学校警備員をしていた頃 その44

 以前、学校警備の仕事をしてた頃のことについて振り返って思い出せることを書いています。
※ 最初から読みたい方は、学校警備員をしていた頃から読むことをおすすめします。
※ ひとつ前の話→学校警備員をしていた頃 その43

 「頭がいいんですね」
 ある日、O中学の ロッカー・ルームで先生と話をする機会があった。中背で少しやせていての30代くらいに見える先生だった(ロッカー・ルームで話をしたのだから、男性の先生に決まっている)。
筒美「先生はなんの先生ですか」
A先生「数学です」
筒美「頭がいいんですね」
A先生「数学と答えるといつもそう言われます」
 A先生はうんざりしているようだった。
筒美「数学と言われて頭がいい、じゃ何も考えてないみたいですね。英語だと英会話がぺらぺらとか体育だとスポーツマンとか、どんな教科でも、それぞれ、月並みすぎて感心できない言い方があります。頭がいいなんていわれると嫌ですか」
A先生「嫌ということはないです」
筒美「数学の先生だと、囲碁や将棋の強い人が多いイメージがありますが…」
A先生「私は囲碁も将棋も全然やりません」
筒美「やれば強くなれるけど、やる人とやらない人がいるということでしょうか」
A先生「さあ。どうでしょうか」
 こんなやりとりだった。
 A先生は、おだやかな人柄で、思ったことをそのまま淡々と話すという感じだった。
 その時の会話を振り返ってみると、「頭がいいというのはあまり言わない方がいいのかな」とも思えてくるが、なんとも言えないような気もする。「それでは何を言えばいいのか」となると、なかなか難しく、今だによくわからない。

 別の日にやはりロッカー・ルームで、別の先生と話をする機会があった。大柄で少しふっくらした体型で、いつもニコニコしている人だった。
筒美「先生は何の先生ですか」
B先生「何と言われても何を答えるのでしょうか。教科ですか。学年ですか」
筒美「教科です」
B先生「理科です」
筒美「私は昔、算数・国語・理科・社会すべて一人で教えるという塾で教えていたんですが、理科が一番教えるのが難しかった。算数は自分の受験時代得意だったし、国語・社会は、大学受験の時、文系だったので何とかなったけど、理科を教えるのがどうも苦手でした」
B「確かにそういう場合だったら、そういう人も多いかもしれませんね。中学の理科は、実験でできたものを最後に生徒が食べることができるとか、やってみるとけっこう面白いけど、塾で全教科教えている中で理科も教えるというのはなかなかきついかもしれない」
 こんなやりとりだった。

 A先生とのやりとりよりは、こっちの話の進め方の方がいいのだろうか。「頭がいい」なんていう月並みな表現よりは自分の体験が出てくるので、相手も入りやすいかもしれない。が、いちがいにどっちがどうとは言えないようにも思う。50歩100歩というところだろうか。
 自分が学校の先生だった頃は、先生同士で話をするのは別にどうってことなかったけど、先生でなくなってみると、学校の先生と話をするのは意外と難しいものだと思う。人間は、立場によって変わるものなのだろう。
 まあ、「無理に話をする必要はない」というのも一つの考え方ではあるのだが。

※ 次の話→学校警備員をしていた頃 その45

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