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仙人サドゥに出逢えた!!

ガンジス河で洗濯された長いサリーが何本も何本も干されている光景を横目で見ながら川沿いを上流に向かって歩いて行くと、しばらくしてオレンジや黄色の布が張られた一帯が見えてきた。

枯れ葉色は俗世を捨てた象徴。

仙人サドゥのお手製テントだ!

テントは布を吊ったり棒で支えたりしているだけのものが多くドアがなくてすぐ覗き込める。


その中に果たして…仙人サドゥがいた!!!

灰を顔といい身体といい全身に塗り付けて肌は真っ白。布を一切身に着けておらずすっぽんぽんで局部が丸出し!もちろん局部にも隈なく灰が塗られている。

とうとう伝説の仙人に出逢えた。本当に存在していた。本当に全裸なんだ…。

この時期だけ普段放浪しているヒマラヤ付近から降りてきているサドゥ。バラナシに来るのは基本的に12年に1度、この時期だけ。
テントはずっと続いており、それぞれのテントにサドゥが一人から複数人いて、しゃがんだり胡坐で座ったりゆったりと過ごしている。局部丸出しのままでも全く平気な様子だ。テントの外を歩いてもいる。

ガンジス河に浸かって手首と足首の灰が落ちているサドゥもいる。髪をドレッドにしているサドゥもいれば、それがとんでもなく長いサドゥ、逆に坊主のサドゥ、ターバンを被ったサドゥもいる。菩提樹の実の数珠を大量に全身に巻き付けているサドゥ、マリーゴールドの花で着飾っているサドゥ、サングラスをかけたサドゥ。中には局部を丸出しにせず枯れ葉色の布を腰に巻いたサドゥもいれば、それが阪神ファンよろしく虎柄(シヴァ神の象徴)のサドゥもいる。


灰をつけず肌が白くないサドゥはシヴァ神派ではないサドゥか、恐らく見習いだろう。見習いの弟子サドゥの年齢がてんでバラバラであるところも面白い。サドゥは仙人ゆえ俗世を捨てないとなれない。死亡届を自分で提出するのだ。逆に言えば、死んだことにさえすればカースト制度等関係なく誰にでもなれるのだ。ヒマラヤには500万人のサドゥがいるという話もあるが、数が追えないため誰も把握していない。

それぞれのテントの前には白い灰を固めて涙型の竈(かまど)が作ってあり、その上に太い丸太が置かれ、火がつけらている。これこそが古来シヴァ神のシンボルであり、涙型は女性器の象徴、その上の丸太は男性器の象徴。ヒンドゥー教、特にシヴァ神は愛と繁栄の象徴である生殖器信仰が非常にはっきりしている。よく見るとみな丸太をなるべく太く大きなものにしようとしている様子が見て取れて面白い。竈(かまど)からハミ出しているものさえある。
この灰は牛糞をカラカラに燃やしたものらしい。それを全身に塗っている。中には火葬場の灰を塗っているサドゥもいるとかいないとか。
竈(かまど)の周りを花で思い思いに装飾しているテントもあれば、テントの奥にシヴァ神のイラストを張り付けたり、壁に幾何学模様のカーペットを貼ったり、中にブランコが作ってあるテントまである!

灰で塗れているとは言え、男性の局部をこんなにまとめて見るのは初めてだなあ、思ったよりいろいろな形があるんだなあ、サドゥたちは結構皮が被っているなあ等と決して口に出せないようなことを考えながら興味津々テント村を歩いていると、こっちにおいで、とあちこちのサドゥから声がかかる。

サドゥはヨガの達人でヒマラヤで数十年片手を上げ続けるなど厳しい修行をしているイメージがあったので、着飾ったりサングラスをしたりぽっちゃりしている不良サドゥ(私が勝手に名付けた。しかしこの認識は大いに間違っていることが後に判明する。写真と共に後述するつもり)は避けて、痩せた体形で着飾らず、シンプルなテントにいる坊主頭のサドゥのところに行ってみた。

坊主頭サドゥの前にしゃがむと、こちらに座れと奥を指定される。言われた通りにするとサドゥはその灰がついた白い顔のままにっこりして、竈(かまど)から灰を4本の指で取り、私の額に横一線塗り付ける。なんだかこのサドゥ、朦朧としている気がする。それにこの少し甘ったるいような独特の匂いは何だ…そうか、大麻を吸っているんだ! そしてこのとろんとした目つきはラリってるに違いない。大麻禁止のインドで、サドゥは大麻が黙認されている。まあ、たとえ法律違反だったとしても、死亡届が出されて法的に存在しないから、逮捕のしようがない。坊主頭のサドゥはほわんとした独特の表情をしながら、次に長い孔雀の羽を手にし、私の頭を何度か撫でた。サドゥは最高にピースフルな顔をしていた。額の灰も孔雀も、たぶんシヴァ神の祝福を私に贈ってくれたのだろう。

終わった後は、はっきりと「Money」と言われた。竈(かまど)の横にお布施のコインや紙幣が置いてある。私も10ルピー(16円)紙幣を出すと、坊主サドゥの横にいた見習いらしきサドゥが「もっと置いていけ」と言う。さらにもう10ルピー出すと坊主サドゥが満足したような顔になって右手を上げたので、私もにっこりして立ち上がった。
この後、私はバラナシ滞在中にこのテント村を幾度となく行き来するのだが、この坊主サドゥはテントの前を通るときいつも在宅だったので、何度もお互い手を振り合った。私も祝福を受けたことで何かお互い通じ合うものを感じていた。もしこの先ヒマラヤの中で会うようなことがあっても、きっと彼だと分かると思う。

サドゥに祝福をしてもらって嬉しくて機嫌良く歩いていると、人だかりが出来ていた。
才気煥発といった顔つきのサドゥが、なんと局部を棒に巻き付けている!?

そしてすぐ隣にいた長い髭のサドゥが後ろからその棒に足をかけ、上に乗った!!!
え!ええええ!?どういうこと!?!?

最後には二人とも両手を放してドヤ顔をしている。
対照的に、見物していた地元のインド人男性たちは一様に顔をしかめている…。

まさに仙人の秘儀。修行で鍛えているんだろう。これはシヴァ神の生殖器信仰の最たるものかもしれない。近くで見ていたインド人が、サドゥは局部で車も引っ張るんだと言う。

仙人サドゥ、底が知れない…。
この後、サドゥとの交流をさらに深めていくことになる。


この度初めてサポートして頂いて、めちゃくちゃ嬉しくてやる気が倍増しました。サポートしてくださる方のお心意気に感謝です。