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高尾山の天狗の話

秋は天気がよく、レジャーに最適だ。登山などに行く人も多いだろう。私が通っていた中学、高校は私立の女子校だったのだが、遠足が先生の趣味でひたすら「登山」だった。中高6年間で様々な山に登ったものだ。
最初は手始めに高尾山から始まった。中1のときの遠足が高尾山だった。
高尾山はご存知の通り、東京の八王子にある山だ。そこまで高い山ではないので、登山初心者にオススメ。というか、リフトやケーブルカーなどもあるのでさほど歩かなくても上に行くことができる。
が、当然私たちの学校では歩いて上まで行くように求められた。

この高尾山の登山では7~8名のグループを作り、グループごとに頂上を目指した。これは私の友人グループが遭遇したことの話だ。

高尾山の頂上まであと少しというところで、視界が開け、景色がよく見える場所があったそうだ。私たちは覚えていないのだが、その場所は木々もなく、遠くまでよく見えるようになっていたそうだ。
だが、そこには胸の高さくらいの柵がついており、そのすぐ下は人が一人立てるくらいの空間があって、下はすぐ崖のようになっていた。

友人グループは遠くからそこを見つけ「景色がよさそうだね!」と、その場所に走って近づこうとした。そのとき、その景色が開けている場所の左右にあった草木の茂みの中から白い服を着た、おじいさんが出てきた。

おじいさんは柵の向こうから出てきたそうで、友人グループを見て「遠足かい?」と話しかけてきたそうな。
友人たちはちょっとびっくりしながら「はい。」と回答した。するとその白い服を着たおじいさんは、胸くらいの高さがある柵の上にひょいっと飛び乗り、「もうあと5分、10分もしないくらいで頂上だよ。がんばって!」と頂上の方を指さしてニコニコと笑顔で友人たちを見送ったそうだ。
友人たちも「ありがとうございます」とか「がんばります~」とか言いながら、おじいさんが指を指した方向に向かって、歩き出した。しばらくして友人の一人が「ねぇ、あのおじいさんおかしくない?だってさ、あの柵の向こう、崖だよ?」「確かに」「戻ってみてみよう」と、歩いて1~2分ですぐに引き返した。

その場所に戻ってきたが、おじいさんの姿はすでになかった。
おじいさんが座っていた柵から身を乗り出して、左右の草木の茂みのあたりを見てみたが、そこは人が立てるような空間はなかった。そもそも、人が歩けるような場所ではなく、草木が複雑に絡み合ってる場所だった。

「おかしいよね?ここからおじいさん出てきたけど、こんなところ人が入れないよね?」
「おじいさん、結構年齢がいってそうだったけど、あの柵にひょいっと軽々と乗ったよね?この柵、結構高さがあるよね。」
「私たちがおじいさんと別れて1~2分しか離れてないけど、おじいさんいないよね。そんな早く歩ける?」

友人グループが出した結論は

「おじいさんは天狗」

高尾山には薬王院というお寺がある。天狗は、そこの御本尊様に従いお護りする随身として、開運や魔除けなど多くのご利益をもたらす役割をもっているそうだ。

「そういえばさ、一つしか歯がない下駄履いてなかった?」

「あのおじいさん、お酒飲んでんのか?ってくらい顔が赤かったような」

この話は1999年ごろの話だ。
今でも天狗は高尾山に遊びにくる登山客を見守っているのかも、しれない。


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