眠れないときに飲む薬

「眠れないときに飲む薬」と聞くと，いわゆる病院で処方される睡眠薬だけでなく，ドラッグストアで購入できるようなものをイメージされる方もいらっしゃるでしょう。いわゆる睡眠改善薬と呼ばれるものや，よい睡眠が得られることを謳ったサプリメントなどもを広い意味で「眠れないときに飲む薬」となるでしょう。

こういった類の薬の効果というのは実際のところどうなのでしょうか。

睡眠薬

ドラッグストアで買う薬の方が効き方がマイルドで安心だと考えるかもしれませんが，実際のところはそうも言えません。病院で処方される睡眠薬は，効果が科学的に確かめられ，安全性についても十分に評価が行われたものに限られています。

病院で処方される睡眠薬と言えば，睡眠薬を飲むとそのまま死んでしまうのではないか，睡眠薬を飲み続けると依存性があり止められなくなるのではないかといった心配もされるような薬が確かにありましたが，現在はそういった懸念のある薬は使われないようになってきています。

依存性という意味では，眠るためにお酒を飲んでいる人は，すでに依存している状態となっている可能性もあります。睡眠薬はお酒の眠くなる効果をより安全に取り出せるようにしたものと考えてもよいでしょう。

最近の睡眠薬は，まったく別の仕組みで自然な眠気を誘い出すものもあり，より安全性を重視した選択が可能となっています。昔のイメージとはだいぶ変わってきているのです。

そもそも眠れないという悩みで病院を受診した際にも，薬の処方を行う前に考えるべきことはたくさんありますので，睡眠薬を飲むことを積極的に勧めているわけではありません。睡眠薬が欲しくて病院を受診する患者さんが多いのも事実であり，すぐに睡眠薬を処方してくれる病院の方が評判がよいのかもしれませんが，「睡眠薬を飲むしかない」と考える前に，次の記事も読んでみてください。

睡眠改善薬

ドラッグストアで購入できる睡眠改善薬と呼ばれる薬は，病院で行われる保険診療の中では眠れないという悩みに対して用いられることはありません。よく花粉症などに対して処方される飲み薬の副作用として眠くなってしまうことがあり，運転が禁止されているものもありますが，睡眠改善薬には，これと同じ成分が含まれている場合が多く，眠気を生じる効果は確かにあります。花粉症に対して用いる薬の中にはこういった副作用をなるべく減らしたものが好まれますが，睡眠改善薬では眠気が出るタイプのものが選ばれています。

ただし副作用としての眠気であり，翌日までぼーっとする感じが持ち越すこともあります。病院で処方される睡眠薬と比較しても持ち越す効果を調整することが難しく，ドラッグストアで購入できるから安全に使える薬かというと疑問があります。

ほかにも睡眠によいとされる栄養素や食品の成分が追加されているなど，それぞれに工夫は見られますが，実際に睡眠によいとされる十分な根拠のあるものは存在しませんので，この点に大きな期待はできません。

サプリメント

睡眠に効果のある栄養素については，さまざまな研究が行われていますが，確証のあるものは存在しません。

サプリメントとして販売されているものの中には睡眠の質を改善する効果などを謳ったものもありますが，効果を示す研究もあるらしいといった程度のもので，気持ちの問題以上の効果は得られません。

サプリメントには，睡眠改善薬のような副作用はあまりないと言ってよいかもしれませんが，不適切な商品や表示を一般消費者が見分けるのは難しいところであり，サプリメント沼にハマる前に，別の方法を試すことをお勧めしたいところです。

＊　＊　＊

「眠れないときに飲む薬」として病院で処方される睡眠薬とドラッグストアで購入できる薬を紹介しました。ドラッグストアで購入できるからといって，安全な薬であるとは言えません。

病院で処方される睡眠薬は，これまで以上に安全性の高い薬が選択されることが多くなっています。また，そもそも睡眠薬が必要な状態かどうかを見直すきっかけにもなりますので，病院で相談するのもよい方法だと思います。

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