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2021年よかった展覧会・絵画

2021年は、113回、美術館とギャラリーに行きました。

-内訳-
・78回有料イベント(美術館系)、25回無料イベント(ギャラリー系)
・ぐるっとパス12館使用(3冊ほど購入)
・インスタアップ40回
・図録購入30冊

ということで、パンデミックで県間移動が制限されている期間が長い中、後半に盛り上げてよくまわったなと思いつつ、2021年を振り返ります。

よかったの定義(去年同様)
ときめくか、ワクワクするか、没入感があるか。また、絵(作品)単体としては、グッときたものはよかった絵としてピックアップしました。

よかった展覧会11選

イラストレーター 安西水丸展@世田谷文学館

2021年は和田誠や、ピーター・シス、ソール・スタインバーグなどイラストレーター系の展覧会が多かったような気がしました。その中で安西水丸を選んだのは好きだからです。元祖脱力系のイラストも、べたってした配色もいいですし、主張がないところに主張があるそんな奥ゆかしい彼の絵がたくさん見られて、世田谷文学館さんありがとうございましたって感じです。

森村泰昌 M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話@アーティゾン美術館

ちゃんと展覧会で見たのは原美術館以来2回目。今回も森村泰昌なりの再昇華というか、リスペクトというか「海の幸」をモチーフにしたなりきり作品のこだわりようもすごいのですが、最後の展示のスピーチというか演説というか、今回も動画もインパクトがありました。今回も青木繁に捧げる言葉をまるで弔辞のように軽妙な大阪弁で語ってるところがよいです。このしゃべりを入れてこそ森村泰昌の作品は完結するのだと思いました。

鴨居玲展-Camoyの生きざま-@笠間日動美術館

おそらく、展覧会をやったら自動的にランクインする鴨居玲。今回はお膝元の笠間日動美術館での展示。聞くところによると、そばにもっておきたい作品が笠間に集まるようで、文字通り粒揃いの作品が並んでました。都内で開催されたら、日指定券争奪必須の展覧会でした。今回もサブタイ通り、鴨居玲の生きざまが手に取れる、まさに命を削って描いているような作品が並んでました。負けないように気合いを入れてみないといけない展覧会です。

マーク・マンダース —マーク・マンダースの不在@東京都現代美術館

金沢21世紀で展開されていた準巡回展です。 石像の朽ち果てたシズル感はすごいですね。この手の作風はいかにぽく見せるかがポイントだと思ってます。それで言うとこの展示は、ギリシャ神殿の近くにあっても違和感ない作品ナンバーワンです。 このような作品がいくつもあり、圧倒されました。 パンデミックのために、作者がこれなかったようでついたタイトル「マークマンダースの不在」というのも素敵。ちなみに、会期後に返還せずにしばらく常設展示してあった時のタイトルが「マークマンダースの保管」というのもナイスなネーミング。

「ストーリーはいつも不完全……」「色を想像する」ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展@東京オペラシティ アートギャラリー

ギャラリー所蔵の寺田コレクションを毎回楽しみにしているのですが、今回は、そのコレクションをガンダー先生が粋な演出で見せてくれました。もともとは「ライアン・ガンダーの個展」を開く予定だったのですが、パンダミックのおかげで、所蔵品展になったそう。モノクロ作品を集めた「色を想像する」。懐中電灯を片手にまわる「ストーリーはいつも不完全」。特に、懐中電灯でまわる環境で、好きな相笠昌義さんがたくさん見られて幸せでした。ちなみに、延期になった「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」は2022年に開催が予定されています。

渡辺省亭―欧米を魅了した花鳥画―@東京藝術大学大学美術館、佐野美術館

2018年に没後100年をきっかけに、ブレイクした渡辺省亭の本格的な回顧展。自分は茎や枝の描きかたフェチではあるのですが、この省亭の絵はドストライク。入門後3年は書道しかやらせてもらえなかったのが、功を奏した筆さばきが秀逸。抜きの茎の絵と動物のメリハリ。特に写実的な鳥がかわいいです。この作風に張ることができるのは酒井抱一くらいかなと思っております。緊急事態宣言のために途中閉幕、後期が見れずに三島まで自分も巡回しました。

テート美術館所蔵 コンスタブル展@三菱一号館美術館

巨匠ターナーの裏に隠れつつ、少し地味なジョン・コンスタブルなイメージながら、ブリティッシュ好きの自分にはマストの展覧会でした。会場前半はもっさりとして、風景より肖像画の方がいいじゃんと思い始めた後半あたりから解像度がグーンと高くった風景画が登場してきます、4Kレベルのキレッキレの風景画が並んでました。噂のターナーとの対決した作品も展示してあり、圧巻でした。コンスタブルここにありっていう感じの展覧会でした。

WHO IS BANKSY? バンクシーって誰?展@寺田倉庫G1ビル

現代アートでは、日本でも大人気の覆面アーティスト、バンクシーの展覧会。普通の展覧会と違うところは作品がストリートアートであるというところ。本物のキャンバス作品もあるのですが、ストリート作品は会場のセットで再現されています。出身のブリストルの坂道を再現したり、ロンドン市街の電話ボックス、ガザ地区の廃墟に描かれた大きな子猫など、天王洲の倉庫という会場との相性もよく、没入感が高い展示に。すごいところは作品以外の吸殻や缶などの小道具に至るまでの美術スタッフの力の入れ具合が半端なく、これって作品なのって思える小道具も少なくなかったです。作品一つひとつにそれぞれメッセージが存在し、そこを含めてのアートなんだなと思いつつ、作品を満喫してきました。会場入り口では1時間以上の長い列ができていたようで、2021年の最も話題になった展覧会の一つでした。

コレクター福富太郎の眼@東京ステーションギャラリー

日本画の展覧会で、時々お見受けする福富太郎コレクション資料室のクレジット。まとめて見たいなと思っていたところ、やっとその時がきました。前半は、鏑木清方から日本画の美人画の展示、自分的には前半がハイライトでした。渡辺省亭、鰭崎英朋、池田輝方、池田蕉園、松本華羊、伊東深水など美人画が続き、眼福タイムを過ごせました。美人画のコレクションしか知らなかった自分的には、後半は洋画家から戦争画とコレクションの幅広さにも少し驚きました。

筆魂 線の引力・色の魔力 ―又兵衛から北斎・国芳まで―@すみだ北斎美術館

この美術館のいままでの印象として、北斎の絵をとっかえひっかえと展示していて、「版画」という解像度が少し低い作品を展示というイメージだったのですが、今回は少し違いました、解像度の高い「肉筆画」です。版画も頑張ってはいると思うのですが、やはり肉筆にはかないません。今回は、その肉筆が120点、岩佐又兵衛あたりから、喜多川歌麿、鳥文斎栄之、東洲斎写楽、もちろん葛飾北斎も展示していました。北斎の師匠でもあった勝川春章の美人画もドキドキしちゃうほどいい作品でした。上方の祇園井特の黒目がちな絵も印象に残りました。総合的に見ても、粒が揃ったいい展示でした。

福田美蘭展 千葉市美コレクション遊覧@千葉市美術館

「ドラえもん展」、「モネ それからの100年」とそれぞれでキラリと光る絵が気になっていた福田美蘭の回顧展。福田美蘭風解釈で、古典を中心に日本画をパロってます。菱川師宣の見返り美人図を分割しての動き、2021年にあった国際スポーツイベントを裏モチーフに使った月岡芳年のけむそう、葛飾北斎の神奈川沖浪裏が裏に反転されてたり、鰻重の松竹梅を重ねた松竹梅図、曾我蕭白の虎渓三笑図に実際に虎の絵を忍ばせたり、鈴木其一の芒野図屏風では靄(もや)を3Dアートで表現とバリエーション幅が多すぎです。元の絵と比較しながらの展示は、日本画が充実している千葉市美術館ならでは企画かと思いました。

予想のおさらい

ちなみに、見といた方がよい展覧会10選のうち田中一村以外は無事にいけました。10選中6展覧会が今回の行ってよかったに入ってました。

よかった絵8選

沖綾乃《マリア・アンヌ・フィッツハーバート》

和製エゴンシーレと呼ばれる沖綾乃。絵は完成度だけではないんだな、訴えかけてくる、アピールしてくるという見方としては、2021年に見た絵で最も印象に残った絵でした。

レッサー・ユリィ 《赤い絨毯》

アート界の流行語大賞があれば間違いなく大賞に選ばれているであろうレッサー・ユリィ。おそらく、この方の作品は初めてだったのですが、いいですね。展覧会には4点きていましたが、気に入ったのはこの「赤い絨毯」。ハーグ派のヨゼフ・イスラエルスを、少しアーバンぽくしたような感じで、他の絵もどれも秀逸でした。

小早川秋聲《愷陣》

展覧会チラシにも使われたこの花で飾ってもらっている馬の絵。「凱旋した兵士は、手厚く迎えられるのに対し、戦地で共に戦った馬は、そのまま野に放たれてしまう。見かねた村民が馬も着飾ってあげる」というエピソードをもとに描かれた作品。馬の表情といい、着飾った花などの描写が細かいです。

三島喜美代《作品 A-21》

陶器に絵柄を転写して表現しています。こんなSNS映えする作品を作ったのは、御年89歳になる三島喜美代。「この紙屑なんだけど、実は陶器なんだよね」って人に説明する人の心を鷲掴みにします。

出水ぽすか《ここにいる街》

「約束のネバーランド」の作画を担当している出水ぽすか。2021年はシャネルネクサスホールで、シャネルとコラボした展覧会も記憶に新しいですが、これは、漫画「もしも東京」という展覧会で発表された中の1枚。自動販売機に見立てた建物の中に、それぞれのライフスタイルが凝縮されていて、こういう細かい作品は大好物です。

杉山有希子《CRASH CA 03》

アート作品って説明を聞かないとわからないものですね。この朽ちた飛行船の写真は、破棄された飛行機や宇宙船を撮影している杉山有希子の作品。会場で本人が説明されているのを聞いていて、どういう作品だか分わかりました。そう言われてみると見方が少し違ってきます。なかなか撮影に苦労が多かったようです。

群鶴図屛風《曾我蕭白》

奇想の画家の一人にも数えられる曾我蕭白。ミネアポリス美術館展での1点ですが、奇想というと風変わりとか、変わっているという印象がありますが、このように、普通の作品も描いてます。右隻では親鶴が、子どもになにやら教えていたり微笑ましいです。蕭白のこういう絵が好きです。

左隻
右隻

まちゅまゆ《創世記》

東京アートフェアでの1枚。気付く人はうすうす気付くかもしれませんが、ヒエロニムス・ボスから影響を受けているらしく、ひとつひとつの作画が丁寧、かつ細かく描かれています。ドーム型の小さい世界、それよりさらに大きい世界があり不思議な動物が小さい世界を伺ってます。かなり大きい絵でしたが、もし買うならこういう絵が欲しいなと思いました。

ちなみに2020年の振り返りです。2022年も行きたい展覧会が中止にならないように願っております・・。


皆さまのお気持ちは、チケット代、図録代とさせていただきます。