同乗者

助手席には痩せこけた男

後部座席には髪の長い女と

蒼白い顔の子供

助手席の男が口を開いた

「いい車だな」

髪の長い女が相づちをうつ

「本当にいい車だねえ」

俺は謙遜して応える

「いや、それほどでも」

子供がはしゃいだ声で言う

「おじちゃん運転上手だね」

俺は黙って首をすくめた

「あそこの角で下ろしてもらおうか」

痩せた男の言葉に俺はふっと息をつく

そして静かに車を路肩に寄せ

ブレーキを踏んだ

「ありがとな」

「また乗せてねサンキュー」

「おじちゃんバイバイ」

口々に礼を言う三人に会釈し

俺は静かに車を発進させた

三人の姿が

ルームミラーから消えた事を確認し

俺はアクセルを踏み込んだ

生まれて初めて

幽霊を見た

しかも三人も

今度からこの道を通るのはやめよう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?