ショートショート作品集「四季のトラック」
まえがき
昔撮った写真を見返してみると、こんなのが出てきました。
クリスマスシーズンに出せなかったのが惜しいです。
2022年8月12日、場所は神戸の京橋パーキングエリア。赤・白・緑のトリコロールで塗り分けた、クリスマスカラーのトラックを収めた一枚です。
パーキングエリア内に観光バスがいなかったので、代わりにトラックを撮っていた模様。
保有するのは物流をメイン事業に据えるセンコーグループの地域系列会社・「南大阪センコー運輸整備」で、同グループはその大体がこんなクリスマスカラーに塗られている印象があります。
さて、そんなクリスマスカラーのトラックから話を伸ばして、こんな作品が生まれました。
四季の中のトラックによる、小さな物語です。
春のトラック
春のトラックが、桜の咲く坂道を駆け上がってきた。
細い路地までもが爽やかでポカポカとした陽気に包まれる。
春のトラックが、小さな家の前に停まった。
「お届け物でーす」
運転手が渡した小包の中には、桜の花びらを使った髪飾りが入っていた。
「ママ、行ってくるね」
髪飾りをつけた少女は、家を出て学校に向かっていく。
髪飾りは彼女が卒業式で使うためのものだった。
(了)(171文字)
夏のトラック
夏のトラックが、海辺の道路を疾走していた。
この辺りは夏になれば、海水浴客で賑わいをみせる。そんな活気にあふれた町のコンビニに、トラックは停まった。
「ちわーっ、納品に来ました!」
冷蔵対応になっている夏のトラックからは、キンキンに冷えたソフトドリンクの山が運ばれてきた。
「ごくろうさんです!」
ソフトドリンクは陳列ケースに詰め込まれると、活気にあふれた客に一時の清涼を届けるのだった。
(了)(189文字)
秋のトラック
秋のトラックが、商店街の中を進んでいた。
この商店街はいつでも賑わっているが、トラックはその中の個人商店に停まった。
「お届け物です」
小包には『画材セット』の文字。
「太郎、画材セットが来てるよ!」
「マジ!?」少年がドタドタと降りてきて、ウキウキしながら小包をもらっていった。
少年はセットを使い、すぐに絵を描き始めた。彼の夢が動き始めた。
(了)(166文字)
冬のトラック
冬のトラックが、雪の山道を進んでいた。
人っ子一人いない山道を、安全第一で進むトラックには、まるで仙人のような風格が漂っていた。
やがて、トラックは村の小さな家に着いた。
「ご注文の品物をお届けに上がりました!」
「ありがとう、いつも助かるわ」
中身はネットスーパーの食料品や日用品であった。
雪深く買い物に行けない村人の命は、こうして繋がれるのだ。
(了)(169文字)
あとがき
「クリスマスカラーのトラック」から、「四季のトラック」へ。
4つの季節それぞれに詰まった物語を、トラックを通じて表現してみました。
同時に、物語の原点は実に日常のあちこちに転がっているんだな、と感じることができました。
ジブンのモットー「毎日にもっとときめきを」に通じる所もあります。
…え?「クリスマスのトラック」?
それは…また機会があれば、の話にします。
マガジン
こちらもぜひ見てください。ジブンの既作です。好評連載中(宣伝するな
(参考)外部リンク
(回し者じゃありません)
(事実上の)きっかけとなった「南大阪センコー運輸整備」のホームページ。「クリスマスカラーのトラック」が出てくる上、PVも流れます。
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