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失敗事例から学ぶ「良い問いかけ」とは ~情シスの勉強部屋②

情シスの勉強部屋

読書やワークショップを通じて、情シスが「IT技術以外」の様々なビジネススキルを身につけるためにまとめたコンテンツ「情シスの勉強部屋」。初回のテーマは、社内外のプロジェクト推進や新規サービス創出の場面に欠かせない「対話力」「ファシリテーションスキル」にスポットを当ててみます。



1.課題図書「問いのデザイン」

今回は、実際に私が経験した「良くない問いかけ」の実例をあげながら安斎勇樹さん、塩瀬隆之さんが書かれた本書のエッセンスを紹介します。


2. 良くない問いかけ(失敗事例)

私自身は業務上「対話や問いかけ」をする場面が結構あります。しかし正直なところ「うまくいっていないことの方が多い」と感じています。ここでは自分自身の失敗事例を振り返り、学んでいきたいと思います。尚、進捗会議、朝礼でのお決まりの問いかけ(連絡事項はありますか?など)については、創造的な対話は生まれることが少ないため、ここでは触れていません。


▼業務改善の検討会議

例えば、情シスと経理・人事・総務が集まり、業務改善を検討する会議。ここでは問いかけ方により議論が活性したり、逆にシラけたりします。

経理のAさんの課題に対して良い解決策があれば意見を出してください」→全員無言..
(いや、ちょっと考えさせて💦いきなり結論は出ないでしょ)
(あー、そもそも経理の業務自体わからんから、そこ説明して欲しいなあ)

結論を急ぎすぎています。しかも良い答えを導こうとしています。これでは良い結果は得られないようです。誰もが最初から良い解決策など言わない(言えない)ような場では、「意見を引き出す」事が重要ですね。

著者の安斎さんは「問いの設定によって、導かれる答えは変わり得る」と言っています。質問者や主催者は「良い答えを引き出そう」と誘導することも大切ですが、それだけではなく「思考や感情を刺激し、創造的対話のきっかけを作る」ことで質問者も考えていなかった別の角度の意見を引き出すことも忘れてはいけないのです。


▼部門横断ワーキンググループ

基幹システム刷新など、新規システム導入に向けて利用部門を巻き込む際に、情シスが主催者となって「ワーキンググループ」を立ち上げて課題解決や合意形成を行います。特に顔合わせ直後の初期段階では、立場や環境が異なる複数の担当者が集まるため、議論にすらならない事を経験したことはありませんか?。

事務局(推進者):「顧客管理の課題を順番に出して頂きたいのです」
メンバー  :「……….」
→全員無言。それぞれ心の中でこう思ってます。

(A部門)顧客管理の課題って言われても、自分の部門は顧客管理すらしてないから課題なんか思いつかないのよ
(B部門)ウチの部門の顧客管理は問題なし。だって顧客からのリピート注文多いし、売り上げも順調なんだけど
(C部門)何をするために課題出しをするのかを先に話して欲しいのよ。

実はこれ私がやってしまった実例です。いきなり指名されて集まった部門長やリーダーの方々に向けて、「創造的な対話」を導くためのプロセスである「思考と感情を揺さぶる」「個人の認識を内省する」「新たな枠割を受容する」「共通の意味付けを探りながら新たな関係性を構築する」をすっとばしていたのです。具体的には「まず話しやすいテーマで問いかける」や「全員が共感するような事例や考え方を共有する」といったステップを踏むことが議論を活性化させるポイントであると考えます。自分の場合、ワーキンググループの最初の数か月は「問いと対話の繰り返しによる新しい関係性の構築」をすべきだったと今更ながら反省。


▼新規ITサービスの企画会議

アイデア出しを自由に出しながらも最後にはそれを一つの方向性に導きまとめていくこのです。問いかけの良し悪しが、アイデアの質に直結してしまいサービスの採用の可否が決まってしまう事があります。

情シス部門のある会議での一コマ
対話型AIを活用した「問い合わせチャットサービス」を営業部門に提案することになった。機能と運用ルールについて自由にアイデアを出してくれ!

メンバーから出た意見
(ChatGPTを使えはいいと思います。なんでそんな事考える必要ある?
(他社事例を参考にアジャイルで作りながら仕様を決めれば?早く作ろう
そもそも営業部門は何に困っているかの調査分析からじゃない?)

→意見は出るがレベルや視点の高さがバラバラ…
→本質的な議論から大きく外れた個人的な感想やネガティブ発言が連発!
これも最近の事例。今年の春からデジタルを活用した新規サービスを検討するワークショップを立ち上げ運営し始めたところですが、問いかけの仕方が良くなかった時などは、集まったアイデアや意見をどうまとめたら良いか決めるのに苦労します。0から1を作り上げる過程において、ファシリテータや進行役は、その場が創造的な対話の場になるようなきっかけ作りをし、良いアウトプットが生まれるように導いてあげることが重要だと考えます。


3. まとめ

問いから生まれる創造的対話を増やそう

本書では「問い」によって生まれるコミュニケーションを以下の4つに分類しています。

  1. 討論:異なる2つの立場のどちらが正しいかを決める

  2. 議論:合意形成や意思決定のための話し合い、意見交換

  3. 対話:自由な雰囲気のなかで理解を深め、意味付けをする

  4. 雑談:自由な雰囲気のなかでの気軽な情報交換

本書はこの中の「対話」にフォーカスしていますが、それは「対話」だけが、①個人や組織が持つ固定化された認識(固定観念やものの見方)と②固定化された関係性(上司と部下、先輩と後輩、経営者と従業員)を揺さぶることができるからであると述べています。

なるほど。対話は討論や議論とは目的が異なることに気付きますね。
ご自身が仕事で経験するコミュニケーションの形を整理した時に、
1,2,4(討論/議論/雑談)が多く「3.対話」をする機会が少ない方(さらには報告や連絡が多い方)は、コミュニケーションのやり方を変えてみてはいかがでしょう?問いかけから始まる創造的対話の時間を増やすことで、上手く進まなかったプロジェクトが良い方向に進むかもしれませんね。



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