突然私の娘が消えた

どこを探しても娘の姿はない

途方に暮れた私は妻に電話を入れた

「あなた何言ってるの?」

妻は私たち夫婦に娘はいないと言った

そんなはずは無い

私には・・・という名前の

名前・・・

名前・・・

咄嗟に娘の名前が出てこない

いや、絶対にいたはずだ

スマホに一緒に写した写真があるはず・・・

どこにもない

もう一度妻に電話を入れる

「お掛けになった番号は現在使われておりません」

いったいどうなっているんだ

私は急いで家に戻った

家に・・・

家に・・・

確かこのあたりに私の家が・・・

どこにもない

こんなはずはない

私は一旦会社に電話を入れた

「お掛けになった・・・」

会社さえも無くなったというのか

おかしい

何かが絶対的におかしい

誰に連絡しよう

私はスマホの電話帳を開いた

0件

たった今、電話帳から妻と会社に電話したのに

私はもう一度スマホを見た

スマホ・・・

スマホ・・・

スマホなんてどこにもない

私は呆然と街角に立ち尽くした

街角・・・

街角・・・

街どころか何もない

木や森や山や川そして地面さえ

そしてすべてを思い出した

私は宇宙空間に浮かぶ小さな意識

あるはずのない

偽りの記憶が今日も私を誘う

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