カフカの日記を読む日記 7(2024年07月06日から07月13日)

2024/07/06

 彼らは何かを学ぼうと思って列車を見にきたのではなく、日々の業務の息抜きのつもりで列車を見にきたのだろう。したがって、程度の差こそあれ、彼らは列車の通過を楽しみにしていたはずである。
 それなのに、その列車には怖い上司が乗っている。なんてことだ。つらい。


2024/07/08

 さらに「通過するたび」と書かれているから、その上司はつねに列車に乗っていることになる。
 次は乗っていないだろうと思ったら乗っている。立ちすくむ。次こそ大丈夫だろうと思ったら乗っている。立ちすくむ。さすがにもうないでしょ。乗っている。立ちすくむ。


2024/07/10

 つねに列車に乗っている上司が通りすぎるたび、部下たちは立ちすくむのである。
 「部下たち」(いつしか私が勝手にそう呼んでいる)の一人はカフカ本人かもしれない。その可能性は十分にある。
 つねに列車に乗っている上司を前に立ちすくむカフカ。


2024/07/11

 あるいは、カフカは見物人の一人なのではなく、彼が会社以外で見かけるたび、その上司は列車に乗っていたことだってありうる。
「あのひと、いつも列車に乗ってんな」
 カフカはそう思って、あの文章を書きつけたのかもしれない。その可能性は十分にある。


2024/07/13

「列車が通過するたび、見物人たちが立ちすくむ」(2)
 したがってこの文章は、日記というより創作メモの一種なのかもしれない。
 いずれにせよ、この文章からも「決定できないこと」というカフカの特性が感じられる。そう言えないだろうか。


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