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広告担当者・マーケターに伝えたい「テレビ」というメディアの価値


 テレビメディアは代替不可能なマスメディアである。それをマーケターは忘れてはいけない。前回の記事に引き続き、このことについて考えていきたい。

 ジェフリー・ムーア氏の提唱する「イノベーター理論」は、市場の約2.5%と言われる「イノベーター(革新者)」から、市場の約13.5%を占める「アーリーアダプター(初期採用者)」、今で言うインフルエンサーを多く含む層へと製品やサービスが浸透し、そこから「マジョリティ」へと進化するためにはキャズムと言う溝を越えなければならない、というものである。


 このキャズムが生まれる理由の多くは価値観の違いである。イノベーターからアーリーアダプターは「新規性」を求める。一方で、マジョリティは「安心感」を求める。ここに大きな隔たりが生じる。

 もちろん、コモディティな市場など、後発参入によるシェア獲得であればこのキャズムを越える必要はないかもしれない。「モノ」→「コト」→「トキ」へと消費者の価値変化が起きている今、自身の市場規模自体をそれほど大きく定義しない企業にとってはマジョリティを取る必要はないだろう。

■マジョリティへの浸透に必要な「無用の用」

 だが一方で、その溝を超えないといけない商品・サービスもある。このアーリーアダプターとマジョリティの間にあるキャズムを超えるには、マスメディアの持つ「無用の用」の側面が一つのキーとなる。

 「無用の用」とは、一見意味のないと思われるものが非常に重要な役割を果たしている、ということだ。これこそがマジョリティが求める「安心感」をつくるキーになると私は考えている。

 テレビは、この「無用の用」の側面が大きいメディアだ。一見するとまったく関与しない人にまで情報を届けてしまう。だが、それが商品・サービスの安心感を醸成する大きなカギとなってくる。

 「イノベーター理論」では、例えば”返金保証”や”サンプリング”など、製品・サービスの購入自体を低リスクにする方法が安心感づくりとして取り上げられている(製品・サービスの市場導入に関する文脈で語られているため)。

 だが、”誰もが知っている”という情報以上の安心感は、なかなか醸成するのは難しいだろう。「無用の用」によって社会事化された情報は、やがて安心感だけではなく信頼性を生み、マスメディアの同時性も相まって、市場への浸透を一気に加速させてくれる。

■ブランド価値とは、「顧客」だけに向けたものではない

 また、製品・サービスの市場導入のみならず、その企業自体の認知が上がることによって顧客以外のステークホルダーにも情報は拡散していく。人財採用における求職者や新卒者、株主における投資意欲、企業のインナーモチベーションなどにも影響を持つことになるのだ。

 ブランド価値とは、決して顧客にだけ向けるものではなく、社会的価値も含めて考えるべきであり、そうした創造を行うのがマーケターの役割ではないだろうか。

 そして、そのための手段として、「テレビ」というマスメディアに代わるものは今のところはないと言えるだろう。

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