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ハーモニカ・メンテナンス講座 【実践編2】

実践編2-ハーモニカの調律方法〜トレモロ調整(音程の上げ方〜下げ方)


ハーモニカ・メンテナンス講座・第四回目となります。
前回までの流れで調律以外のご説明はしました。
今回は最後に調律の説明となります。ハーモニカの調律の基本的な流れは、カバーを外す→アゲミの確認・調整→チューナーでくるったリードの音程を確認→
調律(リードを削る)→バリを取り仕上げる→アゲミの再調整→カバーの取り付け
という形になります。わかり辛い部分はページ下のYouTubeで作業内容が確認できますので、是非ご利用ください。

【ハーモニカの調律方法】

今回は原理は抜きにして、ハーモニカの調律はどのように行うのかをお話しします。ハーモニカの調律はリードを削ることで音程の調整を行います。
何処をどのように削れば良いのか?。図1をご覧ください。

図1

音程を上げたい時はリードの先をヤスリで削ります。リードを引っかけないように、なるべく先を丁寧に削ってください。
基本的にリードは金属疲労で音程が下がることが一般的ですから、音程を上げる作業が多くなります。慣れないうちは少しずつ少しずつ作業し、どの程度削るとどの位音が変化するのかを確認しながら行いましょう。但し、音程を上げすぎてしまった時などは、音程を下げる調整をすることが必要ですので下げ方も必ず習得しておきましょう。図2をご覧ください。

図2

音程を下げたい時はリードの根本をノミで削ります。リードと平行に縦に引っ掻くように削ります。音程の上げ下げを繰り返すと、当然リードは消耗していきますのでいじり過ぎないこともポイントです。


【トレモロの調整とは】

前回もお話をしましたが、みなさんは一からハーモニカを製造するわけではありません。音がおかしいと思った箇所だけを調整します。単音のハーモニカは音程が下がった箇所をチューナーを参考にしながら調整することになりますが、複音ハーモニカの場合は上下2枚のリードの音程差を確認してトレモロの量を調整する作業が必要となります。図3をご覧ください。

図3

例えば上図のように、ド〜レ〜ミ〜と複音ハーモニカを吹いて「レ」の音だけトレモロの量が多かった場合、音の波をイメージするとこのような図になると思います。この場合は音がくるっていない両隣の「ド」と「ミ」のトレモロの量に近づけるように「レ」の上段下段の音程差が少なくなるように調整していきます。

またファ〜ソ〜ラ〜と吹いて「ソ」の音だけトレモロが感じられない場合は、図4のようなイメージになると思います。

図4

この場合は、くるっていない「ファ」と「ラ」のトレモロ量に近づけるように「ソ」の上段下段の音程差が大きくなるように調整していきます。


【トレモロ調整の実践】


さて、実際にトレモロ調整を行うとなると、まず上段・下段どちらがくるっているかの確認が必要です。前回の内容を参考にして上段・下段を吹き分けてみましょう。
写真A~Bは。上記図3のようにドレミの音階を吹いた時に「レ」のトレモロが多い状態を想定しています。まずは「レ」下段・基音側を吸ってチューナーで確認しています。
中央付近に針が来なければならないのに針が少し左に振れていますね。基音側の音程が下がっている事が確認ができます。
念のため上段・波動側の「レ」もチェックしましょう。写真Bをご覧ください。波動側は少し高めに設定しますので、針が少し右に振れていて問題ありません。このパターンでは、「下段の基音側が金属疲労で音が下がった事により上下の音程差が広がって、トレモロが多くなっていた」という状態になります。
この場合は次項【リードの調律方法】の③【吸音リードの音程を上げる】のイラストを参考に基音側(下段)のリードの先を削って、写真Cのように針が中央にくるように調律しましょう。最後にトレモロを確認してバランスが良ければOKです。

写真A
写真B
写真C


次は吹音リードの調整になります。上記の図4のように、ファソラの音階を吹いた時に「ソ」のトレモロが感じられない状態を想定しています。この場合も「ソ」の上段・下段を吹き分けて確認をしますが、まずは基音側を吹いてチューナーで確認しています。(写真D)チューナーの針が中央にきていますので、基音側の音程は合っていると確認できます。

写真D

今度は波動側の「ソ」をチェックしましょう。写真Eをご覧ください。
波動側は少し高めに(針が右方向)に振れるのが正常ですが、基音側と同じように中央にきています。
このパターンは「上段の波動側が金属疲労で音が下がった事により上下の音程差が無くなり、トレモロが感じられなくなっていた」という状態になります。

写真E

この場合は次項の①【吹音リードの音程を上げる】のイラストを参考に波動側(上段)のリードの先を削って、少しずつトレモロを確認しながら音程を上げていき
ます。
前回の講座でもご説明した通り、複音ハーモニカのモデルや調子、音域によってもトレモロ量は異なりますので、何cent上げるのかは考えずに、合っている両隣「ファ」と「ラ」のトレモロ量に近づけていく作業になります。
少しずつ削っていけば、ちょうど良いトレモロ量になるのですが、調律を初めて最初のうちは音程を上げすぎて、「今度はトレモロが多くなってしまった」などという問題が起こることも多々あります。
そんな時は今度は上げすぎてしまった音程を下げる作業が必要になってきます。

リードの音程を下げる場合はリードの根本をノミで削ります。今回のパターンでは音程をげすぎてしまった吹音ソの根本を削って音程を下げる想定ですので、次項の②【吹音リードの音程を下げる】のイラストを参考に根本を少しずつ削って音程を調整します。
繰り返しますが、少しずつ削り、都度トレモロを確認しながら調整してください。今、文章と図でこの記事を読んでいても分かりづらいと感じると思います。
この工程はページ下のYouTubeでご覧いただけますのでぜひ動画でご確認ください。


【リードの調律方法】

以下に吹音リード、吸音リードそれぞれの音程の上げ方、下げ方のイラストを記載します。このイラストを参考にして調整を行ってください。

リードの調律方法


【最後に】

調整の項目では触れませんでしたが、リードの先を削った場合はバリが発生します。削ったら音を確認する前に必ずリードの先、左右の三方向を軽くヤスってバリを取り除いてください。(下図参照)

バリの取り方


調律の説明はやはり文章では表現するのが難しいですね。
以前は講習会など対面で行うことが多かったのですが、この記事が少しでも皆様のハーモニカライフのお役に立てればと思います。

調律の作業もやはり動画でご覧いただいた方がよりわかると思いますので是非YouTubeチャンネルもご登録ください。


この内容を動画でご覧になりたい方はこちら↓

TOMBO-ism
文章:長井