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きっと会社に恋してた
最初は退職するつもりは無かった。何だかんだで日本社会のあるべき論、入社した会社にずっと居続けるのが普通という考え、に染まってたんだと思う。
会社からの評価に納得がいかなくて、自分の市場価値を確かめたいって気持ちはあったけど、就職氷河期のトラウマか面接での自己PRが嫌いなので、転職するほどの気概は無かった。
保守的な会社の制度や、古臭い考え方の経営陣も大嫌いだったが、同じチームの上司・同僚・後輩には恵まれていたし、仕事内容もやりがいがあったので、営業現場は大好きだった。
一体いつになったらフレックス制度が導入されるんだろうね、こんなに会社に貢献しているのに給料全然増えないね、と同期と文句を言いながらも、それなりに楽しく働いていた。
職場への愛着はあったし、自分の働きや頑張りは業績に貢献しているという自負もあった。
だけどマクロ的に見たら、ただのイチ歯車でしかない。ペーパー上は結局ただの事務職社員なのだ。
MBAへ行くと決めた時に、会社は休職しようと思っていた。直属の上司達は皆挑戦を後押ししてくれたし、沢山吸収して大きくなって、また会社に貢献してくれたらいいと言ってくれた。
だけど、人事は休職を承認してくれなかった。
ある日急に部屋に呼ばれて、認められないことが人事決定となった、と一方的に伝えられた。
その前の時点では大丈夫だという話だったから、既に頭金も送金していた。後戻りはもう出来なかった。
それって、会社辞めてくれってことですか?
うんまぁ、そういうことになるかな。
君は要らないよって言われた気がした。今までの努力や貢献って何だったんだって思って泣けた。
まるで、長年の恋人に捨てられたような気分だった。勝手に期待して、この人と結婚すると思い込んで、色々我慢してせっせと世話を焼いてたら、ある日突然他に好きな女が出来たって言われるような。
振り返ると、本当に恥ずかしいくらい勝手に会社に期待してた、勘違いの大馬鹿野郎は私なんだけど。
その後、会社は、自分がやりたいことを叶えるために利用するものだよ、って、尊敬する上司に教えて貰った。
色々染まりすぎて青すぎて危なかったから、まやかしの自己肯定から目が覚めるために、会社を辞めざるを得なかったんだ。中途半端に休職ではなくて退職したおかげで様々な挑戦も出来た。
あの時辞めてよかった、と今なら本当に思う。
次は間違えないように、勝手に期待して甘えないように、自立した社会人になるために。
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