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第26話 自分の話-連れて行く

大伯母が亡くなった時、庭の鯉が全滅した。

大阪市内にある古い大きな屋敷。
庭には石組みの大きな池があり、いつも数10匹の鯉が群れ泳いでいた。

大伯母が亡くなった日の翌朝、通夜の準備に訪れた親戚が、池の水面を覆う鯉の死骸を見つけた。

「伯母さんが連れて行ったんやろね」

葬儀の日、そんな話が出たのを覚えている。

大伯母には子供がなく、家を継ぐ人がいなかった。


この話を妻にすると、彼女の親戚でも似たようなことがあったという。

妻の祖父が亡くなった時のことだ。
その夜、水槽で飼われていた金魚が全滅した。

夜の間に、水槽から飛び出し、床の上で死に絶えていたのだ。

「部屋の鏡も割れてた」


死に際して誰かを連れて行く、という話はよく聞く。
魚程度であれば……と思う。
それ以上を死者が望んだ時には、何が起きるのだろう?

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