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自己認識の4タイプ+自己認識を育む方法

コンテンツの概要

「自分の事は自分が一番よく分かっている」このような言葉があるように、ほとんどの人は自己認識ができいると信じて疑いません。しかし、しっかりと自己認識ができている人はまれな存在なのです。

こちらのコンテンツでは、自己認識とは実際に何なのか、そして、自己認識を育成するためには何が必要かについて焦点を当てた大規模な調査に基づいて説明を致します。

調査と研究によって具体的には、
・内側と外側の自己認識
・経験と力は自己認識を妨げる
・内省は自己認識を高めるとは限らない
上記の事がわかりました。


これらのポイントを理解すれば、「自分自身をより明確に見る」事を学ぶのに役立ちます。

自己認識力を向上させる理由

近年、「自己認識」はビジネス用語として流行になったようですが、それには正当な理由があります。

ノースカロライナ大学の研究

によれば、自己認識のレベルが上がると、自信が持てるようになり、クリエイティビティが上昇し、嘘をついたり、騙したり、盗んだりする可能性も低くなるという研究結果があります。

それ以外にも、教育心理学者のポールA.シュッツ、心理学教授のクライブ・フレッチャー、職業心理学者のアンナ・サットンによるレポートによれば、自己認識によって健全な判断力が養われる事や、高いパフォーマンスを発揮する事、効果的なコミュニケーション能力の向上がみられる事がわかっています。

心理学者バーナード・モリス・バスの研究

によれば、自己認識のできる人は、企業でも高い収益性を持ち、優れたリーダーであり、より昇進の可能性を高め、優秀な人材となるという事も、化学者のアーサー・ハーバート・チャーチらによる研究と併せて論じられています。

他にも調べると、膨大な量の研究や調査結果がありますが、「自己認識とは何か?」「自己認識の育みかた」のレクチャーを進める上で割愛させていただきます。

内側と外側の自己認識

過去50年間、研究者は自己認識を様々な形で定義してきました。

例えば、「自身の内なる世界を監視する能力」として見る研究者もいれば、「自己意識の一時的な状態」とする研究者もいます。

自己認識を向上させる方法に焦点を当てる前に、これらの調査結果をまとめて、包括的な定義を作成する必要がありました。

研究全体の調査を進めていくと、2つの自己認識のカテゴリーが出現しました。

内部の自己認識

これは、自身の価値観、情熱、願望、環境への適合、反応(思考、感情、行動、強み、弱みを含む)、そして自分から他者への影響をいかに明確に見ているかを表しています。

内部の自己認識は、仕事とコミュニケーションの満足度、個人的および社会的な自己コントロール、および幸福に関連している事を発見しました。これは、不安、ストレス、うつ病に対して否定的な作用として関連しています。

外部の自己認識

これは、他者が自分をどのように見ているかを理解する事を意味しています。

「他者が自分をどのように見ているのか」を理解している人は、他人の視点を得る事により共感力が熟練しています。

例えば、自分自身をメンバーとして見ているリーダーは、メンバーと良い関係を保ち、より満足し、組織に対して効果的であるという傾向があります。

ある一面の意識が高いという事は、他の面の意識も高いと仮定するのは簡単です。しかし研究では、それらの間にはほとんど関係がない事がわかりました。

その結果、4つの自己認識タイプを特定しました。

4つの自己認識タイプ

上の図は、外部の自己認識(他者が自分をどのように見ているかをどれだけ理解しているか)に対して、内部の自己認識(自分が自分の事をどれだけ知っているか)をマッピングしたものです。

内・外の自己認識に関しては、一方が長けていると、他方よりもその自己認識を大切にするというところが魅力になります。

しかし、優秀な人は自分自身をはっきりと見る事、他者が自分をどのように見ているかを理解するためにフィードバックを得る事の両方に対して、積極的に取り組む必要があります。

内・外の自己認識ができている人は、自己認識全体のバランスをとることに集中をしています。

要するに、自己認識は1つだけではないという事です。それは内・外2つの異なる競合した視点の微妙なバランスなのです。

経験と力は自己認識を妨げる

研究は社会通念に反して、人が経験から学ぶとは限らない事、専門知識は誤った情報を根絶するのに役立たない事、自分をその道のエキスパートとして見る事は、情報の偏りによる弊害を起こす危険がある事などを示しています。

そして、経験が私たちのパフォーマンスに対する自信過剰につながる可能性があるように、自己認識についても自信過剰にさせる可能性があります。

例えば、コロンビア大学とアリゾナ州立大学の研究では、経験豊富な責任者は、経験の浅い責任者と比較して、リーダーシップの有効性を評価する精度が低いことがわかりました。

同様に組織では、リーダーが持つ力が大きいほど、メンバーは自分のスキルや能力を過大評価する可能性が高くなります。

様々な業界の3,600人以上のリーダーを対象としたDr.ファビオ・サラの研究では、下位レベルのリーダーと比較して、上位レベルのリーダーは自分のスキルを(他の人の認識と比較して)過大評価している事がわかりました。

自己認識できている人は10%-15%

この現象については、2つのポイントがあります。

・シニアリーダーに対しては、率直なフィードバックを提供できる他者が少ない。

・リーダーは力が強いほど、他者のキャリアを傷つける事を恐れ、他者に対して建設的なフィードバックをする事に不快感を示す。

デンバー大学のジェームズ・オトゥール教授は、「リーダーは力が高まるにつれ、スタッフよりも多くの事を知っていると思い込むか、フィードバックを求める事にコストがかかるため、聞く意欲が縮小する」と述べていますが、もちろんそうである必要はありません。

ある分析では、リーダーシップの有効性の360度レビューで、上司、同僚、従業員、取締役会などから評価された最も成功したリーダーは、頻繁に批判的なフィードバックを求める事によって、エキスパートの悪い思い込みと、意見を聞く意欲の縮小に対抗できるという事が示されました。

リーダーは頻繁に批判的なフィードバックを求める事によって自己認識的になり、他者からより良い人材として見なされるようになるのです。

また、友好的な他者からのフィードバックを求める事によって、外部の自己認識が改善したというケースもある事がわかりました。

最善のメリットを念頭に置いて、真実を聞き入れる事をいとわない人は、他者の意見に過剰反応したり、過剰修正しないように、難易度の高いフィードバックや驚くべきフィードバックをチェックしているのです。

内省は自己認識を高めるとは限らない

内省(自分自身の思考、感情、行動の原因を調べる行為)は、自己認識を向上させると考える人は多いはずです。

しかし、研究の最も驚くべき調査結果の1つは、内省する人々は自己認識が低く、仕事の満足度と幸福度が低いという事です。

「内省しても効果がない」という事ではなく、ほとんどの人が間違って内省をおこなっているのです。

これを理解するために、最も一般的な内省的質問に「なぜ?」というものがあります。

自分の感情に…
「なぜ私はBさんよりもAさんが好きなの?」

自分の行動に…
「なぜ私はあの時○○したのだろう?」

自分の態度に…
「なぜ私はあの人のアイデアに反対してしまったのかな?」

人は自分を理解しようとするときに「なぜ?」と、自分に尋ねます。しかし、「なぜ?」は驚くほど効果のない自己認識の質問です。

研究では、無意識での思考、感情、動機の多くにアクセスする事はできないという結果が出ています。

そして、思考も含む意識的な行動の中の無意識には多くの情報が含まれているので、自分で真実だと感じた事でも間違っている事があるのです。

例えば、責任者のAさんが異常な行動を起こして顧客とトラブルになったとします。

Aさんの異常行動の本当の理由が重度の低血糖だったとしても、責任者への昇進を狙ってるBさんからすれば「Aさんはトラブルを起こした、責任者としては不適合だ」と、Aさんの起こしたトラブルのみに飛びつくかもしれません。

この例えを記載した理由は、自分に「なぜ?」と尋ねる事が問題なのは、人は自分がどれだけ間違っているかではなく、人間の心が合理的な方法で機能する事も滅多になく、私たちの判断が偏見から解放される事もまた少ないという事をお伝えしたかったからです。

私たちは、事象に対して適切さや価値などを疑う事なく、瞬間的に見つけた「見通し」に飛びつく傾向があり、矛盾する証拠を無視し、自分の考えを事象の説明に結びつけてしまうという事なのです。

間違えた内省をする人

人は、特に望ましくない結果を説明しようとするとき、「なぜ?」と尋ねますが、もう一つの研究結果は、その行為が非生産的でネガティブな考えを誘発するループをつくるという事です。

研究では、内省的な人もそのループパターンにハマる可能性が高い事がわかりました。

例えば、顧客から悪い評価を受けたスタッフが、「なぜ私はそのような悪い評価を受けたのですか?」と尋ねてきた場合、そのスタッフは自分の長所と短所の合理的な評価ではなく、恐怖、欠点、もしくは不安に焦点を当てた評価に着地する可能性があります。

このため、頻繁に自己分析をする人は、より落ち込んで不安になり、永遠と未来のこない不幸を体験する事になるのです。

では、正しい内省的な質問とは、どのようなものなのでしょうか。

研究チームは、自己認識力の高い人の内省的な質問には明確なパターンがある事を、膨大なデータの中で発見しました。

彼らは「なぜ?(Why?)」という言葉の使用回数は150回未満でしたが、「何?(What?)」という言葉の使用回数が1,000回以上だったのです。

「なぜ?(Why?)」と「何?(What?)」には明確な違いがあります。

「なぜ?(Why?)」は理由を尋ねる疑問詞でありネガティブなループを想起させる言葉ですが、「何?(What?)」は動詞や前置詞の目的語にあたるものを尋ねたり、主語にあたるものを尋ねる時に使うもので、客観的に未来に焦点を当て、新たな洞察に基づいて行動する指針となるポジティブな言葉です。

これにより自己認識力の高い人は、生産的な自己洞察を高めます。

非生産的なループを減らすためには、理由ではなく、目的やメインになる事、解決策などを尋ねるべきなのです。

例えば、職場での質問で
「なぜ私にこのような事を言うのですか?」
と尋ねるのなら、
「より良い仕事をするために取るべき行動は何ですか?」と尋ねるべきです。

「なぜ?」は過去の非生産的なパターンに焦点を当て、「何?」は未来の解決策に移行する質問である事は心理学者J.グレゴリー・ヒクソンとウィリアム・スワンらの研究により明らかになっています。

一応にはなるのですが、「なぜ?と自分に尋ね考えることは、自分のことを全く考えないよりはましかもしれない…」それくらいのレベルという事でした。

結論として

内部と外部、両方の自己認識を構築する事に焦点を当て、友好的な批評家から正直なフィードバックを求め、自分自身をより明確に見る事を学ぶ人は、自己知識の持つ多くの宝を手にする事ができます。

そして、どんなに進歩をしても、学ぶべき事は常にあります。それは、自己認識への旅をとてもエキサイティングにするものの1つなのです。

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