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DAZNの練習試合中継でさえ熱くなる!

僕は多趣味ではない。限られた趣味の中で、とことん遊びたいタイプだ。

最近、日本の近代化に対する疑念などが湧く中で、めっきり人気がなくなった丸山真男という政治学者がどこかで言っていたことの影響だ。

「自分の領域を狭く絞り込んで、それを深く掘り下げればすべてに通じる」というようなことをどこかで書いていたのだ。

ともすれば、気まぐれに、食い散らかす性癖が強いので、むしろ、自分を抑制するために、常に、この言葉を思い出すことにしていた。

その結果、僕に残ったのは、本を読むことだった。

しかし本を読むということに絞り込んだだけでは、自分の領域を絞り込むことにはつながらない。本を読むという行為だけでも、無限の広がりがあるからだ。

しかし読むということが僕の生活スタイルの根本にあるというのは事実だ。

敢えて言えば、何か読みたい対象を観に行ったり、体験したりしているところがある。

新しい領域の仕事に取り組む時に、最初にするのは、昔なら、本屋に行くことだった。最近は、本屋に行くという行為の前に、検索をし、キンドルでサンプルを読んで、そして気に入ったら買って読むというデジタル電光石火な状況だ。

一時期は金融分野の本を読み漁り、その分野の仕事にかかわることが多かったが、金融分野の本を読むのに飽きた頃には、金融関連の仕事も少なくなった。仕事のために本を読んでいるというよりは、面白い読書ができる分野の仕事をしてきたというのが実感だ。

その後、テクノロジー、医療、スポーツと読みたい分野は広がり続けて、今の自分がいる。

行動的な妻が、在宅奨励の世の中にあきたのか、今までに行ったことのない場所の桜を見に行こうと言い出した。どこで調べたのか、荒川沿いの千本桜がいいらしいという。

昨日は、読むこと以外で、数少ない趣味の一つであるサッカー観戦ができる日だった。

応援しているコンサドーレ札幌と鹿島アントラーズの鹿島スタジアムでの無観客の練習試合をDAZNが11時から配信予定だった。


朝食後、早速出かけた。

桜はまだまだだった。でも広々とした小松川公園や、荒川沿いの長い散歩道を温かい陽光とほどよい風に吹かれながら歩くのはとても爽快だった。


桜は千本とはいかなかったが、そぞろ歩く途中で、せっかちに咲き誇るものもあったが、多くは、まだ眠ったままだった。でもそのまばらな感じが、ウィルスに翻弄される世の中を対岸に見て、のんびりとしたい僕たちにはぴったりだった。


久しぶりに、マスクを外して、大きく深呼吸をしてみた。

歩いている途中に荒川ロックゲートという看板が見えた。まばらな散歩道の途中に軽く人だかりがあった。看板の説明を眺めると、並列して流れる、旧中川と荒川という水位の違う川の間を行き来できるようにする仕組みらしい。ちょうどその開門のタイミングを見物人が待っているところに通りかかったわけだ。ラッキーというほどのことではないが、軽い僥倖を楽しみながら、開門を待った。でも水位はさほど差がないようで、開門後にも、驚くような水流の変化があるわけでもなかった。

でも気まぐれに歩くだけでも、何かを知ることができる。

荒川沿いを歩くと、街と川を分ける堤防のような土地の高さに驚かされる。ゲリラ豪雨で荒川の水位が上がった時の恐怖というものを想像した。


とかくぶらぶらするうちに、練習試合の時間が近づいてきた。

試合前に、自宅のテレビの前にたどり着くのは難しそうなので、帰りは、バスや地下鉄を経由で若干遠回りして帰ることにした。

乗り物の中で、DAZNを開くためだ。

サッカーファンとは言っても、毎度、グラウンドに応援に駆け付けるような熱狂的なファンではない。近くで開催されるアウェイの試合には、ゴール裏に駆けつけて、Chantを試合中歌い続ける程度である。

実際、球場に駆けつけると、応援の熱狂は味わえるのだが、実際の試合は、よく見えないことが多い。結局、試合の状況は、家に帰ってからDAZNでじっくりと観ることになる。でも選手と一体になる雰囲気を味わえるというのは、なにものにも代えがたいものがある。

今年は、開幕戦でのアウェイ観戦は、昇格した柏に4対2で敗れた。一時期は4対0に離されたのだから、とんでもない初戦だった。後半、攻撃をあきらめない札幌が2点を取ったことで、少々、気分は晴れた。しかし今年も、残留というものへの不安感を感じながら、スリリングな応援が始まったと思った。 

ところが、その後、コロナ騒動で、Jリーグは中断された。今のところ4月3日開幕が予定されているが、それもなんともいえない。

Jリーグの中断後、世界のサッカーも続々と中断に追い込まれた。

またサッカーのない週末が始まってしまったのだ。

放映権からの収入があるとしても、札幌のような地方の中規模チームにとってチケット収入は大きい。観客を集めることができないことはスポーツフランチャイズ経営にとっては致命的である。

選手もファンも意気消沈している。

そんな中での練習試合だった。無観客の中でも、選手たちはこれまでの鬱憤をはらすかのように、激しくぶつりかりあった。飢えたサポーターたちのところにも届く試合である。単なる練習試合であるはずもなかった。

選手同士の意地がぶつかりあった。札幌はこれまで、川崎や鹿島のような上位チームには圧倒的に歩が悪い。川崎には勝ったことがないし、鹿島も良くて引き分けだった。ただ鹿島は、多くの生え抜きのスターや、エースの外国人ストライカーを引き抜かれる中で、監督も代わり、チームを組み立てる苦闘の最中である。その一方で、札幌はミシャ・ペトロビッチ監督のサッカーも三年目になり、昨シーズンの中心選手がすべて残留したことで、そのサッカーが熟成してきている。

後半の壮絶な打ち合いで、4対2で札幌が勝った。僕の過去の観戦の記憶の中で鹿島に対する初めての勝利だった。

バスの中や、地下鉄の中や、駅のホームで前半を眺め、ようやく家にたどり着いて、後半を大きな画面でじっくりと観戦した。

気持ちの良い晴天をたっぷり味わいながら、テクノロジーによって、別の場所での観戦ができるということは、やはり進歩なんじゃないかなあ。

サッカー選手たちが、サッカー人生を続けられ、僕たちファンもそれを支えられるような、今とは違った仕組をデジタル技術によって用意できたらいいと思う。






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