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167着の服とさよならした話。


ある日、こんなことに気付いた。


自分の服がダサくなっている。


美術大学に在籍する故、
ファッションや身だしなみに力を入れている学生はとても多い。
正直、そこらへんのスナップや雑誌の特集よりも圧倒的におしゃれな人だって全然いる。

でも最近なんか自分の服はとてつもなくダサい。


とてつもなく、だ。

救いようの無いコーディネートに、
トイレで鏡を見ては溜息をつく日さえあった。


まず、世の中には2通りの人がいる。

ファッションを愛し、自分が好きな服を着ている人。
ファッションに興味は無いが、とりあえず申し分のない程度の服を組み合わせている人。

どちらかといえば、自分は圧倒的前者だ。

細かく言うと、圧倒的に前者だった。


最近は、どうも自分が着ている服を好きになれない。


強いて言えば、毎朝服を選ぶことさえ煩わしい。


西東京の僻地に住む私が、南青山に出社するには、6時半に起きないといけない。
そんな中で急ぎながら、
クリエイティブが多い社内で人権を保てる
コーディネートを目指すことは

端的にいってストレスだった。

服選びに30分かける日もあった。
冷静に考えると週に210分月に15時間
服を選ぶことに費やしてることになるのだ。


でも、

昔は

そんな時間が最も幸せ、

と思える人間だったはず。


私がファッションに出会った中学生の頃は、
ファッションブロガーが台頭し始めた頃。

ルミ・ニーリーを筆頭に、キアラ・フェラーニスージ・ロウの更新を
毎日学校帰りに楽しみにしていた。

タヴィ・ケヴィントンなんてティーンとして、ずっと憧れだった。

毎週のご褒美はファッション通信
毎月の楽しみはアメリカから定期購読していた、USVOGUE

リアーナがショートヘアになって肩パッドを再熱させたり、
ララ・ストーンリンジー・ウィクソンのすきっ歯が羨ましく思ったり。


あの頃の気持ちを

切実に取り戻したい、と思った。


素敵なコレクションを見て、
大人になったら仕事を頑張って絶対買えるようになりたい!って考えたり、雑誌に載っていた服は買えないけど、
ファストブランドで似ているものを時間をかけて探したり。

そんな中学生の頃の気持ちを取り戻したい。


ファッションを嫌いになる前に、
これ以上煩わしいと思わないように、

一度、離れてみようと思った。



そして私は、
白い服黒い服だけを残し、
その他の服を全てダンボールに詰めた。

大好きなミレニアルピンクの単色ワンピースも、
つい一週間前に買った jouetiexKANGOL のニットトップスも全部だ。

全部で、167着。
実家の服も数えたら、どれだけの服を持っているんだろう。


自分が納得いかないコーディネートを着るなんて、
もう2度とごめんだ。
ファッションを楽しめる時が戻ってくるまで、

黒と白しか着ないと決めた。


別にミニマリストになりたいわけじゃない、

おしゃれになりたいわけでもない。

ただ、

ファッションが大好きで

コレクションを見ながらわくわくしていた

あの頃の気持ちを取り戻したい。



また、あのピンクのワンピースが着たいと思える日まで。

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