【SS】不思議な扉

それは不思議な扉です。

確かに扉はあるのに
どこにあるのか誰も知りません。

いくら探しても見つからないのです。

なのに、ふと気づくと
なぜか目の前にあるのだそうです。

つまり、そういう扉なのです。

その扉は施錠されていません。
だから、誰でも開けることができます。

そして、開けることができれば
誰でも通り抜けることができます。

それによって
どうなるのか

入ることになるのか
出ることになるのか

よくわかっていません。

というのも

この扉を通り抜けた者で
こちらに戻ってきた者は

いまだかつて
一人としていないからです。

さて、唐突ではありますが
今、あなたの目の前に扉があります。

そうです。

冗談みたいですが
あの不思議な扉なのです。
　

不思議な扉／Tome文芸館より　作　Tome館長　朗読・動画　haru | ゆっくり生きる

Mysterious Door

That is a mysterious door.
There is certainly a door, but no one knows where it is.

No matter how much you search, you can't find it.

However, when you suddenly notice,
it seems to be in front of you for some reason.

In other words, that is the door.

The door is not locked.
So anyone can open it.

And if you can open it, anyone can go through.

No one knows well what will happen,
whether you will enter or leave.

This is because no one has ever passed through this door
and has returned to this side.

Now, it's abrupt, but now there is a door in front of you.

That's right.
It looks like a joke, but this is the mysterious door.