自由性と形式性(発展編2)

精神史では文化的有機物は自由性と形式性の構造の上で分析が行われる。日本の詩の歴史も自由化と形式化の繰り返しであるとしばしば言われる。だが、従来の精神史における自由と形式の相互関係は政治哲学を志向し国家との関係を重視していたが、芸術作品の真の価値を否定してしまう傾向があった。従来の精神史における文化的有機物の理解は常識に従ったとしても解釈学的循環という自己撞着に陥り、意味や人間的価値を否定させられ、作品を単なる妥協の産物と捉えるだけで、常識にすら至っていなかったのである。文化的有機物には従来の精神史では自由も形式も否定させられていたのであった。従来の文化的有機物の精神史的分析は近代の政治哲学という理論的観点に文化的有機物を回収するための思考の道具だったのであり、そのような志向性は人間に快楽や癒しや夢を与え人間の精神生活の拠り所となる芸術の本来の機能の否定になってしまうだろう。従来の精神史による芸術作品の分析では、作品は片端からぺしゃんこになり駄目になってしまう。

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