H.Tomura

何があるのかわからないから行ってみる、という単純な動機で旅をしています。 作ったやつを…

H.Tomura

何があるのかわからないから行ってみる、という単純な動機で旅をしています。 作ったやつをこそっと外に出したいときだけ出します。気分屋です。

最近の記事

三浦綾子・不条理の中に描く希望

 時間を忘れさせるストーリーと、あまりにも重い読後感。でもその中に希望がしっかりと埋め込まれている。人間の本質を問うとともに、その本質を当然のものとしないための力をくれた。本って、小説って、こんなに意味があったんだ…。  九州旅行の帰り道、北九州・小倉で手に取った一冊のハードカバー。千葉までの6時間は、その本に見事に吸い込まれていった。分量としては文庫本3冊はあろうかという長編だが、その物語の魅力は本をほとんど読まなかった私でも、引き付けられるに余りあるものだった。  そ

    • ゴミゼロスーパーで、「これで十分」を思う

      世の中にはまだまだ見たことがないものがたくさんある。 見知らぬ土地で一人暮らしを始めたのをきっかけに、この魂胆で「とりあえず行ってみる」ようにしている。そんな暮らしも、気づけば1年が経とうとしている。 ひょんなことから、京都市内のスーパーで働いている方とお話しする機会があった。それもただのスーパーではなく、「ゴミが出ないスーパー」らしい。基本的に量り売り、包装資材は新聞紙以外なし…そんなスーパーが世の中にはあるのか。ほぇ~…。 その時はそこまでの話だった。が、時は12月

      • 知らない国のサッカー場の煙を浴びて -人生初のサッカー観戦inセルビア-

        西欧でも南欧でも東欧でもない気がする、ヨーロッパの奥が深い地域・バルカン半島。その最大の国・セルビアの首都が、ベオグラードだ。 古くはオスマン帝国とオーストリア帝国の攻防の最前線、かつてはセルビアを中心とした社会主義大国・ユーゴスラビア連邦の首都。名実ともに、バルカン最大の都市だ。 その外れ、丘の上にある閑静な別荘街を散歩していた昼下がり。お昼を食べに入った屋台の目の前が、ちょうどサッカースタジアムだった。しかも続々人が入っていく。あ、そういうことか。サッカーの試合ね。

        • 農業を知りたい理由。三里塚

          田舎に関わり始めて、いろいろな熱い仲間に出会った。 彼らを前にふと立ち止まったとき、自分はなぜこういったものに関心があるのか考えることがあった。 理由は絞れている。知りたいという好奇心、クリエイティビティのようなもの、「田舎が廃れているの、何かもったいなくね?」という単純な疑問…。 その中に一つ、すこしだけ大きいものがあった。折角なので形にして整理しておこうと思う。 あの土の下に何があるのか ラップはあまり知らないけれど、この歌が私の考えに一番近いと思う。 知らない人は

        三浦綾子・不条理の中に描く希望

          夜を明かす場所がないまま、知らない国で街に放り出されたあの日

          夜8時。電気のついていない、とても暗くて人気のないアパートの階段。 入れるはずの扉が開かず、ただただ呆然と立ち尽くしている。 俺はどうなっちまうんだろう。 気持ちは軽くないのに空に浮かんだような、とらえどころのない気持ち。 北マケドニア共和国。 と言われても、ピンとこない人がほとんどだろう。 ギリシャとオーストリアの間の、国がたくさんある地域。そのいちばん南側を想像してほしい。あのあたりである。 おそらく日本人の99%が行かないであろうこのヨーロッパの小さな国の首都スコピエ

          夜を明かす場所がないまま、知らない国で街に放り出されたあの日

          学生時代のちいさな冒険の話

          日曜日の朝6時、どこまでも広がる地平線から太陽が昇ってくる。 平原を走る小さくて頼りないバスから伸びる影は、オリーブ畑を黒くそめてゆく。 時刻表というものが国中に2枚しかないこの国で、どこからどう情報が回ったのかわからないが、道端にはぽつぽつバス待ちの人が立っている。 こまめに彼らを拾いながら、バスは平原を進んでいく。 何時に到着するのかもよくわからないまま、荒い運転に身を任せたまま。 バルカン半島の一角に位置する小さな国・アルバニア。 この国に来て1週間、この日は探しもの

          学生時代のちいさな冒険の話