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[幻聴ラヂヲ]ウソは寄生虫[Black SF]

 今日も聞こえてきたどこかの星の怪電波……

 まず、ちょっとだけ予習……

「遺伝子」について深い洞察をした研究者は、同時に「意味の遺伝子」についても興味深い説を唱えました。ある種の言葉、フレーズ、概念は遺伝子のように人に宿り、メディアやカリスマを介して受け継がれると。
 もちろん両者には違いもあるわけですが、似て異なる二つを比較することで、遺伝子への理解も深まるということのようです。
 というのも、遺伝子というのは単なる物質ではないからです。設計図であり暗号であり、おそらく多重に情報を持っています。「意味」という見地からも研究しないと、その実態が見えないのです。

 若い頃に、そんな話を聞きかじっていたものですから、今回の一見、荒唐無稽な話にもうなづける部分がありました。

 さて、ここからがヨソの星のお話。

「ウソ」は「ゾンビ化寄生虫」のようなものだ!

 たとえば、「この戦いには正当性がある」と信じた場合、人は人を殺戮します。我が子を兵隊として送り出します。同族だって戦争に協力しなければ攻撃します。やってることは「鬼」の所業。

 しかし、戦いの中には正義や大義のない単なる残虐行為もあります。思い違いや、ごく一部の利益のために起こされてきた戦争もあるわけです。その場合、戦いに参加した人たちは騙されて犯罪に加担したことになります。

 これはすさまじく大変なことで、「騙されたんだから、仕方がなかった」では済みません。それこそ精神が破壊されかねないレベルの苦痛を伴います。良心的な人ほど衝撃をまともに喰らう。
 ところが、生命が脅かされるほどの危機になると、本能的な防御が働くようで、意味のスリ替えが行われます。簡単に云えば、「この戦争は、やはり正しかった」と思い直すのです。批判する連中が工作員であり、批判の根拠が捏造だと解釈する。そうして真実から目を逸らす……。

 その星の学者は、そのようなメカニズムを指して「ウソ」は「ゾンビ化寄生虫」のようなものだと語っていました。「ウソ」をいったん信じてしまうと、その「ウソ」を排除出来なくなり、その「ウソ」の云いなりになるからです。
 戦争をはじめた集団は戦争を続ける。勝った場合の方が反省されにくい。その戦争が「ウソ」という「寄生虫」によるものだった場合、「寄生虫」は延々と「戦争」に駆り立てる。まるで「敵」の血を吸うように。

 戦争を例に出しましたが、この「寄生虫」にはさまざまな亜種が存在します。
 信仰も例外ではありません。信じた対象が「神」ではなく実は「邪神」だったというケース。その場合、はじめの頃は周囲から忠告されるはずです。ところが、考え直したり、脱会するストレスに耐えかねて、むしろその教団を一層、頼る人もいる。いわゆる「カルト」です。時には反社会的となります。自分たちが正しく、世間が間違っていると思えばそうなってしまう。

 ただ、一般論として語るのは容易ですが、現実の個々のケースがどうなのかという判断は容易ではありません。
 また神聖伝では、大多数の民衆が救世主の磔を要求したというのですから。少数派が間違っているという法則もありません。

 経済活動、ビジネスにおいても誘惑的で相手を中毒化させるビジネスは数多くあります。アルコール、菓子(砂糖)、ギャンブル、風俗等々、適量であれば何ら問題はないと云いますが、いずれも人を惑わせるチカラがかなり強力で、常に一定の被害者が出ています。
 合法的であっても、ドラッグと同様の原理を使ったビジネスは多く存在するのです。あの手この手で、ともかくいったん味を覚えさせれば、あとは貢ぎ続けてくれるわけですから、やめられないんでしょうね。そう、売る側もまた抜けられない。自分たちは何も悪くないという寄生虫にとりつかれていますから。
 そして、もし仮にそれらを規制しようという話が出てくれば、中毒者と「寄生」されている人たちが一緒になって反対する。

 ここまでの話なら、まあそういうことはあるかもしれないが、自分には関係がない、自分は騙されないと思う人が多いかも知れませんが、その星では、今、ある薬が義務化されようとしています。
 大規模な流行病の時に、多くの人が使ったタイプの薬なんですが、相当の被害が出たにもかかわらず、より強力な新薬を義務化しようとしているのだとか。
 しかし、多くの人はそれに反対しない。その薬によって流行病の拡大が抑制されたとか、重症化が防げたいう説をいまだに信じているから。事実がどうだったかは、関知しない

 この異様な事態に対して、ある研究者はその薬の中に、思考力を低下させる成分もあったという仮説を立て研究結果も発表しているそうですが、今日話していた学者は、このように推測していました。

「ウソ」は「ゾンビ化寄生虫」のようなもので、
いったん取り憑かれると、ずっと支配され続ける

.

 もっとも世の中、「寄生虫は健康にいい」と唱える人もいるので、大局的に見れば、すべてはうまくいってるのかもしれません。
 本当に人口が過剰だったりすれば、人口を減らす薬は「自然摂理」を思わせます。その場合は、その薬を製造したり、義務化させようとしている者たちのほうが、ガイアの使徒!? 難しいですね。

 この星は? どうなんでしょう…… どう思われますか?



見出し画像は、hamahouseさんのご作品。
ありがとうございました。


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