tokyo1984

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哲学を掴め

日本に哲学なし、とはよく言われたものだがこれは事実であろうと思う。私は外国人の生態に明るい訳でもないので一概に比較はできないのだが、例えばフランスの高校では哲学が必修とされていたり、世界のエリートの多くが哲学を学んでいることが実際に有名であるし、教育機関に於いては日本と違い幼き頃から、明確な答のない問いに向き合っていると知られる。 哲学とは抑も知を愛すると言う意味であるが、実際には世界の真理等を深く考察する壮大な領域から、自身が如何生きるかの為に如何考えるかを探求するパーソ

    • ショートショート「雨は、私の心まで濡らさない。」

      雨は、私の心まで濡らさない。靴下に嫌悪感の滲む不快な澱みが纏わりつく。一歩、また一歩と歩みを進める程に惨めに、酷くやるせなく、自責とも他責ともつかない負の念を込み上げさせながらも私の心は恐ろしく乾いている。 禅を組み、丹田に意識を集中させ、迸る雑念と別れを告げた瞑想の先にこんな世界があったとは。一度認知してしまえば、もう目を背けることは出来ない。どれだけ科学に依って疑おうとも、どうしようもなく、揺るぎなく、それは此処にあるのだ。 その葉を紫色に滾らせ、こちらを威圧するよう

      • 「私は○○なタイプだから」は、全て嘘である。

        人は何かとカテゴライズしたがる生き物である。自分は「綺麗好きなタイプ」、「理論派タイプ」、「大雑把なタイプ」、「気が短いタイプ」、「遅刻しがちなタイプ」等多種多様なものがある。 然しここに断言しよう、それらは嘘であると。 何故ならばそのタイプは対義語となるタイプとの両立が可能であるからだ。例えば「綺麗好きなタイプ」の対義語は「散らかし屋さんなタイプ」等になろう。綺麗好きである事が自身の備え持った気質なのであるとしたら、何時如何なる時も綺麗でなければ可笑しいし、後者の場合は万

        • 私的名作映画十選

          映画とは、退屈な部分がカットされた人生である。 そう言ったのはサスペンス映画の神アルフレッド・ヒッチコックである。実際に二時間程度の時間にさまざまな人々の濃密な人生が堪能でき、南国にも雪国にも、過去にも未来にさえ行くことができる。実にコスパの良いエンターテイメントである。 本稿に於いては私的名作映画十選をご紹介申し上げたい。 第10位 ジョナス・アカーランド「SPUN(スパン)」 登場人物全員“ヤク中”。ジャンキー青年の救いようのない青春を描いた、どうしようもないドラッ

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          雑記#01「時間の流れの早さについて」

          暦としては大寒が開け立春が訪れたかと思うやいなや、東京には似合わない白雪が空を舞った二月五日の夜。霙混じりの足元は実に悪く、頼りないソールを伝って不愉快な冷たさが靴底から這い上がって来た。 視覚効果も相舞ってか、厳しさを増した様に感じる寒さに何時だったかに患いかけた、なりかけの椎間板ヘルニアが此方を覗き込んで来るようでなんとも腰の心地が悪かった。 然し十日間が過ぎた二月十五日現在、路肩に残った雪はすっかり消え失せ、正しく暖冬と言った格好の小春日和かと見紛うような暖気が都心を

          雑記#01「時間の流れの早さについて」

          許しの美学

          「愛とは、その人の過ちや自分との意見の対立を許してあげられること。_」 そう言ったのは近代看護の創始者であり、「クリミアの天使」とも称されたフローレンス・ナイチンゲールである。 またフランスの思想家ヴォルテールは「私はあなたの意見には反対だが、それを主張する権利は命がけで守る」と言ったとされる。 人に寛容であること、自身の自由の為にも他者の自由を守ること、そしてその器を持つこと。 ポールマッカートニーは「貴方が受け取る愛の量は、貴方が生んだ愛に等しい。」と歌った。 他者を許

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          さや香の二本目ネタ「見せ算」の純真に、漫才の未来を観た。

          さや香の「見せ算」が話題である。M-1グランプリ2023一本目に於いて堂々首位通過を果たした彼等は、二本目で大いに滑り散らかし今年も優勝を逃した。 巷では「全然面白くなかった」等の酷評が大勢を占め、実際に私も審査員等と同じくポカンと口を開けてさして笑いはしなかった。然し乍ら他方、「やりたいネタで勝負する漢気がカッコいい」「これぞ漫才師」等さや香の姿勢を支持する声も相次ぐことになった。 然し、私には疑問が残った。彼等は一体何を表現したかったのかと。 例えば「システム」を捨てて

          さや香の二本目ネタ「見せ算」の純真に、漫才の未来を観た。

          ショートショート「エリカ様は、告られない。」

          これは、恋愛自意識過剰モンスターの女に見染められた、不憫な男の物語である。 中砂エリカは顔立ちに絶対的なまでの自信を備えている。なんて私は可愛いのだと。然し乍ら彼女の容姿は不細工でこそないものの、どれだけ忖度に忖度を重ねても、「中の中」が関の山で、街行く人が思わず見惚れる様なことは一度もなかった。エリカは大学時代に一度だけ居た当時の彼氏に何度も大袈裟に目鼻立ちを褒められた経験がありその体験に立脚し、尊大な自信を得ていたのだ。 山中修二はエリカからの執拗で露骨なアタックの数

          ショートショート「エリカ様は、告られない。」

          命懸けのビートルズ名曲10選

          ビートルズ最後の新曲が話題である。メディアやSNS等で連日これでもかと、喧伝がひっきりなしなのだが、斯く言う私も配信開始を今か今かとイヤホンを付けて待ち侘び、秒針が23:00を指した瞬間に再生ボタンを押した一人である。AIの進化を手放しに賞賛できないで居た私であったが、今回ばかりは頭が下がる思いである。 ビートルズの輝かしいラインナップの中で「Now and Then」が特別に素晴らしいとも思わないが、あと何日でビートルズの新曲が聴けると言うワクワク感と言ったらなかった。イヤ

          命懸けのビートルズ名曲10選

          相次ぐミュージシャンの訃報に僕らは何を、思うべきか。

          ミュージシャンの訃報が多過ぎる。 2023年に入って坂本龍一氏や谷村新司氏のような国民的アーティストをはじめ、KAN氏やBUCK−TICKの櫻井氏、XJAPANのHEATH氏等有名ミュージシャンの訃報が後を絶たない。実際に、こんなにも立て続けに耳をするのは初めてだと感じた方も多いのではなかろうか。あまりにも続いている為SNS等では以下記事にもあるようにワクチン接種との関連性を疑う声もあるようだ。 当然のことながら病気と言うものは何か一つの原因に依ってではなく、複合的な要因

          相次ぐミュージシャンの訃報に僕らは何を、思うべきか。

          邦楽を聴かない男による邦楽名盤10選

          私は邦楽を聴かない。無論嫌いな訳では全くなく、そう言えばここ何年もまともに聴いてないなとふと気付いたため筆を執った次第だ。10代20代の頃は比較的邦楽も洋楽もバランス良く聴いていた様な気がするが、いつしか洋楽しか聴かなくなってしまった。 何故日本人の癖に外国の音楽ばかりを好むのだろう。酒もそうだ。バーボンやラムなどの洋酒ばかりを好む傾向が私にはあったのだが、今年から急に日本酒を呑む様になった。もしかしたら音楽もそろそろ国産を好む時期が来るのかも知れない。 本稿に於いては私がこ

          邦楽を聴かない男による邦楽名盤10選

          この世界に「向き不向き」は存在しない。

          此度はそうした持論を展開させていただこうと思う。そしてより正確を期せば「身体能力などの先天的な能力を問わない全ての技術に於いて」向き不向きは存在しないと私は実に思うのだ。 私はデザインを生業にしている為、以下のような台詞をよく耳にする。「私はデザイン的な領域は向いてないので〜」、「クリエイティブなセンスはないので〜」などである。言いたいことはよく分かるし、実際に自分が他の領域で近しいことを口にすることもある。 その他の常套句としては「自分は文系だから理系領域のことは苦手で〜」

          この世界に「向き不向き」は存在しない。

          ショートショート「サムシング。」

          実に良い人生であった。 私自身は大した甲斐性もなく、特別な技術のようなものを持たず、真面目さくらいが取り柄の凡人としか形容できない男であったが、妻が私の人生を鮮やかに染めてくれた。生きて来て良かったと心から思える。 妻とは若かりし日にビートルズファンの集いで知り合った。私は「アクロスザユニバース」や「ストロベリーフィールズフォーエバー」などのジョンの楽曲を好んでいたが、妻はポールの楽曲をより多く愛し「フールオンザヒル」や「ドライブマイカー」をよくかけていた。 レコードはジョ

          ショートショート「サムシング。」

          TOWER RECORDS哀歌

          先日、何年振りなのかもわからない程久方ぶりにタワレコへ赴いた。理由は気が向いたからとしか言いようがないのだが、其処で私は愕然とした。在ったのは私の知るタワレコの姿ではなかったからだ。 根本的なフロアデザイン等の話ではなく、レコード店としての在り様が大幅に異なっていた。 私が足繁く通っていたのは今から二十年程前、専門学校の帰り道にタワレコを覗いてからバイトに向かうのが一つの習慣であった。発刊されていたフリーマガジンを読み漁り、snoozerやremixの新刊をチェックし、視聴

          TOWER RECORDS哀歌

          「君たちはどう生きるか」によせて、今一度「風立ちぬ」を語る。

          話題の宮崎駿監督最新作「君たちはどう生きるか」を視聴してきた。 公開中の映画であるため内容への言及は慎ませていただくが、実に素晴らしい名作がまた一つ誕生したように思う。御年82歳にしてのあの創造力は実に恐れ入る。個人的にはウォルトディズニーやジョージルーカスらと伍しても決して劣ることのない世界を代表する名監督の一人であると思う。 そして今こそ、氏の前作である映画「風立ちぬ」について語ろうと思う。 名作であるため粗筋の紹介は省略させていただくが、私は人生でこれまでに観た映画の

          「君たちはどう生きるか」によせて、今一度「風立ちぬ」を語る。

          この国を滅ぼす、高齢者たちへ。

          全く胸糞の悪いニュースである。 事件を見た訳でもなければ、仔細を記事以上には知らない為、小学生男子の行動にも幾らかの落ち度があったのかも知れないが、犯した事は轢き逃げである。一方的にどころか絶対的に悪い。 11歳の子どもが怪我をしたのだ。運転者が自分であろうがなかろうが直ちに手当をするのが大人の務めであろう。それを逃走だとは、愕然として二の句が継げない。 人間は他の生物とは違い、凡ゆる財産を先人から受け継ぎ、そして孫子の世代へと受け渡していく生物である。故に古来より子々孫

          この国を滅ぼす、高齢者たちへ。