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海の日と鰻と。

今週の月曜日は、海の日だった。
後で調べて「あ、今日じゃないやん」とわかったのだが、なぜか私の中で「今日が土用の丑の日だ!」という思い込みがあって、我が家では鰻を食べた。というのも、先月、義母から冷凍の鰻の蒲焼が送られてきたのだ。

冷凍の鰻は非常に調理が簡単。なんせ温めたらいいのだから。
たれの香ばしい匂いに、思わずよだれが出そうになる。それと同時に、祖父のことが頭に浮かんだ。

祖父は2年前の5月に亡くなった。85歳だった。
ずっと現役で車も運転したり畑もしたりしていて、その日も、朝は私を駅まで車で送り(遅刻しそうになるとずっと甘えていました)、昼は友だちと電話で話し、夕方に意識がなくなったようで、気づいた祖母によって病院に搬送されたが、そのまま息を引き取った。
「まさにピンピンコロリだね」と言われた祖父は、突然の別れで悲しかったけれど、人望も厚く色んな人から惜しむ声をいただいて、良い人生だなぁと、孫から見ると思った。

そんな祖父は、料理も得意だった。
夕飯はほぼ毎日祖父が作っていて、鰻の蒲焼は、十八番レシピの一つだった。
グリルで焼いた鰻を山椒がきいた特製の濃いめのたれと合わせ、丼に「ご飯、鰻の半身、ご飯、鰻の半身」とミルフィーユにして、上に青じそを乗せるのが祖父流。
小さい時は山椒の実が苦手で、噛んでしまったときは「うぇー」となっていたけれど、今となっては、あの舌がスース―する感触も含めて、懐かしい思い出の味だ。

祖父の鰻丼とは比べ物にならないものの、蒲焼を半分に切ってご飯とミルフィーユにし、上に実家から持ってきた青じその千切りを乗せると、それなりの見た目になった。
夫には鰻に青じそというのは真新しかったようで、心持ち少なめに乗せていたのがおもしろかった。
口に頬張ると、たれの甘さと鰻の脂が溶け合って、うん、美味。やっぱり夏は鰻で精をつけないとね。

口に広がる幸せに祖父の顔が浮かび、泣きたくなるような、でも温かい食事だった。


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