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西は草履、東は下駄

あくまでも印象としてですが、西日本は草履で、東日本は下駄を好むのかな、と感じています。
だいぶ前になりますが、福岡市で3年ほど暮らしていた時、浴衣の季節以外で下駄を履いている人をほとんど見なかった気がします。
当時、茶道教室に通っていて、お稽古に舟形下駄を履いて行くと「草履みたいな形の下駄があるのねぇ~」と珍しがられました。

私は一日中、下駄を履いてますけど

関西からご来店されるお客さまにも「地元の店は下駄の種類が少ない」「京都は下駄の値段が高い」などとお聞きします。
先日、催事でご一緒した大阪の着物屋さんには「仕事で一日中履くには下駄より草履」と言われました。
私は毎日、仕事中ずっと下駄だけれど、疲れないのになぁ。

西と東、歩き方の違いもあった?

今、読んでいる時代小説に「大阪は足袋、京都は草履、江戸は下駄」という一文がありました。
京都や大阪に比べて、江戸の市中は道路の状態が悪かったので、歯のある下駄が適していたのでしょう。
また着物の着方や歩き方の違いもあったかもしれません。
京・大阪の人々は裾を長めに着て、草履を履いてゆったり歩く。
一方、江戸の街ではスピード感が大事なので、着物の裾を短く着て、下駄でちゃっちゃと速足で歩く。
100年以上経っても、東西の違いが今でも続いているのは、おもしろいなぁと思います。

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台のクッション性より、鼻緒の挿げ具合が大事

残念なのは今、全国的に正しい履物の知識が伝わっていないところ。
「下駄=浴衣の履物」と思い込んでいたり、「下駄はクッション性がないから疲れる」と決めつけている人が圧倒的に多い。

下駄は木製なので基本的にはクッション性がありませんが、草履に比べて軽いので、歩く際には足への負担が少ないから本当にラクなんです。
ただし鼻緒が足にフィットしていることが前提。
草履も下駄も、鼻緒が伸びて緩くなれば、疲れるし歩きづらい。
台のクッション性より、鼻緒の挿げ具合のほうが、歩きやすさには重要なポイントです。

下駄と草履、使い分けるのがオススメ

私自身は仕事や普段の着物に下駄を履いていることが多いですが、お出掛けしたり会食など、日常とは違う気分の時には草履を履くこともあります。
自分の店で扱っている草履は、種類によっていくつかのメーカーや職人に作ってもらっているので、それぞれ履き比べてみたいし。
フォーマル・セミフォーマル以外の履物は下駄でも草履でも良いのですが、実際見た目の印象としては、草履のほうが‘よそゆき感’があって、下駄は軽やかに見えます。
たとえば木綿の着物や、素材感がある紬などには、草履よりも下駄の方が似合うのではないかな、と思います。
足元を替えると、着姿全体の印象はかなり変わります。フォーマルとお洒落用、一足ずつしか持っていないという方は少なくないと思うのですが、洋服と同じように「お洒落は足元から」と気に留めていただければ嬉しいです。


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