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クリームソーダと、叫ぶ少年

子どもの叫び声が聞こえてきた。

目を上げると、2歳くらいの男の子が向こうの窓際の席で、言葉にならない抗議の声をあげている。

テーブルにはクリームソーダが1つ。
こちらに背を向けて並んで座る2人の女の子(3~4歳くらい?)が、柄の長いスプーンでアイスクリームをせっせと食べ進めている。私には、2人の表情はよく見えない。

テーブルの反対側にいる男の子も、先ほどから一生懸命スプーンを振り上げるのだが、いかんせん届かない。
そして、目の前でアイスはどんどん減っていく。
そりゃぁ、叫びたくもなるよね。

大人が何もしていなかったわけではない。
親御さんは男の子に
「(あなたは)まだ小さくて届かないんだから、(代わりに) 取ってあげるよ」と、スプーンを手渡すように何度も声をかけている。

でも違うんだ。

と、ばかりに男の子はスプーンを自分で握りしめたまま、
やっぱり言葉にならない叫び声をあげ続ける。

女の子たちは、男の子を押しのけるわけでも、張り合って叫び返すわけでもない。弟(?) の叫び声には慣れっこなのかもしれない。
ただ淡々と、スピードをゆるめずにアイスを食べる。

意地悪をしているようには見えないが、傍から見ると、ちょっと男の子には酷な状況に思える。

お節介おばさん気質なので、私は脳内でシミュレーションをする。

もし私もあのテーブルにいたら、
男の子を抱え上げたり、膝に載せたりして、
アイスにスプーンが届く、彼のポジション取りをサポートしたい。

それがダメなら女の子たちにお願いして、
クリームソーダのグラスを少し、男の子寄りに動かしたい。
たぶん、みんなの背丈とテーブルの大きさから見る限り、
3人のスプーンがちゃんとアイスに届く、もっといい位置があるはずだ。

結局、男の子がアイスを食べられたのか、見届ける前に私は店を後にした。

支援するとは何か。
最近ずっと考えている。
同じテーブルに座る関係者ではない、通りすがりの私にも、
何かできることがあったのではないか…

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