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大企業参勤交代時代の終わりとこれからの地方経済

メディアプロデューサー、メディア化支援コンサルタント、トミタプロデュース株式会社の富田剛史です。

少し前にtomitablogに新しい記事を書きました。昭和の時代から日本の地方経済を支えた「大企業参勤交代時代」について。要するに、大企業の転勤人事が地方経済にはとても大きなイベントだったし、それが定期的に起きることでそれぞれの季節が回っていった・・・というお話し。

32万人巨大企業NTTの転勤廃止のニュースの意味

そうしたら、タイムリーにNTTの転勤廃止が発表され、ニュースになっていました。なにしろグループ社員32万人のNTTですから、大きな影響があるでしょう。

転勤を廃止するだけじゃなく、リモートワークの推進、紙の資料の全廃、そして女性幹部・経営者の比率アップ、さらには地域の農業・漁業など一次産業へのコミットを強める・・・といったことがセットになった施策です。

これは、非常に分かりやすい「未来への転換の決意」ですね。
全部の施策がびしっと同じストーリーで筋が通っていて、そのような社会になる方が自社の事業にとっても有益であるという、まさにSDGs時代の経営の手本のような施策。

「そのような社会」というのは、

・転勤/単身赴任で家族がバラバラにならない社会
・リモートワークで家族時間アップ、通勤減でCo2ダウン
・紙資料の会議や稟議などがなくなり森林資源保護へ
・長時間の会社詰めや業務飲み会の減で女性活躍のベースができる
・これまで労働集約的で属人的ノウハウを積む人材が支えた一次産業を、別のタイプの人材が支える社会へ

といったことで、そういう社会はSDGsが示す未来の姿に近づくことでもあり、かつそうなったほうが自社が活躍できる機会が増大するはず・・・というのが「SDGs経営」の設計図です。

SDGsが示す未来に向けて、加速する変化を直視しなければならない

これは何も、NTTグループだけのことではありません。あらゆる「大企業」は、経営効率とSDGsが描く未来の「要請」を鑑みれば、

・自社人員の削減とAI/ロボットによる自動化
・転勤廃止〜リモートワーク推進〜「物品」の削減
・地域に芽生える「新しい時代の担い手」たちと共存共栄を探る

という方向を必死に探るでしょう。

一方で、地方経済を回すのに大きな役割を果たしてきたのは、

・大企業による定期的な人事異動と転勤
・それにともなう「物品」と「飲食」消費
・労働集約的産業や属人的ノウハウ/人脈/秘匿情報

などです。

詳しくは、トミタブログの「大企業参勤交代時代の終焉」を読んでもらえればと思いますが、時代の方向性はもう元には戻りません。

各街に大企業の「広告/サイン」は残るでしょうが、「支店や営業所」といった人がいる場所は無くなるんです。もちろん、そこの殿や幹部が定期的に入れ替わることもない。

昔のまま変わらないなら、「もうおしまい」という気分にもなるでしょう。

新しい時代の各地方の街の在り方はどうなるのか

でもまぁ、そんなに悪いことばかりじゃありません。

定期転勤で幹部は来ないかもしれませんが、あなたの地域が「何か」で人が暮らすのに魅力的な場所であれば、大企業の社員や優秀な人材が「移住」してくる可能性がけっこうあります。

だって、どこで仕事しても良いわけですから、それなら自分の好きなライフスタイルや家族にとって良いところのほうが良いに決まっています。

でも、その人たちは、別に仕事をくれたりはしません。地域の店に自分や家族と飲食に来ることはあるでしょうが、大パーティも接待もお中元やお歳暮の贈り合いも殆どないでしょう。

それじゃぁ意味がない? ・・・そんなことはありません。

今その判断をする人たちはつまり、優秀で、決断力があって、新時代に馴染んでいるのだから、そんな人や家族が周りに居始めることこそ、地域にとっては大きな益なのではないでしょうか。
特に、これから先の時代を生きていく若者や子どもたちにとって、大きな刺激を与え、未来への参考になる存在なのではないかという気がいたします。

いずれにしても、「下請け」や「付き合い」「お返し」…などで回るビジネスの幅は極めて狭くなります。逆にみんなにウケなくても「ならではの魅力」があれば、全国や世界を商圏にできる可能性が加速度的に増しています。個性を自覚して磨く力やどこかにいる明日のファンに向けて情報を発信する力が必要です。

それさえあれば、今度は地域から支店や人材を引き上げた「大企業」の方から、コラボレーションしませんかと誘いがかかるような時代なんです。
なぜなら全国ブランドの会社にとって、各地に社員を配する必要はなくなっても、魅力的な各地とつながることはもちろん必要ですから。

そこから、新しい時代の全国企業と地域のいい形が、始まるのではないでしょうか。

とはいえ、地方の実態は私も多少なりとも分かっているつもりです。
昭和の価値観の世代はなかなか変われません。今後ますます大変でしょうが、でもまだその年代の人たちは人数が多いですし、世の中そんなにいっぺんにスパッとは変わりませんから、昔のやり方を続けながら何とかあと10年くらいは行ける・・・という感じでしょうか。

しかし、こんなに面白いことになりそうなのに、それも残念だと思いませんか? 体力的に無理…というなら仕方なしとして、気力さえあればなんとでもなります。まずは時代認識。そして、必要なスキルを身に着け、必要なツールを使いこなせるようになって、自分ならではの魅力を磨くほうが良いのではないでしょうか。

よかったら、お手伝いさせていただきますので。


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