無人島

乗っていた船が嵐で沈没した

俺は木切れにしがみつき

三日間海を漂った

俺の他に生存者の姿はない

やっと流れ着いた無人島

周囲一キロほどの小さな島

俺は三日間かけて島中を探索した

人が訪れた形跡さえ一切ない

完璧な無人島

綺麗な水の涌き出る泉と

不思議な味のキノコが

俺の命を救った

そして一ヶ月が過ぎた

さらに一ヶ月

俺は一日の大半を

海と空を見て過ごした

開けた場所に石を集めて

SOSの文字も作った

だが船や飛行機は通るが

俺の合図に

気付いてはくれる者はなかった

俺は毎日キノコを食べ続けた

キノコは次から次へと

食べきれないほど生えてきた

そして月日は流れた

ある朝、ベッドの中で俺は目覚めた

そこは俺のアパートだった

夢だったのか?

それにしても長くリアルな夢

だが夢で良かった

涙が俺の頬をつたった

喉がカラカラに渇いていた

俺は冷蔵庫の扉を開いた

だがそこには

たくさんのキノコが

俺を嘲笑うように並んでいた

俺は長い時間をかけて家を建て

流れ着いた冷蔵庫やベッド

そんなものを拾って来ては

自分のアパートの部屋を再現した

夢じゃなかった

今日もまた

無人島の一日が始まる


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