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“役立つこと”がすべてじゃない。ロボットと人間が対等に共存する社会を目指す、高校生の挑戦【Z世代の夢応援プロジェクト】

TOKYO<β>では、Z世代の夢応援プロジェクト第2弾として、NPO法人ETIC.の起業家・イノベーターを育成する私塾「MAKERS UNIVERSITY」と「MAKERS UNIVERSITY U-18」とコラボし「TOKYO<β>奨学金」を設立。塾生約70人を対象に総額400万円程度の奨学金を給付しています。

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今回は、8月下旬に開かれた審査会で見事、奨学生に選ばれた10名の中から、「MAKERS UNIVERSITY U-18」に所属する齋藤淳平さんにお話を伺いました。


目指すのは、ロボットが人間と対等に共存する社会

友だち4人と「燈テクノロジー」というグループを組んで、ロボットと人間が対等に共存する社会をつくることを目指し活動しています。
でも僕たちの活動はこの目標を起点に始まったわけではありません。“ロボットアームをつくりたい”、“ディスプレイを動き回らせたい”といったやりたいことが先にありました。それを実現するためには、ただ「つくりたい」と言っているだけでは難しい。資金面の問題もありますし、一人ではつくれません。周りの人たちに理解してもらうために、みんなで1ヶ月くらい話をして、何のためにつくるのか、なぜつくりたいと思ったのかをめちゃくちゃ考えました。その結果、“ロボットと人間が対等に共存するためなのではないか”という結論に至ったんです。

今(※取材時点)は、これまで制作してきたロボットをパソコンで一括制御することを目指して日々奮闘しています。

面白いんじゃないかと思ったアイディアを形に

動くディスプレイが空間を切り取っていく

TOKYO<β>奨学金は、空間を切り取りながら動くディスプレイの制作に活用しています。はじめに小さいサイズのものを作って、9月に大きいものを作り直しました。これから上下の動きを追加したり、一括制御の技術もこのロボットに応用できないか考えています。まだ平面の表現しかできないですが、プログラムを改善していく予定です。

この動くディスプレイは「動画を撮るときはスマホを動かしながら撮るのに、見るときは止まって見るのってなんでだろう。見るときもディスプレイが動いたらスマホの向こう側の世界が、こちら側の世界と同じようにある状態になって面白いんじゃないか」と思ったことがきっかけでつくりはじめました。

一度、断念した夢を、仲間と実現した喜び

動くディスプレイを組み立てていく

成功したときは本当に嬉しかったです。実は中学生のときに同じくらいのサイズの人型ロボットの開発にチャレンジしていたのですが、コロナ禍やお金の問題もあって断念してしまって。ずっとこのサイズの動くロボットを作るのが夢だったんです。

ロボット開発において大切なのは技術力だけだと思い込んでいる時期もあったんですけど、やっぱり仲間が大切だし、資金集めも大切だし。アイディアが実現したことももちろんですが、単に技術力の向上ということではなく、この数年で学んだ大切なことすべてが組み合わさって、この大きさのロボットが動いたっていうのが、とても嬉しかったです。

ずっとものづくりが好きだった

正確には覚えていませんが、小さい頃は戦隊モノの変身するロボットのおもちゃでよく遊んでいました。その後、レゴ®️を手に入れ、戦隊モノのロボットや自分で考えた未来の車などをつくるように。小学校の高学年の頃には、木や100均で売っているような工作用の紙で工作をよくやっていた思い出があります。

ものづくりの楽しさを感じるのは…

小学生の頃からロボットに興味はあったのですが、ロボットってはじめるのが難しいんですよ。何からやればいいのかわからないから、はじめられなくて。中学に入ったら、普通の公立中学なんですけど、たまたまロボットをつくっている部活があって。そこでロボットをつくりはじめました。最初は先輩たちに知識を教えてもらって、徐々にネットや本で独学で調べながら制作するようになっていきました。

ものづくりの楽しさを語ってくれた

今思えば、ロボットというより、ものづくりが好きだったのかもしれません。ものづくりの楽しさを感じるのは、一番最初に何をつくろうかなと考えているときと、それが現実になったとき。もちろんその間の試行錯誤も新しいことを知ることができて楽しいんですけど、徹夜しなくちゃいけなかったり辛いことがないわけではないです(笑)

今ある問題の解決がすべてではない

動き回るディスプレイ

さっき話した動き回るディスプレイの話をすると、よく聞かれるのが“何に役立つのか”ということ。もちろん僕もそれは重要だと思っているけれど、今のところ妙案は思いついていなくて……。
技術を説明するときに、“今すぐ役立ちます”、“こういう問題を解決できます”と説明するのが一番伝わりやすいことはわかっているんですが、でもそれは僕がやりたいことではない。すぐには役立たないかもしれないけど、ディスプレイを動かすっていう発想が今はないじゃないですか。面白そうだなと思ったらまずつくってみる。それを知った誰かが何かに活かしてくれるかもしれないし、僕も何か思いつくかもしれないし。まずやってみることは、無駄ではないはず。学生のうちは、やりたいことにどんどんチャレンジしていこうと思っています。

理解されることと、伝わることは違う

このディスプレイの面白さは、伝わらない人にすごく響かないんですけど、わかってくれる人はめちゃくちゃわかってくれるんです。TOKYO<β>奨学金のプレゼンテーション後のフィードバックで、「あんまりよくわからなかった」みたいなことを言われちゃって。「あぁ、伝わらなかったな。ダメだったな」って思っていたのですが、結果的に採択していただくことができました。
この経験を通じて、僕がやろうとしている技術そのものを理解してもらえなくても、伝わるものがあるんだなということに気がついたんです。まだまだアイディアがたくさんあるので、どんどん形にしていきたいです。

ーーーとっても楽しそうに、仲間と制作しているロボットの魅力について語ってくれた齋藤さん。何かを考えるとき、つい“どのように役に立つか”“どんな問題を解決できるか”ということから考えを巡らせてしまいがちですが、まずは「面白そうだからやってみよう!」そんな純粋な気持ちではじめてみることが、好きを極めることにつながるのかもしれません。まだ見ぬアイディアを形にするため、これからも続くチャレンジをTOKYO<β>は応援します。