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大正から昭和に活躍した挿絵画家の描いた雪岱美人。

小村雪岱(こむらせったい)は、明治生まれ、大正から昭和まで活躍した日本画家、版画家、挿絵画家、装幀家。雪岱の画業をめぐる展覧会が、日比谷の千代田区立日比谷図書文化館(会期終了)、日本橋の三井記念美術館(4月18日まで)で開催されてます(ました)。画像多めで、感想と解説をつらつらと。

千代田区立日比谷図書文化館(会期終了)

三井記念美術館(4月18日まで)

装幀画、挿絵

雪岱16歳の時に、日本画家の荒木寛畝に入門。東京美術学校入学後、下村観山教室で、古画の模写、風俗考証を学ぶ。27歳の時に、文豪・泉鏡花から抜擢され、『日本橋』の装幀を手掛け、商業画家をスタートさせました。9つ年上だった鏑木清方と並んで、多くの泉鏡花本の装幀を担当。今回展示されていた表紙、見返しのような単体でも、美術品として成立し、後世に残る完成度の高い仕上がりになっています。『愛染集』や、『粧蝶集』のように奥行きの抜け感がいいです。

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『由縁文庫』泉鏡花 1916年【日比谷】

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『愛染集』泉鏡花 1916年【三井】

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『粧蝶集』泉鏡花 1917年【日比谷】

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『日本橋』(縮刷本)泉鏡花 1918年【日比谷】

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『鴛鴦帳』泉鏡花 1918年【日比谷】

泉鏡花以外の装幀も手掛けますが、時代は大正から昭和。同時期に活躍した杉浦非水、恩地孝四郎、橋口五葉、津田青楓らと比べると古き時代を引継ぎつつ、かつシンプルで現代にも通じるブックデザインのような気がしました。

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『まとひ女房』邦枝完二 1934年【日比谷】

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『綺堂探偵集』岡本綺堂 1939年、『綺堂異妖集』岡本綺堂 1939年、『綺堂読物集』岡本綺堂 1939年【日比谷】

装幀本の代表作が、泉鏡花の作品群とするなら、挿絵の代表作はこの邦枝完二作の『おせん』。『おせん 縁側』は女性のしなりといい、華奢なボディラインといい、このあたりが『昭和の春信』とも称される所以か。三井記念に同時に展示されている春信と比較すると、雪岱の方は単色ということ、削ぎ落とした装飾あたりが東京モダンって感じがします。少しつり目の女性が雪岱の描く女性の特徴となり、雪岱美人と言われるようになります(勝手に言いました)。

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『おせん 縁側』 1941年

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『おせん 雨』 1941年

上の絵と下の絵だとぱっと見一緒に見えますが、見比べると傘の配置、人物が微妙に違っています。上の絵は、新聞掲載したものを描き改め、国画院展に出展した作品。傘だらけながら構図の中にも、ストーリーを忠実に表現、右下に去っていく黒頭巾姿のおせん。ちなみに新聞掲載版では、左下におせんらしき黒頭巾姿が見ることができます。

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『おせん』邦枝完二 掲載紙【日比谷】

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下絵【日比谷】

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下絵【日比谷】

肉筆・木版画

三井での見どころは、肉筆画と木版画。こちらの方が雪岱美人は堪能できるかもしれません。《A Beaty》では紅葉を、《櫻》では桜を愛でる女性が描かれてます。装飾も最低限で情景を表現してます。

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《A Beaty》1935年 木版多色刷【三井】

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《櫻》1934年 絹本着色【三井】

団扇

『月に美人』では左上に三日月、《蛍》では蛍、《河岸》では蝶を描いて、小さい画角の中で、しっかり江戸の女性の粋な姿が表現されてます。この団扇はわかもと製薬が顧客贈呈用に制作した『美人十態』の一部と好評で、さらに追加された団扇画。日比谷には団扇の現物、三井の方にはその原画を元にした複製版画が展示されていました。

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わかもと本舗『月に美人』1939年【日比谷】

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《蛍》 1942年【日比谷】

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《河岸》 1942年【三井】

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《春雨》 1943年【三井】

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《涼味》 1940年【三井】

資生堂意匠部時代

あとこの人は資生堂の意匠部に5年ほどデザイナーとして在籍してます。パッケージデザインの他、資生堂の独自のタイポグラフィ「資生堂書体」のデザイン設計にも関わっていて、このころの雪岱のデザイン思想が今の資生堂のブランディングにも引き継がれているのかなと思ったりしました。

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『新化粧1』1932年【日比谷】

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『新化粧1』1932年【日比谷】

まとめ

川越市立美術館で行われた回顧展以来、フェイバリットな画家でしたが、今回都内で大々的にやってもらえて感激ひとしおでした。大正モダンのデザイナーと言うより、江戸時代から受け継がれてきたスタイルを昇華させた感じで、三井の展覧会のサブタイトルにもある通り、『江戸の粋から東京モダンへ』がしっくりくる展示構成でした。

参考文献:
余白の詩学/小村雪岱と資生堂

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