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自分の話

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第64話 自分の話-後ろを通るモノ

第64話 自分の話-後ろを通るモノ

書き続けると、見るようになる。

実話怪談には、そんな都市伝説がある。

このジャンルの巨匠、平山夢明さんや福澤徹三さんなども、そのようなことを書いておられる。
見るだけではすまない、とも。

以前にも告白したが、ぼくは今まで一度も、「見る」という体験をしたことがない。
そのため、書くことによる怪異との接触には、少し期待するところがあった。

拙作「ききがき」をアップする時間帯はバラバラだが、ライ

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第43話 自分の話-掘り出す

第43話 自分の話-掘り出す

どこかで見た怪談に、タイムカプセルの話があった。

久しぶりに同窓会で出会った友人と、「昔埋めたタイムカプセルを掘り出しに行こう」という話になる、というもの。

記憶にある場所を掘ってみると、出てきたのは、当時、行方不明になった少年の白骨死体。

「思い返してみると、そもそもタイムカプセルを埋めたことなどなかった」

後に友人と、そう確認し合った、というオチがある。

この話を妻にしてみたところ、

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第31話 自分の話-割れる

第31話 自分の話-割れる

もうずいぶん昔の話になる。

祖父の一周忌 ガラスの鉢が割れた。

供物を入れるため、仏壇に置いていた大鉢だった。
そのときは、リンゴやミカンなどの果物が入れてあった。

一周忌の朝、法事の準備をしていた祖母が見つけた。

鉢は、床に落ちていたわけではない。
ただ置いてあったその場所で、真っ二つに割れていた。

「おじいちゃん、なにか言いたいことがあるのかねぇ」

法事にやってきた僧侶に事情を話し

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第26話 自分の話-連れて行く

第26話 自分の話-連れて行く

大伯母が亡くなった時、庭の鯉が全滅した。

大阪市内にある古い大きな屋敷。
庭には石組みの大きな池があり、いつも数10匹の鯉が群れ泳いでいた。

大伯母が亡くなった日の翌朝、通夜の準備に訪れた親戚が、池の水面を覆う鯉の死骸を見つけた。

「伯母さんが連れて行ったんやろね」

葬儀の日、そんな話が出たのを覚えている。

大伯母には子供がなく、家を継ぐ人がいなかった。

この話を妻にすると、彼女の親戚

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第6話 自分の話-手振り地蔵

第6話 自分の話-手振り地蔵

霊を見たことはない。

怖い話が好きで、人に出会うと、つい体験を訊ねてしまうのだが、ぼく自身は、生まれてこの方、一度も不思議なものなど見たことがない。

そんなぼくが学生時代に体験したことを話してみたい。

男子大学生というのは、バカなことが大好きな生き物だ。
ギャンブルと女性が好きで、さらにバカが極まると、肝試しなんかも大好きだったりする。

真夏のことである。
ぼくは友人4人と、中古の小型車に

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