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「うまくいかない」社員主体のワーキンググループを見直す6つのポイント

部門間の連携を事業に活かしたい、社内の知見を体系化したい、若手が育つ風土をつくりたい、そんな会社の文化形成やコミュニケーション施策を行う際に、部門を横断した社員主体の「ワーキンググループ」が立ち上がることは多いです。

会社によってワーキンググループ、タスクフォース、委員会...など様々な呼び名が使われますが「社員が活動の主体となり推進する集まり」で、取り扱う課題の緊急度や好みによって使い分けがされているみたいです。

ただこのワーキンググループ。立ち上げたものの、エース社員に負担が偏り現場を疲弊させてしまったり、活動の目的が曖昧で議論が定まらずに遅々として進まなかったり、話し合いばかりを重ね何も動かない、動いたはいいが経営の期待とはずれている...などなど。「なんか、うまくいかない!」のが実情ではないかと思います。

今回は実際にワーキンググループに参加したり、立ち上げをサポートする中で見えてきた「機能するための条件」を、過去の失敗した反省をもとに考えてみました。

①:目標がある

目標や行動が明確な通常業務とは異なり、ワーキンググループはその目指す目標地点が曖昧になりがちです。部門横断で集まれば意見や利害が対立することもあります。そのため、この集まりは何のために存在してる?何のために活動する?どんな変化を生み出したい?については、グループの方針や目標として考えておきたいです。

すべてを立ち上げ時点で決めきる必要はありませんが「横の連携を生み出し、事業開発スピードをアップする」「会社を現場から元気にする」など大きな方針だけ共有をした上で、3年、1年、数カ月先の目標設定はグループメンバーに委ねるのもいいでしょう。

②:役割がある

ワーキンググループの活動は通常業務以外の時間で行われるため、誰が何を担うかの役割も曖昧になりがちです。「交流会をやろう!」「事例共有をやろう!」と施策が決まっても「で、誰が手配する?」と動く人が現れず活動が前に進まなかったり、渋々手を挙げる人が毎回偏ってしまう、という状況にもなりがちです。

部門横断のため多くの部署から人を募ろうと一気にグループメンバーを増やした結果、会議にだけ参加して意見も言わないフリーライダーが量産され、活動する人に対して何もしない人の割合が多くなり、活動的なメンバーの気持ちを削いでしまうこともあります。

初期は4−5人程度のメンバーで立ち上げ、責任者(リーダー)、議事録、連絡調整役、A施策担当、B施策担当のように、全員が何かしらの役割を担う状態で進行するのが良さそうです。

③:余白が残されている

すべてが経営陣や部課長によって決められた状態であれば、活動への主体性は引き出しづらく、やらされ仕事になりがちです。自分たちの創意工夫や決める余地が残されていてこそ、おもしろさや通常業務では体験できない「学び」の機会にもなるはずです。

先の目標設定のように大きな方針は共有した上で、時期ごとの到達目標は主体的に設定してもらうように「創意工夫や決める余地」が残されているかもポイントです。

④:活動時間、予算、権限がある

ワーキンググループに部署メンバーが参加することは、部署内の上司や同僚にとっては「1人不在になる」ことへの負担が少なからずあります。そのため「また課外活動か...」と迷惑そうに思われることも少なくありません。

「会社やチームのため」と思って参加している活動に対してまわりからの配慮や敬意が感じられなければ、次第にワーキンググループ活動の優先順位は下がっていきます。

そのため、全社が該当部署管理者への丁寧な説明による活動への理解と、通常業務に支障をきたさないよう、予め予定を抑えるような調整は欠かせません。

また「部門横断したアイデアブレストをやりたい!」という施策決定一つとっても、予算策定とその意思決定に、上司、部長、役員、社長...と決済を仰ぐようであれば動きも鈍く「結局は会社のいいなりだよね」と白けさせてしまうこともあります。もちろん、影響が大きいものについては判断を仰ぐ必要はありますが、活動目標を達成するために、グループ内で活用できる予算と権限を与えず、すべてを上へ上へとお伺いを立てて行うようであれば、いつまでたっても「社員主体」の取り組みにはなりづらいでしょう。

⑤:活動と組織/事業成長が接続されている

無事に立ち上がり、活動も継続、イベントには社員も多数参加していて盛り上がっている...と順調に見えても、その活動自体を経営陣がよく思っていないという状況をたまに耳にします。お話を聞くと「ただ従業員が楽しい活動になっていないか」と言うのです。

部活のような福利厚生的な位置づけであれば、「楽しい」ことが目的の一つですので問題はないはず。ただ、組織課題を解決し、組織や事業を強くする機会の一つとして「ワーキンググループ」を位置づけているのであれば、活動による変化が事業成果へも繋がっているかが問われます。

...といっても、経営陣からの要望を100%受け取ってしまうと業務的になりすぎ白けてしまうため、非常に塩梅が難しいポイントなのですが...。

社員主体で推し進めるが故に、次第に現場の参加しやすさ、楽しさを優先してしまうことはあるため、半年や1年に1回は当初の目的目標に立ち返って活動を振り返る機会を取り、修正を重ねていくことは欠かせません。

⑥:感謝される

ワーキンググループの難所の一つが「活動の継続」だと思います。業務外で取り組むため忙しさに追われると活動が停滞し休眠状態に...という状態もたくさん見聞きしてきました。

活動の継続や「自分もやりたい!」と手のあがる環境をつくるために出来ることの一つに、経営陣や周囲から「感謝」があります。ただ感謝の形として金銭的報酬を与えてしまうと周囲の反感を買う恐れもあります。感謝はお金よりも、活動が成功した際のお祝い打ち上げランチや記念品がよさそうです。

以前参画していたワーキンググループでは、活動が一段落したタイミングで経営陣とのランチ会が開かれました。改めてこの活動への経営者としての思いや業務の合間を縫って貢献したことへの感謝が語られました。直接時間を取って感謝を伝えられると嬉しくなりますし、活動期間を通した学びや成長を実感することができました。

同じ轍を踏まないように「機能する条件」を抑えたいところですが、自発的な運営を損なわないためにも、経営陣や会社としての強制力には絶妙な塩梅が必要になります。その際に参考になるのが、コンカー社の組織改革をまとめた「最高の働きがいの創り方」。

わずかなミスで、悪い文化は澄んだ水に墨を落とすように広がっていく

と言うほど組織文化を丁寧に扱った施策の数々、社員へ任せるときは大胆に委ねるその姿勢が「誰も信頼できない」ほどの最悪の状態を脱し、社員の働きがいと事業成長の両立を実現しています。

部署を横断した取り組みで、現場から変化を起こしていく。そんな期待をされながらも運用が難しい社員主体のワーキンググループは、一度立ち上げや運用に失敗したまま放置すると「どうせ何も変わらない」「また立ち上がったよ...」と悲壮感や諦めムードとして強く組織メンバーへと後遺症のように学習されてしまいます。

新しくはじめるとき、活動をリスタートするときは、条件が揃っているか?のチェックリストとして活用してみてください。

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