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全ての縁は会話から始まる

明礬温泉は湯治場の風情が残る別府でも人気の温泉地だ。その明礬温泉の温泉街から分け入った山中に、「鍋山の湯」「へびん湯」「鶴の湯」という3つの野湯がある。僕は別府の街を散策した後、温泉の妖精(そう呼ばれている温泉が大好きな友人)と一緒に「鶴の湯」を目指した。

時間帯によっては人もほとんどいない秘湯だが、最近では真夜中に遠方から入りにくる人も多くなった。真っ暗闇の中、満天の星空を見ながら入る自然の中の温泉は確かに格別だし、鶴の湯は泉質も非常に良い。

その日は温泉を管理している地元の方達が温泉の補修工事を行っていた。見た目は無骨でも、心根は優しく面白い人達ばかりだ。野湯の温泉は季節によって温度が違うという話や、「鍋山の湯」へ行く途中の山道で起こった事件の話、ヨーロッパから来た金髪の綺麗な女性観光客が「私、下の毛が薄いから恥ずかしいの」と言って全裸で同じ湯船に入って来た話など、真面目な話から卑猥な話まで気さくに話してくれた。

人種も年齢も性別も関係なく裸の付き合いが出来るのが温泉の良い所で、それはまさにそのまま別府の良さでもある。温泉に浸かるとあるがままの自分に戻れる気がする。多種多様の人間がいるからこそ生まれるカオス。そのカオスさは様々な価値観や文化が混じり合うことで生まれるもので、それは全て会話からスタートしている。

スマホばかりと会話することが多い現代だが、要はバランスの問題。人と会話することで、もっと人と会話しようと思わされた1日だった。秘湯は別府八湯温泉道のスタンプが押せないので、今回の企画では撮影出来ないが、いつか番外編などで撮影したいと思っている。

さて、次回は温泉の妖精について書いてみようと思う。

2018.2.22 東京神父
別府温泉ルートハチハチ

東京神父 写真家。1978年4月20日生まれ。 別府出身、自由が丘在住。