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「デジタル広告のKPI」について考えてみた


■デジタル広告の「KPI」について思うこと


 今回は、「デジタル広告のKPI」について考えてみたい。

 デジタル広告は、従来のメディアが抱えてきた「効果を定量的に把握できない」という問題を解決した。クリック、コンバージョン、CPAなど、広告効果を数字で語れるというメリットは、広告を売る側にとっても、打つ側にとっても非常に魅力的に映っただろう。

だが、その弊害とも言える現象が、今の広告業界では起きている。「広告のKPI」を短絡的にクリックやコンバージョンに置いてしまうという状況だ。事実、広告代理店の多くもそれらを重視したレポートを挙げてくる。

 でも、考えてほしい。そもそもマーケティングとは、「市場定義」を行うことである。どの市場に、どんな人たちに、どんなことをすれば、自社の顧客になってくれるのか。ブランド認知が上がるのか。その戦略を実行するための“一つの施策”として「デジタル広告」があるだけということを忘れてはいけない。そこにはクリックやコンバージョンでは計れないこともあるはずだ。

■「短絡的なKPI設定」によって見落とされるもの


 もちろん、「クリックが増える、コンバージョンが上がる」ことは、「商品を売る」うえでは大事な指標となる。しかし、コモディティ化した現代の市場では、それだけでモノやサービスを売り続けることが難しいのもまた事実だ。ブランド認知や消費者への啓蒙など、クリックやコンバージョンで効果が測れない部分も多くある。
 
「マインドシェア」もその一つだろう。ある商品やサービスが、競合に比べてどれくらい消費者の心を占有しているか、つまりそのブランドの占有率である。

最近では、このマインドシェアをSNS広告で簡単に調査できるようになった。「●●と言って思い浮かべる商品は?」などの質問に4択で答えてもらうアンケートのようなものだ。

 もしその調査で、マインドシェアがデジタル広告出稿前後で10%上がったとすれば、たとえクリック数が微妙な結果だったとしても、その広告は効果があったと言えるだろう。マインドシェアが10%上がれば、それだけ商品が売れる可能性も高まるはずだ。

商品・サービスによっては、クリック、コンバージョンよりもマインドシェアが課題になっているケースも多い。だが、クリックやコンバージョンに視点が凝り固まってしまっていれば、それも見えてこない。

 このように、デジタル広告のKPIを安易にクリック、コンバージョンに置いてしまえば、その上流にある本来の目的を見失ってしまう可能性が高まる。あくまで、デジタル広告はマーケティング上の一つの施策にすぎない。それを念頭に置き、やみくもにクリック、コンバージョンをKPIに置かないようにしたいものである。

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