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のら多言語話者は何が分かる?(4) のらねこ、外国語の単語が暗記できない

こんにちは。
いつも のらねこに何ができる? を読んでいただきありがとうございます。
もしくは初めましての方、見つけていただき本当にありがとうございます。

日々をスローライフ化していくために必要なのが “目標管理スキル” です。
このコラムは、そのコツを学んでいただくために、僕が自分で計画をたてて自分で実行してきたことを、実践形式でかつなるだけオモシロおかしい内容にしてお届けするという、そういう志向となっております。
そんで僕はITの目標・開発管理のお仕事を30年弱ほどやっており、現在は目標管理アプリ Project Sylphius を手がけております TOMCAT HEART の中島と申します。

現在連載中のシリーズ “のら多言語話者は何が分かる?” は、ちゃんと続く外国語学習の進め方。
始めたはいいものの教則本を半分読んだところでワケ分かんなくなった、なんでがんばってたのか途中で思い出せなくなった、などなどなど。
外国語というのは始めやすい反面、続きにくい趣味の代表でもあります。

そういうことにならないよう、英語・イタリア語ほか様々な言語を数年以上勉強し続けてきた僕が、なぜそんなに長く続けられるのかについてノウハウをシェアしたいと思います。

執筆計画はこんな感じ。

1. 目標設定とセルフバインド
2. 基礎勉強の進め方
3. 当面の目標と勉強スケジュール作成
4. 語彙を増やすコツ(今回)
5. 目指すレベルの確認
6. スラッシュリーディングのコツ
7. セクションスタッキングのコツ
8. ヒアリング練習のコツ
9. スピーキング練習のコツ
10. アウトプットの大切さについて

バックナンバーもございますので、興味あればご覧ください。

今回のコラム内容と関係あってもなくても、何らかの言葉の勉強をがんばってる方であれば、どうやって単語を覚えるのか、暗記ってどうすればいいのか、悩んでいる方も多いかと思います。
今回はその部分のやり方についてお話したいと思います。

1.「どうやって語彙を増やすか」は世界共通の悩み

もしかすると皆さんの中には、「私って暗記が不得意なんだよね。得意な人がうらやましい!」と思ってる人もいるかもしれません。
とりわけ外国語は学習時間の9割以上を単語の暗記が占めますから、そのような意識は持ちやすいかもしれません。

暗記が得意でないとそもそも外国語なんて無理。
そんなふうに思ってる人さえいるんじゃないでしょうか。
その方々、もしかして暗記できなくて苦労してるのが自分(とその同類)だけだと思ってない?

ですが残念ながら(あるいは幸いにも)、どうやって語彙を増やすかは世界中の外国語学習者の究極の悩みです。
みんな困ってんのよ?

僕もね、外国語を始めたばっかりの頃は、自分が生まれつき記憶力が低いと思ってたのよ。
だって「なんでオマエそんなに忘れっぽいんだ」って、周りの人に言われること多かったし。
実際、数日前に読んだ本の内容を思い出せなかったり、前日の夕飯が思い出せなかったりして、そのことを奥さんに「あんた記憶力悪いね」って言われたんだもん。
本当だもん。言われたんだから僕は記憶力低いんでしょ?

でも違ったのよ。実際には、別に僕の記憶力は悪くなかったのよ。
だって「余計なことはよく覚えてる」とも言われたもん。
物理的に記憶力ないのだとしたら、余計なことを覚えることだってできないはずでしょ?

それにいろいろ調べていくうちに、自分の記憶力がいいと思ってる人の多くは、実は “メモ帳” を持ち歩いてる傾向があることも分かったんです!
。。。え!? それってズルくない!?

だって、メモ帳見ないと思い出せないのは覚えてるって言わないやん! ってぶっちゃけ思ってたからです。
学生時代はカンニングが禁止されてたからね。
思い出すべきときに何か紙を見るのはズルだと思ってたのよ。

だから記憶法の本とかいろいろ読んで、メモ帳を見れば思い出せるなら、それは覚えてるうちに入れていいということを確信するにつれ、個人的に浮かんできた感情の中には怒りも少しだけ含まれていたのです。

大人ってズルいよね。子供には「メモを見るな」「カンニングするな」「ズルするな」って言っておいて、自分達は堂々とメモ帳見てるんだもん。
じゃあ学生のテストだって、別に自分のノートくらい見ながらやってもいいじゃん?

ねぇ?

まぁ、そんなこんなで、色んな本を――それこそ記憶法・記憶整理法・メタ認知・メモの取り方などなどなど、それはそれは色んな本をブックオフで買いまくりました。
そんで色々研究した結果、自分がうっかり忘れちゃうケースと、ちゃんと覚えてるケースの違いに気づいたんです。

最終的に僕がたどり着いた結論は、自分が “覚えるべき理由があることはちゃんと覚えてる” ってことでした。

たとえば、僕は奥さんにゴミ捨てを頼まれても、翌朝まで覚えていられません。
「ゴミの日は毎回ちゃんと捨てたい」は奥さんがゴミを捨てる理由であって、僕は別に多少溜め込んでも気にならない性格だからです。

でも逆に、イタリアに面白いブームがあれば、そのことはちゃんと覚えます。
家族や友達とのおしゃべりのとき必要だからです。

つまり僕は “そうそう都合よく覚えられない” だけで、別に “根本的に覚えられない” わけではないんです。

この、理由があれば覚えられるという特性は、なにも僕自身の特技でもなんでもなく、人類的にみんな同じです。
人間の脳の仕組みとしてはエピソード記憶っていうんですけど、記憶した物事を時系列に沿って整理するなどの能力です。

このエピソード記憶能力は哺乳動物としての基本機能の1つですので、この能力がないと “食う・寝る・遊ぶ” の基本活動すらまともにできなくなります。
ですので、普通の人として普通に生きてる人はみんなエピソード記憶能力があるし、ということは、別に記憶力はみんな特に悪くはないわけですよ。

2.おすすめの記憶法あれこれ

とはいえ、それでも単語を意識的に暗記するのが難しいのは事実であって、別にラクチンチン100%なやり方があるわけではありません。
語彙を増やすには様々な工夫が必要となります。
このときポイントとなるのは、この3つ。

  • よさそうなアイデアは手当たり次第に試す

  • 辛い日も楽しい日も、毎日同じ量だけやり続けること

  • ビジュアルをイメージしやすい単語から先に覚える

そこでここでは、僕が試した方法を一通り列挙してみます。

1.フラッシュカード (難易度☆/効率☆)

いわゆる単語帳のこと。
7センチ×3センチくらいの大きさの紙を、数百枚くらいの束にして持ち歩くアレね。
初期段階で、行き当たりばったりにとにかくたくさん覚えなきゃいけない段階の人には、なんだかんだでこれがおすすめ。

また最近は単語帳を自分で作らなくても、Anki というアプリを使うことで、お手持ちのスマホを単語帳として使うことができます。
この Anki は公式サイトに共有デッキ(shared deck)というのがアップされていて、自分で作らなくても何万という語彙数の単語帳を簡単に入手することだってできてしまいます。

ただし上述の通り、人間は覚える理由がないとモノを覚えられない生き物であるため、今回紹介する方法のうちではフラッシュカードの記憶定着率は最低となります。
単語1つ1つはランダムに表示されるだけで、多くの人にはそれらを覚える理由がない言葉が多いからです。

フラッシュカードは、あくまで初期段階で右往左往している人に、さしあたっての勉強法を提供してくれるものです。
(はなかっぱ でいうところの とりあえずの花 ってところかな)
何もできないよりはマシではあるものの決して効率のいい学習法ではありませんので、慣れるにしたがって徐々に他の方法に移行するといいでしょう。

また、単語帳と似た duolingo といった学習アプリもあるので、こちらの方もいろいろ試してみたらいいと思います。

2.対訳本の翻訳 (難易度☆☆/効率☆☆☆)

対訳本というのは、ページの左側に外国語が書いてあって、右側には同じ内容で日本語で書かれてる本のことです。
左側の文章を自分で訳しながら、右側の日本語ページを見て確認することで、翻訳を進めていきます。

個人的に一番おすすめなのがこの方法。
気軽で長く続けやすく、空いた時間に自分のペースでできるからです。

当然、最初のうちはそれこそ単語1つごとに全て辞書を引くことになるので、とりわけ初日は1文読むだけでもヘトヘトになると思います。
ですがそのことも含めて、疲れたら続きは明日にすればいいのです。

また、対訳本は世の中的にクラシカルでつまらない内容の本が多いのですが、それが嫌だったらマンガでもOKです。
好きなマンガの現地語版と日本語版をそれぞれ買ってくれば、2冊で1つの対訳本として使えます。

現地語版がアマゾンにすらないような希少言語でもないかぎり、教材が見つからなくて困ることもないでしょう。

映画を現地語字幕で見る (難易度☆☆☆☆/効率☆☆)

語彙がそこそこ溜まってきた人が、ヒアリングの練習をついでにやりたいときにおすすめなのがこちら。
DVDの音声言語・字幕言語を両方とも「現地語」に設定して映画を見る、という方法。

ただし注意点は、こちらは決して初心者向けではないということ。
世の中には、初心者に「映画を見ろ!」と奨めてしまう上級者がどうもいるらしいのですが、それ、ただの意地悪ですから!!

言葉をそこそこのスピードで読まないといけないうえ、音の聞き取りも同時にやる必要があるので、始めたばかりの人にはぶっちゃけメチャクチャ難しいです。
少なくとも日常会話の頻出語の5割くらい(英語の場合は200~250語くらい)を覚えていないと、そもそも字幕を読むどころではないでしょう。

ですがそこさえクリアできれば、ヒアリングの初期段階としては効率がいいので、たまにチラホラ、ちょくちょく試すといいと思います。
また言語的に映画が手に入りづらい人は、YouTube の自動文字お越しでも同じことができますよ。

映画のシャドーイング (難易度☆☆/効率☆☆☆)

DVDの音声言語・字幕言語を両方とも現地語に設定する方法なのは 3. と同じなのですが、こちらは「登場人物が1文しゃべるごとに映像を止め、俳優さんの言った言葉を繰り返す」ところが違います。
ヒアリング・リーディング・トーキングの3つの練習が同時にできてしまう、非常にお手頃価格な練習法となっております。

ただしこちらも、語彙が溜まってからじゃないと(3. ほどではありませんが)効率が半減してしまうため、ド初心者にはちょっと厳しいかもしれません。
もし、初心者の段階でいきなりシャドーイングがやりたい場合には、

  1. 登場人物が1文しゃべるごとに映像を止める

  2. 字幕の内容をノートに書き留める

  3. 分からない単語の意味を辞書でひいて訳す

  4. 俳優さんの言った言葉を繰り返す

という非常に回りくどい方法が必要かもしれません。
でもそれが自分に合ってると思う人には、とてもいい方法でもあるとも思います。

4.好きな曲の歌詞カードの翻訳 (難易度☆/効率☆☆)

もし洋楽が好きなら、その歌詞カードの翻訳をしてみるのもいいでしょう。
このやり方は、初心者でも気軽にできるので最初のうちはオトクです。
とっつきやすさでいえば、対訳本の翻訳よりも上かもしれません。

ただし割と頻繁に曲を検索しないといけないうえ、曲によっては日本語版が存在しないこともあります。
日本語版のない曲は答え合わせができないため、それゆえ記憶への定着率が悪くなってしまうかもしれません。

ですがもし洋楽が好きなら、1度はチャレンジしてみた方がいいと思います。

言語交換サービスを利用する (難易度☆☆☆☆/効率☆☆☆☆)

世の中の練習法というのは初心者でもやりやすいものほど低効率、上級者向けのものほど効率がいいものです。
初心者にもできて効率のいいやり方というのは少ないのが実情です。
その傾向は Lang-8Tandem などの言語交換アプリも同じです。

昨今の言語交換アプリは、コミュニケーションの大部分を文字だけで行います。
そのため、最低限書いた文章の半分くらいは意味が通っている程度の文章力があることが前提となり、それ以下の文章力ではそもそものコミュニケーションが成立しません。

ですがそこさえクリアしてしまえば、実際に現地の人とやり取りできるので効率が非常によくなります。
初心者の段階では、この言語交換アプリの利用を「いつか必ずやるべきこと」くらいの認識でいるといいと思います。

3.ビジュアルをイメージしやすい単語とは

人間には覚えやすい単語とそうでない単語があることが、心理学的に分かっています。
覚えやすい単語とは、ビジュアルがイメージしやすい単語です。

上記いずれの方法にも言えることですが、覚えやすい単語を優先的に覚えようとすることが重要です。

たとえば以下はトルコ語の単語です。

  • bulgisayar (ブルギサヤーシュ): コンピューター

  • lazım (ラーズィム): 必要な

これらは、人種・性別・トルコ語学習経験の有無などなどを問わず、 "bulgisayar" の方が覚えやすくなります。
この2つを同時に学習して、もし "lazım" の方を先に覚える人がいたら、その人はソートー珍しいタイプです。
なぜなら、コンピューターの方が具体的なビジュアルをイメージしやすいからです。

ですので全ての単語を均等に学習するのではなく、まずはパッと見でビジュアルの浮かぶ単語を先に学習した方が効率がいいです。

またこのとき "bulgisayar" は、"bulgi" が「情報」、"sayar" が「計算機・計測器」を表します。
もしあなたがコンピューター関連等の仕事をしていれば、「情報」という概念をイメージしやすいので覚えやすいでしょう。
ですがそうでない仕事の人には「情報」という言葉にビジュアルが結びつかず、ピンと来ないかもしれません。

反面、たとえば介護業界にいる人には、「介護」という単語はビジュアルが思い浮かびやすいはずです。
でもこの単語をビジュアルで捉えることは、要介護者のいない核家族の学生さんにはかなり難しいでしょう。

また子育て経験がない人は「ベビーバウンサー」という言葉をまず聞いたことがなく、どんなものか想像がつかないと思います。
ですので外国語でこれに該当する言葉も、覚えるのは難しいでしょう。

どんな人でも、ビジュアルの浮かびやすい単語というものが、それぞれの生活環境に応じてあるはずです。
また、「猫」「家」「空」など、誰でもビジュアルを浮かべやすい単語というのもあります。

そのような単語を、まずは優先して覚えるようにしてください。

4.大事なのは片っ端から試すこと

僕が個人的にやっている勉強法としては以上になりますが、もちろんやり方はここに書いただけではないはずです。
ポイントは、語彙を効率的に増やす方法論は、理想的なものがまだ発明されていないということ。
ですので毎週1回定期的に駅前留学してる人であっても、この “語彙を増やす” という部分は個人的な努力でどうにかせざるをえません。

だから思いついた方法を片っ端から試すことが大事です。
様々な方法を試すうちに、自分にとって一番効率のいい方法にたどり着くでしょう。

ポイントになるのはさっきも書いた通り、

  • よさそうなアイデアを手当たり次第に試す

  • 辛い日も楽しい日も、毎日同じ量だけやり続ける

  • ビジュアルをイメージしやすい単語を優先的に覚える

この2つです。
もちろん無理をする必要はなく、1日10分でも5分でもいいのです。
たくさんやるよりも、毎日やることの方が大事です。

たとえ1日に暗記できる単語数がわずか1語だったとしても、それを毎日やれば365語。
英語の日常会話語は400語とされているので、1年ちょっとでそれをほぼカバーできる計算になります。
だから無理をするよりも、「これなら毎日でもできる」と自分が思う方法にたどり着くことの方が重要なわけです。

てなわけで今回はここまで。

次回は、知識ゼロの初心者がよく言う「マスターしたい」なる謎ワードについて紐解きます。
素人は「言語をマスターしたい」ってよく言うけど、具体的に何をどこまで覚えればマスターしたと言えるのか?
そのことについて、僕が長年考えてきたことをお話しようかなと思います。

つっても、素人が言う程度の “マスター” って、実はぶっちゃけそんな大したレベルじゃなかったりするんですよねww
まぁ、素人がイメージするレベルくらい、あなたにもなれますよ。
もちろん時間はかかるけど、毎日やればね。

来週からはそのやり方などシェアしていければと。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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