見出し画像

ハード・ソフトのDX~府中市×昭島市CIO×都CIO座談会①~

東京都・区市町村CIOフォーラムにおける活動の一環として、都内各自治体CIO等へ「東京都・区市町村CIOフォーラムマガジン」を発行しております。今回は、マガジンに掲載した内容を一部公開します。
第9回は、「府中市×昭島市CIO×都CIO座談会」をお届けします!
※CIO(情報統括責任者):組織の情報戦略における最高責任者
※東京都・区市町村CIOフォーラム:都CIOと各区市町村のCIO(主に副首長)等が相互に密接な連携と協力を深め、電子自治体の構築や行政施策へのICT活用等の諸課題に関して、テクノロジー情報や導入ナレッジの共有化を通じて、都及び各区市町村のDX施策推進に寄与することを目的として設置

※この記事は全2回でお届けします。

令和3年10月20日に、「東京都・区市町村CIOフォーラム第9回座談会」として府中市、昭島市CIO及び都CIOの対談を実施しました。

参加者(敬称略)
府中市副市長:古森 寬樹
昭島市CIO:早川 修
昭島市デジタル化担当部長:小林 大介
都CIO:宮坂 学
都デジタルサービス局戦略部長:深井 稔

―本日は事前に頂いた内容を元に、各自治体様のデジタルに関する取組の共通点を踏まえ、庁内環境の整備・ICT人材の確保・行政手続のオンライン化の3テーマを設定させていただきました。まずは庁内環境についてご紹介お願いします。

庁内環境の整備

ペーパーレスに向けた課題

府中市副市長:古森 寬樹(以下「古森」)
府中市の環境整備関係では、新庁舎建設を進めております。窓口関係は令和5年5月に供用開始を迎えるということになっておりまして、この新庁舎に向けてということで、DXの取組を進めてきているという状況でございます。新庁舎が整備されたあかつきには、全庁を無線化によるペーパーレス化の実現を行いたいと考えています。またDXの核として、Microsoft 365を導入し、職員間のWeb会議やチャット、またリアルタイムの資料共有などに取り組みたいと考えているところです。

昭島市CIO:早川(以下「早川」)
コロナ禍を契機に、府中市と同様に昭島市もWeb会議、ペーパーレス会議の推進をしております。市の基本理念に「環境との共生」を掲げているため、ペーパーレスについては従来から推進をしてきた経緯があります。DX化に向けて、まずはWeb会議、ペーパーレス会議をしっかりと進めていこうという前提のもとに、庁内LANの無線化と、固定型のデスクトップPCをノートPCへ切り替えていこうと今予算化をしているところでございます。庁内環境がDX化における礎になるという前提のもとで取組を進めているといった状況です。

都CIO:宮坂(以下「宮坂」)
どうもありがとうございました。
庁内環境については、実は都もあまり良くない状態です。昨年度に職員を対象にしたアンケートで「自分の働いているICT環境にどれぐらい満足か」と聞くと、不満に思っている人が54%程度で、職員に負担を強いていた現実を認識しました。そこで無線LANの拡大を実施したのですが、当時の経験からのアドバイスをお伝えすると、無線LANのWi-Fi容量を増設しやすい形で準備をされた方が良いのではないかと思いました。というのも、都庁のビルは結構古いつくりで、Wi-Fiのアクセスポイント増設や、後から光ファイバーを通すのにすごくお金がかかりました。私の部屋に通すのも一苦労でした(笑)ハードの増設は結構大変だと思いますので、準備されておいた方がよろしいかと思いました。こういったノウハウを今日はお互いに交換できればと思いますので、これからどうぞよろしくお願いします。府中市様の話であったMicrosoft 365ですが、これはいわゆるクラウド型のOffice365ですか?

古森(府中市)
はい、そのとおりです。

宮坂(都)
素晴らしいですね!我々はまだそこにいけていないので、ぜひ今度ノウハウを教えていただきたいです。
次に昭島市様に聞いてみたいのがペーパーレスについてで、もともと推進されていたということですが、進捗状況はどうでしょうか。

早川(昭島市)
これまでの取組は紙ベースで裏紙をどんどん使っていこうとかしていたのですが、そもそも紙を使わなければいいわけで、その徹底をDXの流れの中でこれから強固に進めていきたいと考えています。逆に東京都様側ではどのような取組をしているのかお聞きしてもよろしいですか?

宮坂(都)
都庁で昨年から一気に紙を減らそうと最初にやってみたことは、部局ごとの印刷枚数の数字を全部出すということでした。これにより、どこが一番減っているのかを見えるようにして、減っているところのノウハウを他のところに教えるということを地道に進め、今年度は2016年度の印刷枚数の半分を目標の数字に設定し、取り組んでいます。また、今年度から、部局ごとに紙の総量を規制して、それを超えると勝手に注文できないような形でやっています。これもどういう反響があるかわからないですが、良い結果でも悪い結果でもぜひ皆さんご報告をしたいと思います(笑)

早川(昭島市)
ありがとうございます。今副知事がおっしゃった予算の縛りは10何年も前からやっているのですが、行政文書については紙文化の風習が依然として存在しており、ペーパーレスが進んでこなかったことを実感している状況でしたが、この機会に打破していこうと考えています。アナログベースで限界まで減らしてきましたが、これからはデジタルベースで抜本的に解決していきたいので、色々都庁の情報を教えていただければ助かります。

宮坂(都)
是非是非!どんどん情報公開もやっておりますし、都からも実績の提供をしていきます。

ICT人材の確保

1つのツールを一緒に育てる

―それでは次にICT人材の確保について意見交換させていただきます。

古森(府中市)
府中市では来年度の組織改正を行いまして、DXのDにあたる情報戦略課、またXの部分にあたる行政経営課というものを新たに設け、Dの人員については民間からDXに携わっている経験者を管理職として採用、Xの人員については特定任期付採用職員を専門人材として登用するということで、任期付採用のできる条例の制定も行いました。
また、庁舎の供用開始が間近に迫っておりますので、DX関係についてどんどん進めていかなければいけないということで、アドバイザー契約をしてDX専門人材に月2回程度来ていただいて、業務の洗い出しと推進体制の構築に取り組んでいるところです。

早川(昭島市)
昭島市では本年度4月、内部人材としてデジタル化に特化した担当部長職を配置し、全庁的な取組の中で牽引役として活躍してもらっています。課長職・係長職についてもデジタル戦略担当ということで随時配置をしております。外部人材としては、内閣府の地方創生の人材派遣のご紹介で、民間のIT企業の社員さんにアドバイザーとして入っていただいたり、市内企業のIT企業の代表を務めていらっしゃる方をCIO補佐官としてお願いをして、色々なご指導をいただきながら進めているところです。
ただ、情報システム部門だけでこのDX化というのは成し遂げられるものだとは思っていません。ラインで実際に市民と接する職員の意識を変え、その上で仕事を変えていくということが必要だと思っておりますので、本年度の採用試験から東京都さんと同じように一般事務の中でICT枠を設け、ある程度ICT基礎知識がある人の採用試験にも取り組み、システム部門だけでなく、ライン部門にも、仕事を進めながらデジタルの恩恵を十分に仕事に活かせるような人材を配置します。それから既存の職員についても研修等を施しながら意識転換をしつつ仕事を変えていくということで今取り組んでいるところです。

宮坂(都)
ありがとうございます。いずれの市も採用について色々な工夫をされている話を聞けて勉強になりました。育成についても、都も区市町村も研修で基礎的に学ぶべき内容は実は同じではないのかと思っていて、今後はできるだけ一緒になって勉強できるような形にして、都ICT担当と区市町村ICT担当の人間的な繋がりを作って情報共有ができるとよいと思います。これは私の一つの夢なのですが、都のICT職員が区市町村へ出向してしっかり業務を学び、人間関係を作って戻ってくる。そうやって人材を育てていくことをこれからやりたいと思っているのですが、何かご意見ございますか?

早川(昭島市)
昭島市としては副知事がおっしゃったことを進めていただければすごくありがたいと思いますし、26市にとっても人材確保は共通課題だという認識がございます。我々が横の関係をしっかりと構築しながら、東京都さんに研修の場・交流の場を通じてもぜひお願いしたいです。

古森(府中市)
府中市といたしましても、その人事交流関係についてはしっかりやらせていただきたいと思います。ぜひ東京都さんに先導的に取り組みを進めていただきたいと思います。

宮坂(都)
わかりました。ありがとうございます。先ほど府中市様の方から、DXのDのデジタル化のチームと、Xのトランスフォーム、という話をされていて、本当にその通りだと思いました。私は都庁にきて2年になりますが、やはりXの部分、みんながデジタルを使って仕事をよくしようと思わないと小道具の押し付けになってしまいます。ここを試行錯誤しているところなのですが、効果があったことや工夫されていることなど教えていただけますか。

古森(府中市)
次年度から財政を組むというところで、現在有効的にお話できるような実例はなかなかないですが、仕事改革をしていくことが大切になると思います。既存の業務を見直し、デジタル化の恩恵を受けながら仕事の効率化を図って、そこで生み出される人材を他の部署にも配置して多くの場所を改善してもらいながら業務が回っていければ一番いいかと考えております。

宮坂(都)
ありがとうございます。今から調整されていくというところですね。また動きがあれば、次の機会にぜひ教えてください!

前半は庁内環境の整備、ICT人材の確保というハード面・ソフト面に関する意見交換をしていただきました。後半もお楽しみに!

執筆者:猪ノ口 渉(デジタルサービス局戦略部戦略課)
編集:星野 惇(同上)

バックナンバー






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?