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[暮らしっ句] どんぐり1[俳句鑑賞]

回想編

 洗濯の渦に団栗 見え隠れ  伊藤憲子

 家族の誰かのポケットに入っていたのでしょう。事実としては、それだけ。でも、それを捨てずに手にとると……
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 手の中に 団栗といふ 故郷かな  伊藤憲子

 一粒のどんぐりから、故郷が、あの頃が蘇る……
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 放課後は どんぐり山へ直走り  徳田千鶴子

 どんぐりの落ちる季節には、たくさん落ちている場所をめがけて皆で駆けていったっけ……
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 くるくると まわるどんぐり あきのこま  森下ちさと
 どんぐりを拾ひ集めて 弥次郎兵衛   増田一代
 団栗で作る こほろぎ やさしかり  杉江美枝

 拾ったどんぐりでコマも作ったし弥次郎兵衛も作った。
 もうその頃は、虫が苦手になっていたけれど、兄がどんぐりで拵えくれたコオロギは長く棚に飾っていた。今も実家のどこかに残っているかな。
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 どんぐりの降る村 どこか童話めく  保坂加津夫

 いまはもう年寄りばかりの村だけど、どんぐりと一緒に思い返すと夢のような時間だった……。
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 団栗や 小さき仲間は森に住む  米須あや子

 ひろったどんぐりを、わざわざ植えたこともあったっけ。もしその中の一本でも育っていれば、もうすぐ樹齢ン十年、一人前の樹になっているはず。そこまで大きくなれば、もっと生き続けるだろう。あの小さなどんぐりが、わたしのいなくなった後も生きていると思うと、なんだか気が遠くなるが悪い気はしない。
 もしそうなったら、そのどんぐりの樹に恩着せがましく云ってやろう。

あなたが大きくなれたのは私たちが植えたからよ。
だから、あの頃の私たちを あなたのどんぐりとして生まれ変わらせて!

出典 俳誌のサロン 歳時記 どんぐり 団栗
どんぐり
ttp://www.haisi.com/saijiki/donguri1.htm

写真は、oneflavorさんの作品です。ありがとうございました。


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