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ピーター・ドイグ展@近美(10/11まで)にいってきました。

今日、世界で最も重要なアーティストのひとりに数えられるピーター・ドイグ。1959年、スコットランド生まれ。中南米のトリニダード・トバゴとカナダで育ち、1990年よりロンドンで活動し始め、2002年よりポート・オブ・スペイン(トリニダード・トバゴ)に活動拠点を移します。

展覧会は、1章:ロンドンでの時代、2章:トリニダード・トバゴ時代、3章:地元の上映会のために描いた映画のポスター、全3章、全72点構成されています。

作品リスト

第1章 森の奥へ 1986〜2002年

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《エコー湖》1998年

パトカーから降りてきた警察官がなにやら湖面を見てます。視線の先には下のカヌーに乗った女性《カヌー=湖》という対になる作品で、ドイグ本人が隣同士に並べて欲しいとリクエストがあった両作品。個人的には、なんかアメリカで50年前に起こった「ゾディアック事件」をなんとなく彷彿させます。湖に止まったパトカーがミステリアスさを演出しています。

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《カヌー=湖》1997-98年

何かの事件を連想をさせ、湖上では生死を彷徨っている感じの女性がカヌーに乗ってます。映画「13日の金曜日」のラストシーンに触発された作品のようですが、自分的には、ドラマ「ツインピークス」の世界観を思い出しました。画面全体から、女性の肌まで緑色、絵の具の溶け具合からいって、ドイグ本人もムンクからインスパイアされた言っている通り、なんかムンクっぽいです。

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《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》2000-02年

これはポスターのメインビジュアルにも使われている本展覧会の目玉作品。遠くにはオーロラなのか、まだらな空から視線を落とすとカラフルな柄の壁を施した歩道がダムの上に続いている。その歩道の入り口に立つアンリ・ルソー的画風な二人。星空がそのまま延長されているような地面と星空、そして、左右のぼんやり描いた木の描写が、中央のダム湖と中央に立つ二人を強調させているようにも見えます。

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《コンクリート・キャビンII》1992年

手前の樹木越しに見える白い建物の構図。建物はル・コルビュジエのユニテ・ダビタシオンという集合住宅。手前の樹木をぼかし、奥の建物にフォーカスを当てる手法は、一つ上の《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》と同様の効果を与えています。

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《ロードハウス》1991年

上の2作と同様、きっちり描かいた層と抽象化された層で、絵にメリハリをつけてます。3色の配色がまたいいです。片田舎を切り取ったノスタルジックを感じさせる場面設定も含め、ドイグの絵画で一番好きかもしれません。

第2章 海辺で 2002年〜

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《ラペイルーズの壁》2004年

ピンクの日傘を刺した男性が堤防沿いを歩いていく昼下がり。よーく見ると傘には穴があいていて、この男性はピンクの傘を刺して歩くと行動で、地元でも有名なようです。画面半分を占めるうっすらと水彩画のような空、堤防が続いている構図は、なんとなく、エドワード・ホッパーを思い出します。ノスタルジックと言うワードでは、こちらも好きな絵です。

第3章 スタジオの中でーコミュニティとしてのスタジオフィルムクラブ 2003年〜

友人のアーティスト、チェ・ラブレスと2003年より始めたスタジオフィルムクラブという映画の上映会。地元向けの小規模な上映会で、独自の視点で映画のポスターを手掛けています。50年以上前の作品から最近までの映画や、邦画なんかも取り上げていて、渋いチョイスになっています。

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《熱いトタン屋根の猫》2011年

1958年のアメリカ映画。中央の描かれたエリザベステーラー。背景の赤系と肌の黄色のコントラストがいいです。タイトルの「熱いトタン屋根の猫」は意味深ですが、気になったら調べてみてください。

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《AMY エイミー》2015年

2015年のイギリス映画。エイミー・ワインハウスの横顔が印象的です。全体的にアウトライン以外は淡い色彩で表示されていて、なにかエイミーの心情が伺いしれるようです。

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《気狂いピエロ》2004年

1965年のフランス・イタリア合作映画。ジャン=ポール・ベルモンドと
アンナ・カリーナ主演のヌーヴェルヴァーグを代表する作品。アンナの幸せそうな表情が、古きよき時代を感じさせます。

まとめ

館内を歩いている時に、この後どういう展開が待ち受けているかのワクワク感は、バスキア展の時に似ていたような気がします。全体的な印象としては、ミステリアス、ノスタルジック的なワードを連想する展覧会でした。大きめの作品であること、日時指定制であることから、比較的にゆったりめには鑑賞できるかと思います。ちなみに全作品撮影可能です。

皆さまのお気持ちは、チケット代、図録代とさせていただきます。