下着でライブストリーミングしてはいけない」とルールが変わってしまいまして、急遽男性が女性用の下着を着用してライブストリーミングを行う事態に!

中国では結構急に物事のルールが変更されてしまって、今までテレビにでていた方が出れなくなってしまうとかもあるようです。

中国では日本人よりも海外留学する方が多いですし、海外へ移住される方もたくさんいます。なので、中国で生まれ育っても海外で生活していたりすると、中国人であってもその人自身はとても柔軟な考えを持っていることもあります。
また、いくら中国政府がそれに対して批判的だとしても、個人がどう考えているかは別ですので、自分はそうは思わないよという考えの中国人の方もいます。ですので、「中国人だったら全員、同性愛に反対している。認めていない。」というわけでもないんですね。
海外で同性婚している中国人の方もいますしね。
ただし政府としては同性愛は認めたくないという考えなので、政府に逆らうようなことは軽々しく口にはできないっていうのが本音でしょう。

中国人の友人などと話すとやはり親からの「早く孫産め」というプレッシャーは相当なものらしく、異性愛者で結婚している身であっても、「両方の親から孫はまだかと言われまくって嫌になるよ・・・」という感じだそうで。。。日本もそういうところはあるから、共感できますよねw

日本ではジェンダーのイメージを相手に押し付けることはよくないよねっていう考え方にシフトしていってますよね。
例えば「女の子なんだからもう少しおしとやかにしなさい」とかって、その女性の個性を押しつぶして、「女=おとなしくしている」という旧時代のイメージを強要していることになります。
また、逆もあって「男なんだから泣かないの」とかも、男性だからって悲しいときに泣いちゃだめっていう理由なくね?っていうのが今の日本です。
それでもまだ日本だって完璧ではなくて、性別のイメージを押し付ける人はたくさんいますよね。
例えば職場で「女子社員が必ず来客者にお茶を出す」とか、「力仕事は毎回男子生徒がやらされる」とか、そういうのはまだ普通に残ってます。
でも世界的に見たら、そういった性別に囚われたイメージはなくすべきだって考えになってますよね。
それは性別というものが2つだけと考えるのも、この時代においてはあまりにも柔軟性がないからだという考えから来るところもあります。

私個人は、性別をあまり意識して生きてはいませんが、異性愛者の女性です。男性が好きな女性です。でも、もしかしたらこれから先の人生で、女性を愛することもあるかもしれないなと思います。相手がどんな性別でも恋に落ちるときは落ちるでしょうから、そこはまだわかんないなって思います。

なので、途中で性自認が変わる人がいてもいいし、途中で好きになる相手の性別が変わる人だっているよねってスタンスです。みんなが幸せになってほしいな~というのが私の考え。

が、しかし。中国では、今の日本や世界のスタンダードな考え方ではなく、「男は男らしく」「女は女らしく」みたいな感じを推し進めてるんですね。
国の方針がそうなっているということを頭に置いて、エブエブを見るとより深く理解できるかと思います。

中国語のShe/herとかHe/Himって?

この話がしたかったんだ!!!!
エブリンのセリフで、エブリンの娘の彼女に対する英語での三人称単数が間違っていて、娘から指摘されます。「あ~、もう中国語だったら全部同じなのに!」みたいなセリフがあるんですね。

ちょっと内容忘れちゃったんですが、たしか、エブリンの娘の彼女のことをHeで呼んじゃったのかな?で、娘が「Sheだよ!」って指摘する。
ここで、エブリンは「中国語なら同じなのに!」っていうんですね。

中国語では、SheもHeも同じで「ta」と発音します。
何が違うかというと漢字が異なります。
Sheを表す場合は她(女に也)
Heを表す場合は他(人に也)
Theyを表す場合は女性の集団であれば她们(tamen)、
男女混合だったり男性の集団は他们(tamen)となります。
文章で見ればそれがどっちかは分かるんですけど、話してるときはわかんないって感じ。
相手が男性だろうが女性だろうが、三人称の場合の音はtaなんですよね。なので、今英語圏では変わりつつある、その人がどのように呼ばれたいかというShe/He/Theyの話は、中国語ではあまり意識しなくてもよいという感じになっています。
なので、中国人の留学生とかは「英語ではそれを確認しないと失礼になっちゃうけど、中国語はどっちのtaなのかわからないから問題にはならない」そうです。
なんかそう考えると、中国語っていいなって思いますよね。
ちなみに中国語にはヨーロッパ言語における女性名詞、男性名詞とかもないです。語尾の発音が変わるとかもないです。
話し方が女性らしい、男性らしいみたいのはあるっぽいです。まぁそれは日本語もあるもんねぇ。

エブエブは、中国語と英語が入り混じっていて、両方なんとな~くわかる私としてはこの状態が「あ~アメリカに移住した中華系家族ってこんな感じなんだ!」と新鮮でした。エブリン結構英語ちゃんと話せてるのに、税務署から「(アメリカ育ちでネイティブの英語力のある)娘さんを通訳に連れてきて」って言われてる当たり、中華系の方ってこういう思いをしてきたんだろうなって思いました。つらいですよね。。。

おじいちゃん世代、エブリン世代、娘ジョイ世代

それぞれの世代によって考え方は違うし、育った環境によっても考え方は違いますよね。
このあたりは、オークワフィナ主演の映画「フェアウェル」とかでも描かれています。

世代によって抱える問題っていうのは結構違いますよね。
私の母も私が、37歳になっても結婚もせず、子供も産まないっていうことは考えてなくて、いい人を見つけて結婚してほしいと考えていました。
でも私が大学院で学ぶ(私は社会人大学院生です)ことを選んだのを見て、私には私が目指す目標があって、結婚や出産が人生の目標ではないんだなって気付いたようでした。今では私が大学院で研究をすることを応援してくれています。

母の世代からしたら、子供を産まずに、37歳で大学院に行く女性というのはあまりいなかったでしょうし、それが女性にとっての幸せなのか?と思ったでしょう。考えを新しく変えていくことは難しいと思います。私もいまだにTikTokの何がおもしろいのかよくわからんないしw 

エブリンはエブリンの親の反対を押し切ってアメリカに来ていますし、エブリンの娘はエブリンに対して反抗的です。
世代は違ってもなんとなく似るのが家族ってもんかなと思いました。
私も年々母親に似ていくような・・・

エブリンのお父さんからしたら、孫の彼女?!って感じですし、エブリン自身も娘の彼女?!って思うところがまだある。でも、娘ジョイとしては、なんでそれがダメなの?受け入れられないの?ですよね。アメリカで今を生きてればそう考えるのは当たり前ですよね。
誰も悪くない。でもじゃぁどうしたらいいんですっけ・・・?っていうのが物語の鍵となるところかと思っています。

中華圏でも香港や台湾、シンガポールなどは考え方が違います。

中国では同性愛は今でも受け入れてもらえない感じですが、台湾では同性婚ができますし、LGBTQに対しての国民の理解もあります。
台湾国籍同士、または台湾国籍と外国籍の方の婚姻が認められてます。
(カップルの一方が香港とマカオを除く中国本土の住民の場合は、引き続き適用対象外)

シンガポールでは昨年、同性愛が犯罪ではなくなりましたが、同性婚への道のりはまだ遠い層です。

香港ではこんなニュースもあります。

日本もまだまだアジアの中ではジェンダー、LGBTQ共にもっと発展していかなくてはならないですよね。
私は夫婦別姓に賛成していますし、同性婚も賛成です。
もっと、様々な方法で子どもを持つことができるようになるべきだと思うので、人工授精や精子バンク、代理母出産なども賛成の立場です。
ただ制度として認めるだけではなく、そこに付随するすべての制度を変えていかなくてはならないんだよなと思います。
私が生きているうちに日本国内で同性婚の結婚が合法になったらいいのになと思います。
また、独身女性が子供を持てる方法もできたらいいな。私は夫はいらないのですが、子供は育てたいのです。自分の子でもいいし、養子でもよいのだけど、独身女性が養子をもつのは相当ハードルが高いようでした。

最後に!

私はたぶんもう1回は映画館でエブエブ見る予定です。みんなで日本にエブエブ旋風を巻き起こしましょう!それはきっと、日本のいろんなことに対して意見をいうのと同じになる気がします。

ヒロインはエブリン。アジア人で移民で、のお母さんで妻で娘です。
若い女性ではありません。でもエブリンは美しく、強く、かっこよかったです。主人公として最高のキャラクターです。

ルッキズムという言葉が私は大嫌いで、人間の魅力は「若さ」や「かわいらしさ」「二重」とか「痩せている」とか「ブス」とか「目が大きい」とかでは測れないものです。美しい顔や痩せている体が好きな人もいるでしょうが、それはあくまでも好みの問題。絶対そうでなければいけない理由にはなりません。
年齢も関係ないし、見た目だって関係ない、アジア人ばっかりキャスティングされていたら売れない?そんなことないですよね。
何度でも言いますが、見た目でわかる情報だけが人間の魅力ではありません。人間は「中身」です。

どんなに整形しようが、どんなにかわいい服を着たとしても、中身がない、中身が悪い人間は美しくはありません。整形手術で見た目は直せたとしても、中身を変えるには自分が努力するしかないんですよね。
なので中身の方が私は重要だなって思ってます。

エブリンや、税務署の職員(ジェイミー・リー・カーティスさま!)に対して「おばさん」「年取ってて醜い」「おばさんが活躍するのを見ても面白くない」とか思ってるあなた!

この映画で重要なのはそこではないんです!
もう1度映画館で見てみませんか?!

エブエブは、37歳独身の私にとっては、とても素晴らしい映画でした。
社会人大学院生を続けようと思えた作品です。

ぜひ、アカデミー賞でも受賞しまくってほしいです!
楽しみにしています!

では、皆さん、どこかの劇場でお会いしましょうね!
Bye!

※私は中国本土、台湾、香港、シンガポールすべて旅行で訪れています。自分でそれぞれに行ってみた結果、中国本土のには中国本土の良さがあるし、台湾には台湾の、香港には香港の、シンガポールにはシンガポールのそれぞれの良さがありました。国として中国と台湾は同じであるとは言えないなというのが私の肌感覚です。ですので本文中では台湾を中国とは別の国であるとして扱っています。ここは私の主観ですので、それに対して違うと考える方がいても否定しません。が、この件に関してはいち日本人の個人である私になにか意見を言われたりしたところで私が台湾を中国に編成するための力を持っているわけではないので、この件についてコメントをされても「そうですか。」しか言えませんので、ご了承ください。

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