「スペシャル」よりも大切にしたいもの。コーヒーカウンターのたたずまい@代官山
●スタンディング式でコーヒーをたしなむ
今回ご紹介するのは、ヨーロッパのシックさを感じさせるコーヒーカウンター『Sputnik』。代官山の賑やかなエリアからは一歩引いた、上品な住宅と小さなお店が並ぶ通りに構えています。
訪れた時は、ちょうどオープンから一年が経った頃でした。
●隠れ家のようなワクワクと、広々とした開放感
店内に足を踏み入れると、奥行きのある長いカウンターがお出迎え。L時の鏡のおかげで視界が抜けて開放感を感じます。一方、ラワンのブラウンが落ち着いた空気も醸しており、きもちのよい空間が広がっていました。
私たちが伺ったときには、ファッショナブルなマダムや英語で談笑を楽しむ海外のお客さんなど、このお店に引き付けられた多様な方々がいらっしゃいました。
●コーヒーを待つ間に、空間を味わってみる
まず店内を見上げてみると、お客さんのエリアの天井が高くなっており開放感を感じました。
実は飲食店では、キッチンの天井を一段低くして配管などを中に隠すことがよくあるのです。『Sputnik』ではその部分を濃いブラウンにすることで、店全体の奥行きのラインを強調する工夫も感じられます。
つづいて、視線を落としてみます。床の武骨な素材感のおかげで、ふらりと入りやすいラフな印象。一方、真鍮のフットレストは、色合いと曲線でエレガントさを感じさせます。
こうして対局な2つの要素を組み合わせると、お互いの良さが引き立てられますね。この足元のあしらいは、店主・伊藤さんのお気に入り箇所なんだそうです。
白い壁に張られたリブのある腰板も、雰囲気をより洗練させていました。カウンターは半楕円であることで、直線的なラインの多い空間のアクセントとなり柔らかさも演出しています。
●自分達でつくりあげた空間
以前、東京R不動産のInstagramでもご紹介した途中経過の様子。ご友人と壁を塗装するなど、ご自身でつくられた部分もあるそうで、お店への愛がより大きくなりますね。
伊藤さんは、お店のオープン前に「カウンターの高さは108~110cmかなあ」と考えていたそう。
そんな時、ある尊敬するお店のオーナーが「うちのカウンターは108cmにした。煩悩の数。」と話すのを聞いて、『Sputnik』のカウンターも108cmになったのだと教えてくれました。とってもユニークなエピソードです。
●スペシャル、もいいけれど
コーヒーをいただくと、とても香り高くてびっくり。「なにか特別なコーヒーなのですか?」と尋ねると、意外にも「いえ」とのお返事が。
「うちのコーヒーは、普通ですよ。スペシャルなものって、毎日摂らなくてもいいと思うんです。それよりも、自分が『通いたい』と思う店に通う日々のスタイルに良さがあると思う。1日に何度来ても1年ぶりでもよくて、ふらりと足を運べるその日常って、いいなあと思います」
なんともさらりとした、それでいて深みのある考えです。
「スペシャル」と付くような、質のよいと定義された物を生活に取り入れることも素敵ですが、自分のリスペクトできるお店にふらりと通えるマインドというか、そんなライフスタイルもまた大切にしたいですよね。
考えてみればコーヒーに限らず、なんだか世界には「ワンランク上の〜」や「スペシャル○○」といった、「特別感を感じさせるもの」で溢れている気がします。
しかしふと落ち着いて考えてみると、スペシャルよりも大切にしたいような日常の送り方があるかもしれません。ご自身の中でしっかりとお答えを持っているからこそ、伊藤さんそして『Sputnik』には深みがあるのだと感じられました。
『Sputnik』は、コーヒーはもちろんそのたたずまいが魅力的で、何度でも自然と足を運びたくなるような素敵なお店でした。伊藤さん、ありがとうございました。
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