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子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド

世界には様々な教育法が存在し、その中でも以下の教育法はとりわけ有名です。

●モンテッソーリ教育
●シュタイナー 教育
●レッジョ・エミリア教育 
●サドベリー教育
●フレネ教育
●ドルトンプラン
●イエナプラン

上記のイエナプランには前から興味を持っており、「公教育をイチから考えよう」という本を読んで下のnoteを書きました。

そして今回上記7つの教育法において最も世界で知られ、普及していると思われる「モンテッソーリ教育」について考えてみたく、下の本を読みました。

日本ではあの藤井聡太棋士がモンテッソーリ教育を受けて育ったということで最近脚光を浴びましたが、世界を見るとGoogleの共同創業者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、AmazonのCEOジェフ・ゾベス、Wikipediaを始めたジミー・ウェルズ、Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグ、という世界を変えたアメリカのイノベーターたちをはじめ、アンネ・フランク、バラク・オバマ、ピーター・ドラッカー(経営学者)、ビヨンセやテイラー・スイフトなど、挙げていけば枚挙にいとまがありません。

前述のGoogle創業者のラリー・ペイジに言わせると、

モンテッソーリ・メソッドの効果の源泉は「自律」と「集中」にあり、それによって創造性が育まれる

とのことです。事実、モンテッソーリの教えはGoogleの経営にも取り入れられており、中でも有名なのは「20%ルール」です。社員が勤務時間の20%(つまり週1日)を通常の仕事から離れて自分の一番やりたいことをするというルールで、その中からGmailやGoogle Mapなどのイノベーションが生まれたとも言われています。

セルゲイ・ブリンは「モンテッソーリ教育では、生徒に自由が与えられ、自分のベースで学び、何かを発見することが奨励される」として、「自分の好きなことを追求できるのは、この教育の賜物」と話しています。

上記からもわかる通り、モンテッソーリ教育の本質とは「何をどのように行うかを自分で決める」という点にあります。そして、そこには「自立」(他の助けを借りずに独り立ちすること)ではなく、「自律」(自分の行動を自分の立てた規律によって行う)することが求められています。

このようなモンテッソーリ教育を受けると、下記のような人が育つと言われています。

●多様性を受け入れられる人
●柔軟な発想ができる人
●問題解決能力が備わっている人
●穏やかで優しい人

簡単にまとめてしまうと、モンテッソーリ教育とは子どもの自ら自分を育てる能力を最大限発揮させる環境や教具(おもちゃ)を用いて、生涯学び続ける姿勢を持った自律した人間を育てる教育です。

ここまでお読みいただきお気づきになられたかと思うのですが、このモンテッソーリ教育で育成される人物像とはまさに日本の社会が(いや、世界が)必要としている理想の人材です。個人的には、自分が育てたい人材像とも合致しますし、私の勤務している学校の教育方針(多様性に富んだ教育、自律的学習者の育成など)にも合っているので、モンテッソーリ教育から今実践している教育に取り入れられるところはないかという視点で本書を読みました。

ちなみに、モンテッソーリ教育はイタリアのマリア・モンテッソーリによって確立された教育メソッドですが、彼女は医師であり、子供の観察を通して、身体だけでなく内面の成長をも研究した人物です。彼女の子供への対応は医学的な視点に基づいたものであり、仮説を立て、その結果を常に子供たちの活動の様子に求めました。

生まれてから100年以上が経った教育法が全く色あせることなく、今世界中で実践されている理由は、彼女が教育的観点からだけでなく、医学的な観点から子供の成長を多角的に検証したことに加えて、世界大戦を経験した彼女が世界平和を願い、戦争を克服する手段としてもこのモンテッソーリ教育を確立したからだと思います。彼女は常に、目の前の子供がどんな発達段階にあって、どんな関わりを必要としているのか、そのことに注力して個別に対応をしていくことを考えたのです。この点からも、彼女が目指した理想の教育は普遍的なものだったと言えます。

下記のnoteでも書きましたが、我々は「みんな同じことを、同じペースで、同質性の高い学級の中で、教科ごとの出来合いの答えを、子供たちに一緒に勉強させる」という教育から脱却し、「学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合」を図っていく必要があります。

そのためには、モンテッソーリ教育のような古くて新しい革新的な教育を日本の教育にも取り入れていくべきだと思うのです。

本書によるとモンテッソーリ教育には以下のような三つの基本があるそうです。

①子どもの自主性を最大限サポートする
②生き方の基礎となる体験を提供する
③「敏感期」に基づいたかかわりをする

大人は、子どもを観察し、子供の気持ちに寄り添い、学びの主役は子どもにして、あくまでサポート役に徹することが求められます。また、自主性を最大限サポートするために、他の人と比べず、否定から入らずに子供を丸ごと肯定し、さらには子どもが興味を持っていることを一緒に探求する姿勢も求められます。

また、モンテッソーリ教育では子どもの自主性に任せていろいろなことをチャレンジさせますが、当然その分子どもは多くの失敗をします。ただ、このtirial and error(試行錯誤)を幼少期に多く経験することによって、失敗を恐れずに挑戦する態度や失敗してもおれない心(レジリエンス)を育むことができます。

私は現代の教育において、教師はもはや”Teacher”の役割だけでなく、1対1で生徒を導く”Coach”、そして集団の力を最大限引き出していく”Facilitator"の役割も担っていると思っています。

このモンテッソーリ教育においても教師の役割は「子供が自分でできるように」環境を整えながら、見守る存在であり、極めて控えめな存在と言えます。

以下本書に書いてあるモンテッソーリ教師の12の心得です。

1 環境に心を配りなさい。
2 教具や物の取り扱い方を明快に正確にしめしなさい。
3 子どもが環境との交流を持ちはじめるまでは積極的に、交流を持ちはじめたら消極的になりなさい。
4 探し物をしている子どもや、助けの必要な子どもの努力を見逃さないよう、子どもを観察しなさい。
5 呼ばれた所へは、駆け寄り、交歓しなさい。
6 招かれたら、耳を傾け、よく聞いてあげなさい。
7 子どもの仕事(活動)を尊重しなさい。質問したり、中断したりしないように。
8 子どものまちがいを直接的に訂正しないように。
9 休息している子どもや他人の仕事を見ている子どもを尊重しなさい。
仕事を無理強いしないように。
10 仕事を拒否する子ども、理解していない子ども、まちがっている子どもには、たゆまず仕事への誘いかけを続けなさい。
11 教師を探し求める子どもには、そばにいることを感じさせ、感づいている子どもには隠れるようにしなさい。
12 仕事が済んで、快く力を出しきった子どもには、精神的な魂の静けさをおくりながら現れなさい。

というわけで、モンテッソーリ教育がいかに普遍的で、日本の教育現場に必要かということを述べてきましたが、ここまでの内容は基本的に3~6歳の幼児期の子供に対するものです。モンテッソーリ教育を実施している幼稚園や保育園は多く存在しますが、小学校になると日本では3校しか存在しないようです。(欧米では幼少期から大学まで幅広く普及しているようです)中学高校の中等教育になるとほとんど存在しないと思われますが、前述のとおり今の時代にとってこの教育メソッドは21世紀で生きていくスキルを獲得するにあたって必要不可欠なものだと感じます。ですので、今後時間をかけながら自分の生徒たちに対して実践をしていき、そしてできるだけ多くの教育者に発信していきたいと思います。

以下参考文献です。本書を読まなくても、これを読めば大体モンテッソーリ教育について理解できます。

また、こちらもなかなか興味深いです。欧米の文化と日本の文化の違いは顕著なので、モンテッソーリ教育に不向きな部分もあるのは至極当然だとも思います。ただ、世界はグローバル化し、我々もグローバルスタンダードの中で生きていかなければいけないので、教育もグローバル化しなければいけないと信じています。


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