盛りだくさんの東部コース、2日目レポート
2日目。宿泊した「tsukaru」の朝ごはんが美味しかったと、大満足のメンバーたち。
ひろみさんは「久っしぶりの一人旅。自分だけの朝ごはんがゆっくり食べられるなんて! ごはんもおかわりしちゃった」と嬉しそう。
さあ、出発しましょう! 一同は木次駅へ。JR木次線をもりあげる「き♡(すき)線つながるプロジェクト」に取り組む島根大学の学生さんたちとご挨拶(鉄道好きな筆者は、ちゃっかり観光案内所で売られている木次線手ぬぐいをゲット。なんと330円、安い……)。
ホームでの立ち話もなんですから、早速車両に乗り込むとしましょう! ここ木次駅から2駅先の下久野(しもくの)駅までの約20分、大学生と共に汽車の旅です。
木次線とは
奥出雲で「たたら製鉄」を営んでいた絲原(いとはら)家によって開通したのが1916年。現在は、島根と広島を結ぶ唯一の路線として運行し続けています。
「き♡線つながるプロジェクト」の験馬香穂さんにお話を聞きました。
「大学生が関わるようになったきっかけは、『雲南コミュニティキャンパス(U.C.C)』です。これは、大学生が雲南市をフィールドに地域の課題解決を目指す取り組み。そのなかで、木次線の活用のお話があったのが最初です。そこから1年間木次線と関わって、プロジェクトは終了ということになったんですが、もうちょっとやりたいなって思って。そこから新入生をメンバーに加えて、大学生と雲南市のダイレクトなプロジェクトとしてスタートしました」
具体的な取り組みとしては、松江駅から汽車に乗って木次線沿線を訪れ、遊び学ぶという学生ツアーを企画。2021年2・3月に開催した第一弾ツアーが好評で、夏も秋も冬もやろう! ということになったんだとか。そのツアーの様子や路線周辺の情報をInstagramでも定期的に発信。メンバーの中には、このプロジェクトを通じて鉄道ファンになり、バイト代を木次線のために使っているツワモノもいるらしい。
あっという間に下久野駅に到着。このあと、木次駅でプロジェクトの発表会があるという大学生たちとは、ここでお別れ。……が、名残惜しい。皆おしゃべりが止まらない。
サンベさんが、今夜の晩ごはんを一緒にどう? というナイスな提案をしてくれ、やっと解散となったのでした。
「ippo」にて、本気の薪割り体験!?
一行は、下久野駅から徒歩3分ほどのところにある「ippo」へ。陶山清男さんが迎えてくれました。ここ「ippo」は週末限定のカフェとして営業をしています。今回は特別に、雲南の暮らしを体験させてもらえることに。
というのも、清男さん(と呼ばせてもらっています)。地域の未来を切り拓く人材を育成するための「幸雲南塾」の卒業生で、ヒトコト旅 in島根の案内人でもあるりなぴと同窓生なんです。
「幸雲南塾では、自分が地域でやってみたいことを語り合うんですが、清男さんは最初から田舎体験や農業体験ができる場所をつくりたいと言ってらして。この場所も今年(2022年)7月にオープンされたばかりなんですよ」(りなぴ談)
清男さんから――。
「地域から学校がなくなってしまって。寂しくなるなと思ってね、なにか地域のひとが元気になることをしたいと考え、はじめました。看板にも書いてありますが、『たのしく! 交流、チャレンジ』ってね。ここは宿泊もできますし、交流の拠点になればいいなと願っています。今日は薪割りと羽釜炊飯をやってもらいます。みんなのお昼ごはんになりますから、責任重大ですよ(笑)」
薪割り体験。斧の扱いに注意をしながら、それぞれに横綱級の薪(丸太です!)と格闘しました。
熱中、おしゃべり……気がつけばこんなに素敵なお昼ごはんが……! 清男さんが、猪鍋をはじめ、おかずをたっぷり用意してくれていました。
「行政の仕事をしていたんですけど、去年退職してね。やっと好きなことをしていますよ。田んぼや畑で採れた米や野菜を料理して、皆に食べてもらうのも好きだしね。なにより肩こりがなくなったんですよ」
お昼ごはん。ほっぺたを落としながらごはんをいただいていると、清男さんが話してくれました。
清男さんの同級生や先輩の中にはよそで暮らし、家がなくなってしまったひともいる。この場所ができたことで、同窓会や喜寿(77歳!)の集まりのときに来て泊まれるのが嬉しい、という声もあるそうです。
のんびりゆったり……清男さんのお人柄がそのままにじみ出たような時間を過ごし、メンバーはすっかり清男さんのファンに。「次は宿泊します!」とか「自転車で来ます!」とそれぞれ言い残し、「ippo」を後にしました。
こうしないといけないわけじゃない自然農「フタバ家」
次の訪問先は、自給的な暮らしをする妹尾孝信さんのお宅。「フタバ家」という屋号で、自然農を営んでいます。
蔵に案内してもらい、作ったお米の籾殻をはずす作業を見せてもらいました。
「自分の手でやるのが面白いんです。早く楽して結果を求めるんじゃなくて、プロセスを楽しみたい。たとえば、米を買ってきて白い米が食卓に出るまでに何が起こっているのか、なかなか見えないじゃないですか。これをやると全部見えてくるんです。そういう発見がしたくて、自給的な暮らしをしています」
10歳の息子さんがいるという妹尾さん。クロさんが質問をしました。
――僕も子どもがいるんですが、年頃の子どもと接する難しさを感じています。お子さんは、妹尾さんのことをどう見てるんでしょうか?
「う〜ん……。多分バカだと思ってると思います。昔は畑を手伝ってくれて、一緒に売りに行ったりもして、お小遣い稼いでたんですよ。だけど、いまは小遣いやるから手伝ってって言っても、『え……』って言いますね。息子には息子の世界があるんですよね。今はバスケットに夢中です。ちょっと寂しいですけどね」
と妹尾さん。
「そればっかり考えてもしかたがないから、息子のことより自分がどうしたら楽しくなるかを考えてます」と笑顔で答えてくれました。
さて、ガスを通していないという妹尾さんの家の熱源はすべて薪。風呂や台所、オンドルと言われる韓国由来のストーブにも薪が必要です。
薪は熱源のほかにも、しいたけのほだ木としても使われ、妹尾さんの生活になくてはならないもの。薪はどこから来ているのか? を確かめるため、薪となる木を伐採に山へ。
自給的な暮らしと生き物とともにある自然農を体感し、妹尾さんとお別れ。バスへ乗り込んだメンバーに、案内人のりなぴが言いました。
「妹尾さんがすごいのは、自分のポリシーを押し付けないところ。息子さんの話もありましたけど、その人にはその人の世界があるっていうスタンスで、すごく柔軟性の高い方なんです」
ローカルスーパーと、名物焼き鯖寿司
一行は、「奥出雲葡萄園」へ。我慢していた、とばかりに雨が降ってきました。ぶどう畑が広がる敷地内には雲がかかり、幻想的な雰囲気。そういえば、奥出雲も雲南も「雲」という字が入っているな。雲と神様は仲よしなのかもしれない……なんてことを考えながら、ショップでお土産を選びました。
***
あたりがとっぷり暗くなったころ、木次駅へふたたび。駅前の「ショッピングセンターマルシェリーズ」でもお買い物をしましょう! と、ここでサンベさん。
「2階に『ショッピングリハビリ』をやられているところがあるから、興味のあるひとは行きましょう」
ショッピングリハビリとは、作業療法士が開発した「楽々カート」を使って、歩行訓練や記憶の呼び出し、空間認知などを買い物を通じて行える独自のリハビリプログラムです。普段介護福祉の仕事をしているひろみさんは、カートを見て言いました。
「使う人の身長に合わせて高さが調節できるんだ。あ、ここは杖を入れるところですね」
さすがのプロの目線の観察です。
さあ! おまちどうさまでした。いよいよ晩ごはんの会場に向かいます。木次駅前の「お食事処おくい」で、木次線を共にした大学生たちと再会を喜びました(今朝ぶりだけどね)。
ここの名物は、焼き鯖寿司。その由来をちょっとご紹介しましょう。
大学生との楽しい時間もあっという間に過ぎ、最後は彼らを駅まで送ってさようなら。今日も盛りだくさんの一日でしたね! さて、明日は最終日。どんな出会いや気付きが出てくるんでしょうか!? 3日目に続きます。
text & photo by Azusa Yamamoto
※行程中はマスクを着用し、飲食及び集合写真撮影時は外しています