見出し画像

突然ショートショート「壁に少々らっきょう」/毎週ショートショートnote

 山奥にある、小綺麗なレストラン。そこにやってきた老紳士のクレームから、事は始まった。
 「おい。壁に少々らっきょうが付いているから、取ってくれ」

 「え…?らっきょう?」応対したウェイトレスは首を傾げた。
 「そうだ。ここにらっきょうが少々付いている。不快でたまらん」
 「申し訳ありません!すぐにお取りいたします」彼女はハキハキと返した。

 彼女は、再びらっきょうを見つめて、レジの方へと向かい、防犯用のさすまたを取り出した。
 さすまたの先端にのりを塗りつけ、老紳士の元へと向かう。

 「えい!」らっきょうはくっつき、うまく取れた。
 「ありがとう」
 「…対応料金は3万円です」
 「は?」

 「金を出せってんだよこのジジイ!」ウェイトレスは豹変し、さすまたを老紳士の方へ突きだした。
 「な、なんだお前は…」
 「ちょっと、何やってるの」店長はかんかんに怒っていた。

 彼女の正体は、新手の強盗だった。
 こうした手法で金を奪い、その度にご用になる、懲りない悪女だったのである。

(終)(413文字)


マガジン


参加企画


100作目に寄せて

 ここまで読んでくれる人、果たしているのかな…と思いつつ。
 なんとこの『突然ショートショート』として書いた作品が、これで100作となりました。
 どうでしょう。ジブンを象徴するシリーズになれてますかね。
 いつも読んでくれる皆さんに感謝です。

 久しぶりに、企画不参加の回をあげてみようかなとか思っています。お楽しみに。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?